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[Vol. 73] 銅酸化物高温超伝導体の新たな電子状態の発見

2021年11月18日

高強度の高エネルギー単色X線を用いたコンプトン散乱の手法を、銅酸化物高温超伝導体に適応して電子の運動量分布を可視化しました。

リサーチハイライトVol.73 グラフィックス画像

金属中の電子運動の幾何を反映するフェルミ面は、物質の性質を理解する上で欠かせないものとして広く認識されています。銅酸化物高温超伝導体は、CuO2面が層状に積層した構造をしているため、フェルミ面は二次元的であると35年間信じられてきました。今回、高強度の高エネルギー単色X線を用いたコンプトン散乱の手法を、銅酸化物高温超伝導体La2-xSrxCuO4に適応して電子の運動量分布を可視化しました。

その結果、従来の定説とは異なり、各CuO2面で電子がxまたはy方向へ指向性を持って運動しており、その指向性が層方向に沿って90度ずつ回転した、一次元的な電子運動の重ね合わせ状態が実現していることが分かりました。今後、この電子状態がどのように高温超伝導を引き起こすのかを追求すると共に、コンプトン散乱の手法を他の物質群にも応用し電子状態理解の進展に貢献します。

山瀬 博之 主幹研究員
(2021年「Nature Communications」誌)

Reference

Journal Nature Communications 12, 2223 (2021)
Title Fermi Surface in La-Based Cuprate Superconductors from Compton Scattering Imaging
Authors Hiroyuki Yamase, Yoshiharu Sakurai, Masaki Fujita, Shuichi Wakimoto, and Kazuyoshi Yamada
Affiliations International Center for Materials Nanoarchitectonics (WPI-MANA), National Institute for Materials Science (NIMS), Namiki 1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan
DOI 10.1038/s41467-021-22229-6
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