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異材界面1

NIMS前景
異材界面の研究については学生時代から取り組んできました。

企画した動機と経過の概要

研究の動機
近年、機械や構造物の使用環境はますます厳しくなり、強度だけでなく、耐食性、耐熱性、耐摩耗性および軽量化・高機能化などが同時に要求されることが多くなってきている。このような種々の要求は、単一の材料では満足させられない場合が多く、機械的性質の異なる幾つかの材料を接合して使用される異材ないし複合材が各種産業分野(原子力機器、航空機、船舶、自動車、電子部品など)に利用されている。
接合材は、従来の構造材料では用いることのできない様々な過酷な環境中で使用されるため、接合体の強度評価ならびに安全性、信頼性の基礎となる理論的見解、新しい技術の確立が急務となっており、接合体の界面上および界面端近傍での力学的取り扱いに大きな関心が寄せられている。しかし、異材接合体は材質の異なる材料接合することから、従来の均質体に対する力学や強度評価法とは異なるアプローチが必要となってくる。
 異材接合体は、材料の端部角度と弾性定数の組み合わせにより、外力や温度変化が作用すると、界面端部近傍において応力場が特異性を示し、これが原因で接合体の強度が著しく低下することが知られている。応力が特異性を示すのは、均質材中に存在するき裂端でも見ることができるが、その時応力は各変形モードに対して
σij=K fij(θ) r-0.5

で表される

ij:各応力成分、K:応力拡大係数、 fij(θ):き裂端回りの分布形を示す関数、r:き裂端からの距離、ij:応力の各成分)。
この時、特異性のオーダーO(r-0.5)と関数fij(θ)は、き裂長さや負荷応力などに対して変化しない。

よって、応力拡大係数Kが、材料の破壊を支配する力学的パラメータとして評価の対象とされている。
 しかし、異材接合体の界面端における応力場は材料の端部角度や弾性定数によって特異性のオーダーO(rp-1)が変化し、このオーダーが複数同時に生じたり、対数型や振動型の特異性も生じるなど非常に複雑となる。さらに、各オーダーに乗ぜられる関数は材料の組み合わせによって分布の形態や大きさが変化する。したがって、異材の界面端における力学的な問題は均質材のき裂端のようなアプローチでは解明できず、まず界面端における応力状態を十分に把握することが重要となる。
 そこで、次数pと材料の端部角度や弾性定数の関係は、幾つかの境界条件を持つ単体、2相異材接合体、一方の材料内に界面に到達したき裂が存在している全平面をなす2相接合体などに対して、多くの研究が今迄に行われており、明らかにされている。しかし、その先のこと、すなわち特異性を示す他のオーダーの問題、各オーダーに乗ぜられる関数と材料の組み合わせの関係、そして熱残留応力の特性については皆無である。
 また、近年の電子デバイス(IC、LSIパッケージ)にはシリコンチップ・素子搭載板・樹脂による3つのくさび形の材料で接合された3相異材接合体がある。LSIは、年々小型化および大規模・高集積化が進み、樹脂による3つのくさび形の材料で接合された3相異材接合体がある。LSIは、年々小型化および大規模・高集積化が進み、それにともないこれまであまり問題とされてなかった強度上の諸問題が浮かび上がってきた。LSIは幾つもの材料で構成されているので、2相および3相接合体における複数の特異点が存在し、モールド温度(170℃前後)からの冷却やはんだリフロー時の熱負荷(230℃前後)、信頼性評価のための温度サイクル試験などによって、界面剥離やチップおよび樹脂などに種々の損傷が発生する。したがって、LSIの信頼性向上に対し界面端での応力場の解明が必須となる。また、溶接構造物の中にも3相接合体を見ることができる。しかし、3相が接合した特異点近傍に対する応力評価については、これまでの2相接合体の結果が適用できない。
 これらのことから、3相接合体に対する応力特異性の特性を検討することが要求されてきた。また、これまで2相接合体に対して理論的に考えられていた界面端に生じる応力の緩和法には、各材料の端部角度や弾性定数を変える方法のみであった。しかし、3相接合体の理論を明らかにすることにより、2相接合体に対する新しい応力緩和法を提案し、検討することが可能となる。さらに、今後の構造物の多様化、高密度化から多相異材接合体における界面およびその近傍での応力場に対する力学的取り扱いが重要となっており、各種の接合体を包含している多相異材接合体に関する研究は、これまでにも多数の研究が行なわれてきた接合体の研究分野の中でも、まだ解明されていない点が多いと言え、3相接合体に対する研究はその足掛かりとなる。
 そこで、これ迄以下の構成に従って研究を行ってきた。
3相異材接合体に対する特性方程式の導出と応力特異性のオーダー
界面端の応力場に現れる特異性のオーダーは、界面と自由表面上における応力と変位の境界条件から導出される特性方程式によって検討される。まず前述した3相接合体の特性方程式を導出し、応力特異性の次数と各材料の端部角度および弾性定数(ヤング率、ポアソン比)の関係を明らかにした。この特性方程式は、3相接合体だけでなく、これまで他の研究者によって導出されてきた幾つかの接合体モデルに対する特性方程式を包含している。したがって、これまでモデル毎に対して導かれた特性方程式を用いる必要があったが、この3相接合体の特性方程式を用いることで、あらゆる接合体モデルに対する応力特異性の次数の算出が可能となった。
 また、2相から3相以上の多相接合体へ変わることにより、従来のような材料の端部角度や弾性定数だけでなく、新たに『接合順序(材料の並び方)』が応力特異性のオーダーに影響することを示した。そして、3相接合体に対する応力特異性の消失条件およびその低減法を示し、この結果から2相接合体に対する新しい応力緩和法を提案した。
応力強さの導入とその検討
これ迄の異材接合体の研究では、応力特異性のオーダーのみに対する研究がほとんどであった。しかし、応力特異性を考える場合にはオーダーだけでなくその時乗ぜられる関数の特性も明らかにしなければならない。前述のように、均質材中のき裂端の応力は応力拡大係数Kとき裂端回りの分布形を示す関数 fij(θ)で分離できたが、接合体の場合このような分離はできず、応力場はσij=K ij(θ) rp-1で表される。

ここで、K ij(θ)を『応力強さ』と名付け、この応力強さの特性を明らかにすることで、界面端における応力場の分布の形態や場の大きさを知ることが可能となる。また、応力場はほとんどの場合上述のような簡潔な形で表すことはできず、対数型や振動型等の様々な特異性のオーダーを持つことから、それら全てのオーダーが生じる条件とそれらのオーダーに乗ぜられる応力強さの特性を明らかにして初めて接合体の応力場の理論が体系化できる。
 そこで、外力および温度変化が与えられたそれぞれの場合に対して、異材接合体の界面端に生じる応力場および変位場の理論解をMellin変換したAiryの応力関数を用いることで導出した。そこで、外力および温度変化が与えられたそれぞれの場合に対して、異材接合体の界面端に生じる応力場および変位場の理論解をMellin変換したAiryの応力関数を用いることで導出した。
そして、応力場は特性方程式の根(すなわち、特異性の次数)によって
rp-1型の特異解、logr型の特異解、振動型の特異解、rp-1 logr型の特異解、特異性消失解、そして特解に分けられ、
これらの解の一次結合によって表されることを明示した。
そして、各解における応力強さKij(θ)は、それぞれ材料の端部角度および弾性定数の関数と角度θの関数の積の和で表されることを示した。
その後、幾つかの材料の組み合わせに対して、上述の各解が界面端の応力場に与える影響を検討し、応力場は必ずしも特異解のみによって表すことはできないことを明らかにした。さらに、有限要素法(finite element method)で応力特異性を検討する場合の問題点についても指摘した。
新しい特異性消失条件の提案
異材接合体は異なる材料を接合することから、内部には必ず残留応力が発生する。特に、接合する材料の線膨張係数が著しく異なる場合には、製造過程で破壊することもあり、熱残留応力特異性の解明とその消失条件は異材接合体を使用する上での最重要課題である。まず界面端における熱応力を無次元化するパラメータを提案した。これにより、接合する材料の剛性比と線膨張係数比が同じであれば熱応力は同じ値を持つことを示した。その後、界面端の熱応力の各解における各応力成分(rr, rθ, θθ)の強さKijはそれぞれ単に符号が異なる2つの分布の形態に分けられることを明らかにした。これにより、材料の端部角度や弾性定数の組み合わせに対して、応力が引張りおよび圧縮の最大となる角度θや界面端の熱応力の分布形を容易に知ることを可能とした。また、材料の端部角度あるいは弾性定数の変化に対して、応力強さKijの分布が変化する時、その境でKijが角度θに依らず、すなわち全領域で0となることを明らかにした。これにより、たとえ従来示されていた、すなわち特性方程式から検討されていた応力特異性が生じる材料の組み合わせであっても、Kij=0を満たす組み合わせであるならば、応力特異性を消失させることができる。これは、従来にない応力強さからのアプローチによる応力特異性の消失条件を意味する。そして、この特性をまず2相接合体に対して詳細に検討し、接合体の端部角度φ12-材料1の端部角度φ1平面上および剛性比k121平面上に応力強さKijが0となる条件を示した。このφ121およびk121平面は、特異性の次数pと応力強さKijからの応力特異性の消失条件およびKijの分布形を同時に明示し、Kijの大小もこの平面上から推測できる。さらに、Kij=0の条件はある簡単な式を利用することにより、近似的に得ることができ、その方法を明示した。そして、3相以上の多相接合体の場合、2相接合体に比べてパラメータの数が増えるので複雑となり、 Kij=0の条件は2相接合体とは違う条件で存在することを明らかにした[15]。また、温度変化を受けた異材接合体に外力を負荷することで、熱応力の特異性が消失できることも明らかにした。さらに、複合材料の破壊挙動で良く見られるき裂が界面に到達した場合および界面き裂の場合における熱応力場の特性も明らかにした。

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