プレスリリース
資源リスクの高いCoを含まない正極とSiOx負極を組み合わせたLIBで1000回の繰り返し寿命を達成
合理的な電解液設計により有利な正極/負極の組み合わせの組み合わせが可能に
コバルト(Co)は現行のリチウムイオン電池(LIB)において必須の元素ですが、希少資源であり、サプライチェーンリスクが極めて高いという問題を抱えています。
ABC拠点の参画機関である東京大学の山田淳夫教授らの研究チームは、Coを含まない高電圧LiNi0.5Mn1.5O4正極と高容量SiOx負極を組み合わせたLIBを開発しました。この電池は高エネルギー密度を担保する高い作動電圧を維持しながら、実用レベルの充放電サイクル寿命を達成しました。今回この電池の作動安定性が向上できた根底にあるのは、高酸化・高還元安定性を同時実現する新規電解液設計です。電解液や電極が起こす副反応を抑制すると共に、従来より強固な保護被膜を形成してSiOxの大きな体積変化に起因する問題を克服しました。
今回の電解液の配合は、持続可能で高性能なLIBへの道筋を示すものであり、このコンセプトはさらに他の電気化学エネルギー技術にも応用できるものと期待されます。
本研究の成果は、Nature Sustainability 誌に2023年10月19日にオンライン公開されました。
Seongjae Ko, Xiao Han, Tatau Shimada, Norio Takenaka, Yuki Yamada, and Atsuo Yamada
“Electrolyte design for lithium-ion batteries with a cobalt-free cathode and silicon oxide anode”