(独) 物質・材料研究機構 (NIMS) より
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NIMS『使える ! メールマガジン』 第4号 2011.12.14
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──────────────〔 もくじ 〕───────────────
1. 12月13日公開 ! 放射性物質の吸着材料データベース
2. 最新研究リリース ①がん温熱治療 ②燃料電池の長期安定化
3. 子供向け!? だけじゃない。 『鮮やか実験映像』 ~耐熱・超合金~
4. ナノの世界でクリスマス ! ~ナノの世界の美~
5. 広報誌『NIMS NOW』最新号 特集 ハイブリッド材料
6. お知らせコーナー
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◆1 : 12月13日公開 ! 放射性物質の吸着材料データベース
福島第一原発から放出された放射性物資の除染作業を本格的に進めるに
あたり重要となるのが、放射性物質の除去材の性能です。これまでゼオライト
やバーミキュライトという天然鉱物が有望であると報道されてきましたが、
実はこれらの除去材は、同じ鉱物名であっても産地により除去性能に違いが
あります。また、その除去材を使用する環境の条件によっても除去性能が
大きく変わることがわかります。除染の効果を少しでも高くするためには、
使用する場所で最大の効果を発揮する吸着材を選ぶことが重要となります。
そこで、物質・材料研究機構が中心となり、12の研究機関が総力を挙げて
放射性物質の吸着材の性能を比較したデータベースを作り上げました。
昨日より一般に公開されています。
例えば、ゼオライト。北海道や秋田、宮城、島根など日本だけでも数多くの
産地があります。これらはそれぞれセシウムの吸着の特性が異なります。
また、それぞれのゼオライトで得意とするセシウム濃度が異なります。その
ため高濃度のセシウム溶液に対してはAというゼオライトが最高の吸着率を
示しても、濃度の低いセシウム溶液だとBというゼオライトの方が吸着率が
高くなるという結果も得られています。
12の研究機関は数ヶ月をかけて、60種類の吸着材を実際にセシウム溶液
に混ぜ、データを取りました。セシウムの濃度を8段階に変え、吸着性能を
1つ1つ測定。800点におよぶデータを集めました。これほど多くのデータ
を網羅した放射性物質の吸着材データベースは世界でも類を見ません。
吸着材データベースは、前号のメールマガジンで特集した
「物質・材料データベース」の中で公開しています。
http://mits.nims.go.jp/
なお、物質・材料研究機構では、データベース公開にあわせ記者発表を行い
ました。その際、放射性物質除去材の一部を実物で披露しました。普段あまり
見ることのできないゼオライトなど吸着材の実物を映像でご覧ください。↓
http://www.nims.go.jp/publicity/digital/movie/db_READS.html?autoplay
◆2 : 最新研究リリース ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
①『磁性ナノ粒子を用いたがんの温熱治療
その詳細な発熱メカニズムをはじめて解明』
~検査をすり抜ける微少がんに有効な治療法の進展にはずみ~
[11月15日]
がん細胞は、通常の細胞よりも熱に弱いという性質があります。これを利用
してがん細胞を42度くらいまであたため、死滅させる治療法が温熱治療です。
副作用の少ないがん温熱療法は現在、手術・放射線・化学療法に続く第4の
治療法として、免疫療法とともに研究が盛んに進められています。
どうやってがん細胞のみを暖めるのか。一つのアイデアが、磁石の利用です。
ドラッグデリバリー技術を応用してナノサイズの磁石をがん細胞だけに送り
込んだあと、交流磁場をかけることで微小な磁石を発熱させ、がんを死滅させ
るというもの。検査をすり抜けた微小ながん等へも有効で、副作用が少ない
治療法として注目を集めています。
しかしながら、現在の簡単なモデルに基づいて磁性ナノ粒子の発熱量の予測
を行うと、実際の実験結果と食い違うため、磁性ナノ粒子がん温熱療法を実用
化する際の、最適化に大きな障害となっていました。
今回、NIMSの間宮広明主任研究員は、体内の条件に近い条件下でのシミュレ
ーションに成功し、磁性ナノ粒子の配向状態が粒子の大きさや形状、その周囲
の粘性、交流磁場の照射条件によって劇的に変わることを見出しました。この
成果をもとにすれば、がんの属性に合わせて、微小磁石や交流磁場の照射装置
を最適に整えることが可能となり、この方法による温熱治療が実用化に向けて
大きく前進することが期待されます。
磁性ナノ粒子を使ったがんの温熱治療についてご興味のある方、共同研究の
ご相談は、いつでもご連絡ください。成果の詳細は以下のリンクで。
http://www.nims.go.jp/news/press/2011/11/p201111150.html
②『酸化物型燃料電池の長期安定性低下の原因を初めて解明』
~大規模スケール燃料電池のシステム設計実現に大きく貢献~
[11月19日]
クリーンエネルギーの一つとして注目される燃料電池。その中で
「独立分散電源用酸化物型燃料電池 (Solid Oxide Fuel Cell) は家庭用や
大型発電用の燃料電池システムを目指して開発が活発に行われています。実際、
発電効率60%を発揮できるなど、性能面では必要とされるものを充分に満た
すデバイスができつつあります。しかし、実用化に立ちはだかる問題がありま
す。長時間の運転時に性能が低下することや、大型システムを製造する際の
信頼性が低いことです。
NIMS、森利之グループリーダーはその原因を解明すべく力を注ぎました。
非常に高い分解能を持つ透過電子顕微鏡を用いて、ナノスケールの欠陥構造を
詳細に観察しました。高い性能を発揮する試料と、性能低下が激しい試料とを
丹念に比較した結果、その原因を突き止めることに成功しました。
実は、性能低下を説明しようと、固体の電解質のなかに、酸素が欠損してい
る部分が直鎖状に発生する「直鎖状酸素欠損クラスターモデル」というものが
提唱されていました。しかし、これでは実際の現象を合理的に説明ができな
かったため、性能が劣化するメカニズムの解明ができず、改善策の研究が遅れ
ていました。
今回、森グループリーダーは高分解能透過電子顕微鏡で詳細に観察して得ら
れた特徴をシミュレーションにより解析。「直線」ではなく「ダンベル」が
劣化の正体だと突き止めました。「ダンベル」って、いったい何なのでしょう。
その詳細は以下のリンクで。
この研究に興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
http://www.nims.go.jp/news/press/2011/11/p201111090.html
◆3 : 子供向け!? だけじゃない 『鮮やか実験映像』~超耐熱・超合金~ ━━
よりよい生活を実現させるため、人類は今も世界中でさまざまな合金を生み
出しています。とてつもなく硬い合金。摩擦に強い合金…。そんな中、NIMSが
力を注いでいるのが「超耐熱合金」です。
通常「耐熱合金」というと800℃前後の温度にまで耐えることができますが
NIMSは1100℃以上の温度でも変形しない『超耐熱合金』を作り出し、現在
世界記録を更新しています。
なぜ、こんなにも高い温度に耐える金属を作ることにこだわるのでしょう?
NIMSの大方針の一つに省エネがあります。『超耐熱合金』はエコなのです。
エンジンや発電機では、燃料をより高い温度で燃やすほど、同じ仕事をすると
きに使う燃料が少なくてすむのです。現在飛んでいるジェット機より100℃
高い温度で燃料を燃やせば、燃料は2.5%少なくて済みます。たったの??
いえいえ、あなどってはいけません。飛行機が消費する燃料代は莫大です。
2.5%の削減で節約できる燃料代は太平洋航路で1機あたり年間100万ドル以上。
日本円でなんと年間1億円以上です。航空会社全体ではとてつもない金額です !
昨日、この『超耐熱合金』を子供たちに実感してもらうため、こんな映像を
撮影してみました。大人も納得。NIMSの開発した超耐熱合金をご覧ください。
(クリック ! ) → http://www.nims.go.jp/publicity/digital/movie/experiment_ht-metal.html?autoplay
ちなみに、NIMSが開発した超耐熱合金は、先ごろ話題になった新型旅客機の
エンジンにまもなく搭載されます。
◆4 : ナノの世界でクリスマス ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
きれいなクリスマスカードが届く季節。ナノの世界を追求するNIMSからは
皆さんへNIMSならではのクリスマスカードをお届けします。
いかがですか??
(クリック ! ) → http://www.nims.go.jp/publicity/digital/movie/nano-xmas.html?autoplay
◆5 : 広報誌 『NIMS NOW』━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最新号 (2011年12月号) の特集は
「NIMSの超伝導、これまでとそれから。」
と題して超伝導材料についてです。
超伝導が発見されてから1世紀。電気抵抗ゼロの材料という夢の物質は着々と
社会で利用されつつあります。NIMS第3期中期計画で新たに立ち上げられた
「先端超伝導材料に関する研究」プロジェクトでは、すでに多くの超伝導体を
開発しているNIMSのノウハウを結集。基礎物性評価、メカニズム解明にフィー
ドバックさせていきます。今、超伝導材料はどうなっているのか、NIMSはこれ
から何を研究開発していくのか。プロジェクトの概要と4つのサブテーマを
中心にご紹介します。
次号、新年1月号はナノマテリアル特集。ご期待ください。
※NIMSでは毎月、広報誌『NIMS NOW』を発刊しています。
NIMSの研究を各号ワンテーマで紹介。各分野の最新動向を知ることができる
『NIMS NOW』は、物質・材料研究すべてのフィールドの最新辞典です。
ご購読の申し込み、オンライン購読、バックナンバーはこちら。
URL : http://www.nims.go.jp/publicity/nimsnow/
◆6 : お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●科学・技術フェスタ in 京都2011に出展します。
12月17日 (土) ~18日 (日) 国立京都国際会館で開かれる科学イベントに
出展します。
NIMSのテーマは『環境・エネルギー問題に取り組む先端材料』
限られた資源やエネルギーを効率的に利用し、環境負荷を減らしながら住みよ
い社会を持続するため、新しい材料の開発に取り組んでいます。材料に求めら
れる機能はなにか、どのように使うのかという材料技術の研究について展示し
ます。
実演コーナーでは、金属の性質や材料に関する実験、金属工作の体験などを
行う予定です。
詳しくはこちら。 http://www.pbi.co.jp/kagakugijutsu-festa/
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