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組織創製3

NIMS前景

せん断ひずみと組織微細化

研究の背景
大ひずみを導入することにより、組織が微細化することは以前からわかっていましたが、どのような条件でどのくらいの大ひずみを導入すれば、どのくらい微細になるのかは、まだ検討されていませんでした。
そこで、1パスで0〜4.2の相当ひずみを広範囲に導入できるアンビル圧縮をし、組織観察をおこないました。そして、数値解析によって予測された相当ひずみと、この組織を比較してみました。(この数値計算には実験で得られた温度とひずみ速度に依存した応力-ひずみ関係を用いた3次元陽解法有限要素解析を適用し、接触条件はねじを用いた圧縮ひずみの実測結果との比較から求められた摩擦係数0.3のクーロン条件を適用しました。)



   
エッジのところにご注目ください。組織が非常に微細になっています。数値解析で予測された相当ひずみの分布(図の右側)とよく合致しています。
そしてある粒径を目標とした場合、せん断変形を伴った加工はそれを伴わない加工に比べ圧縮率の点で有利であることがわかりました。(Presentationを参照ください)
このせん断ひずみの微細化効果は、フェライトの核優先サイトであるオーステナイト粒界の増加に起因します。相当ひずみが同じであっても、せん断ひずみを伴った領域では単位体積あたりの粒界表面積比の増加が大きくなります。
これにより核優先サイトが増加したことで結果としてフェライト粒径が微細になります。ただし、最近の研究ではオーステナイト粒径が大きい場合は、せん断ひずみは粒界増加のみでなくオーステナイト粒内におけるフェライト核の増加にも寄与していることがわかってきました。
したがって、せん断付与加工には効率よく組織を微細化できる可能性があり、せん断変形を伴った加工技術の開発が求められます。
組織がひずみの量だけでなく、加工モードにも依存するのであれば、新しい材質制御法が期待できます。これまで変形抵抗が高い難加工材を対象として用いられていた異周速圧延や異径圧延、エッジドロップ制御として使われていたクロスロール圧延などをせん断付与圧延として役立てようという試みをしています。
せん断変形をともなった加工は組織だけでなく、負荷が2方向に分散するため圧延荷重も小さくなります。クロスロール圧延ではクロス角の増加とともに圧延荷重が低下することが数値解析で予測され、実験で実証しています。


今後の展開
超鉄鋼研究センター冶金グループでは今までの基礎研究結果をもとに民間の実機生産設備を利用して超微細粒鋼の創製に成功しています。(新聞記事を参照ください)基礎研究は小さなサンプルが対象です。小さなサンプルで実現できても、これを製品にするには天竺を目指すくらい大変な道のりです。どうしたら大型のサンプルを創れるのか?どうしたら製品の形に加工できるのか?そこまで考えて基礎研究することが必要です。そうしなければ一体何のために”研究”をしているのか?と考えてしまいます。
せん断付与圧延では、材料に導入される変形が従来の圧延と大きく異なるため、微細化だけでなく従来と異なった集合組織を得る事ができます。そのため、鉄鋼だけでなく、非鉄でも盛んに研究されています。
ただし、このような研究で重要なのは、【どのようなプロセスの状況下でどの程度組織を制御できるか?】を定量的に示すことです。そして、加工熱処理条件と組織の関係を明確にしたプロセスパラメータマップを提示することが重要だと考えています。
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