2026年10月06日
若林 克法 グループリーダー(量子材料設計グループ)は、複雑な発光スペクトルから、モアレ材料に潜む「隠れた乱れ」を読み解く新たな理論的枠組みを構築しました。
ねじれたMoSe2/WSe2モアレヘテロ構造では、励起子が滑らかな乱れと局所的なトラップサイトの両方の影響を受けるため、発光は場所ごとに変化します。複雑な発光の空間的パターンを解析することで、個々のスペクトルピークを同定せずに、材料内部に潜む階層的な乱れのランドスケープを推定できます。
Copryright: MANA NIMS, 高橋一誠
二次元半導体であるMoSe2とWSe2をわずかに角度をずらして重ねると、長周期のモアレ構造が現れ、励起子の発光は場所ごとに複雑に変化します。このようなモアレヘテロ構造のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルには、多数の鋭いピークと広い背景成分が重なって現れるため、個々のピークの起源を一つずつ同定する従来の解析には曖昧さが残ります。
今回の研究では、ピーク分解に頼らず、スペクトル重心、最強ピーク位置、鋭い発光成分の割合、スペクトルの粗さなどの単純な「スペクトル記述子」に注目しました。これらの記述子が試料内でどのように相関して変化するかを理論的に解析することで、ミクロン規模で滑らかに変化する乱れと、局所的なトラップ的な発光が共存する階層的な乱れのランドスケープを読み出せることを示しました。
この手法は、複雑な発光スペクトルを、単なる解析困難なデータではなく、材料内部の隠れた不均一性を診断する情報源として活用する新しい枠組みであり、二次元半導体や発光材料の品質評価に向けた基礎になると期待されます。
References
| Journal | Physical Review Research |
|---|---|
| Title | Hierarchical disorder in moiré exciton photoluminescence probed by spectral-descriptor correlations |
| Authors | Katsunori Wakabayashi1 |
| Affiliations |
|
| DOI | 10.1103/jt25-c8fp |