2022年07月26日
透過型電子顕微鏡(TEM)内高精度ナノマニピュレーション技術を開発し、個々のCNTに対してジュール熱と機械的なひずみを与えることで、局所的にらせん構造を変化させ、CNTの電子特性の制御に成功しました。

カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素原子で構成されたグラフェンをらせん状に丸めた1次元物質です。半導体CNTは、エネルギー効率が高いナノトランジスタのチャネルとして最も有望な候補の1つと考えられています。しかし,立体構造や電子特性を決定する個々のCNTのらせん構造を制御することは,依然として大きな課題でした。
今回、共同チームは、透過型電子顕微鏡(TEM)内高精度ナノマニピュレーション技術を開発し、個々のCNTに対してジュール熱と機械的なひずみを与えることで、局所的にらせん構造を変化させ、CNTの電子特性の制御に成功しました。また、CNTの金属伝導から半導体伝導への転移をコントロールすることにより、CNTトランジスタを実現しました。作製したナノチューブトランジスタでは、室温でコヒーレントな量子輸送が観測され、チャネル長はわずか2.8ナノメートルまで短縮されました。今後は、この方法を用いて個々の分子の原子構造を設計し、量子情報処理やセンシングデバイスの開発が期待されます。
湯 代明 主任研究員
(2021年「Science」誌)
References
Journal | Science, 374, 1616-1620 (24 December 2021) |
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Title | Semiconductor nanochannels in metallic carbon nanotubes by thermomechanical chirality alteration |
Authors |
Dai-Ming Tang et al. |
Affiliations | International Center for Materials Nanoarchitectonics (WPI-MANA), National Institute for Materials Science (NIMS), Namiki 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan |
DOI | 10.1126/science.abi8884 |