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[Vol. 89] 昼夜問わず発電可能な”熱電発電素子”を開発

2024年06月27日

ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)の研究者らは、放射冷却と太陽熱の両方を利用して発電できる熱電発電素子を開発した。

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日中放射冷却材は、通常建物の屋根など空に面した表面を冷却するために使用される。日中放射冷却材は空に向かって熱放射するため、周囲との温度差を生じる。この温度差を利用して、熱電発電素子で電気を作ることができる。しかし、日中放射冷却材は太陽光を反射するため、日中放射冷却材を使った熱電発電では太陽エネルギーを発電に利用できない。

石井智博士、Cédric Bourgès博士、Nicholaus K. Tanjaya博士、森孝雄博士を含むMANAの研究チームは、放射冷却と太陽熱の両方を利用して発電できる、大部分が透明な熱電発電デバイスを開発した。このデバイスは、放射冷却器として機能する上部透明プレートと、入射する太陽光を吸収する黒体塗料でコーティングされた下部プレートと、上部と下部に接するように配置された透明熱電薄膜から成る。そのため、本素子は同一平面で太陽光吸収と放射冷却ができ、従来素子より効率的に太陽熱と放射冷却を利用できる。

研究チームは、屋外測定と屋外を模擬した屋内測定により、この熱電発電装置が昼間は放射冷却と太陽熱によって、夜間は放射冷却によって発電することを実証した。研究チームは本素子が昼夜問わず発電できる利点を生かし、オフグリッドセンサーの自立電源としての応用を検討している。

石井 智チームリーダー(光学ナノ構造チーム)
(2024年「Materials Today」誌)

Reference

Journal Materials Today
Title Transparent thermoelectric device for simultaneously harvesting radiative cooling and solar heating
Authors Satoshi Ishii, Cédric Bourgès, Nicholaus K Tanjaya, Takao Mori
Affiliations Research Center for Materials Nanoarchitectonics (MANA), National Institute for Materials Science (NIMS), Namiki 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan
DOI 10.1016/j.mattod.2024.03.012
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