数値解析技術を用いた組織形成予測と高効率な結晶粒微細化技術の探索
- 研究の経過
- 結晶粒微細化は鉄鋼材料の強度向上へのキーワードである.鋼の結晶粒を微細にする技術として共通している点は,大きなひずみを材料内に導入することであり,従来“成形”を目的としていた塑性加工が“組識創製”においても重要な役割を果たすことが明らかになってきた。
しかし,大きなひずみの導入は必然的に材料内に不均一なひずみを導入することになり,これにより組識も不均一になることが考えられる.また,厚肉材での微細組織創製が難しい点の一つは板厚を確保した制限の中で大きなひずみを広範囲に導入することである。
これらのことを背景にし,まずは数値解析技術と加工熱処理シミュレータを併用することにより0.1〜4の広範なひずみと結晶粒径の関係を定量的に明らかにした。そして,結晶粒がひずみに依存しない領域があることを指摘した.これは,たとえ材料内にひずみの分布があっても,クリティカルはひずみεc以上であれば組識は均一であることを意味する。
次に,板厚を確保しながらεc以上のひずみを材料の広範囲に導入する方法として,多方向非同時加工を提案した.この加工方法の有用性は,数値解析によって明示され,開発したシミュレータによって実験的に検証された.本加工方法は,後に韓国でも行われており,今後の厚肉材の微細粒創製技術に対する方向性を見出している。
その後,せん断変形が組織微細化に重要であることを指摘し,たとえ相当ひずみが同じであってもせん断ひずみの有無によって結晶粒は異なることを明示した。結果では、もし2.5μmという微細フェライト結晶粒を加工オーステナイトからの変態を使って得ようとする場合、従来のような圧延(圧縮ひずみのみ導入)では77%の圧縮が必要だが、せん断変形を付加するような圧延では62%で十分であり、せん断へひずみの導入は効率よく組織を微細にする上で重要な因子であることを指摘中である。
このように従来と異なる視点から結晶粒微細化のメカニズムを追求しており,効率良く組識を微細にする技術の探求を行っている。
本研究では,常に数値解析技術と実験を併用することにより,定量的に様々な現象を把握することに努めている。