社会人でドクター取得を
目指す方へ

NIMSと大学が協力して最先端の研究の推進と高度の人材育成を行うプログラム「NIMS連携大学院制度」では、
企業や研究機関に在職しつつ、物質・材料工学分野で活躍している方の学位取得を支援しています。

社会人ドクターを考え始めたら

NIMS連携大学院の教員一覧をご覧いただき、指導を受けたい教員へ事前に直接メールにてご連絡ください。NIMSの指導教員が在籍する大学・専攻に入学して、学位取得を目指すことになりますが、実際はNIMSの研究室に所属して、大学教員でもあるNIMS研究者の指導をうけることとなります。

出願要件、出願必要書類、入試内容、そして学位取得までのカリキュラムは、大学によって異なります。下の「大学別の社会人ドクターコース」にて、予めご確認ください。

希望するNIMS研究者との打ち合わせ

教員となっているNIMS研究者が受入を内諾しましたら、入試と入学の時期、勤務の予定などを考慮しつつ、NIMSに来構しての実験・計測などを含め、入学後の修学や学位取得までの大まかな計画を立てて頂きます。

教員との研究計画の打ち合わせ等が完了し、在職先の承諾を得て勤務の調整が済んだら、大学に出願です。

出願から入学まで

入学試験の詳細については、大学・専攻のウェブサイトや学生募集要項をご覧ください。
「社会人特別選抜」など、一般の受験者と異なる出願・入試を実施している大学・専攻もあります。入試日は、数か月前から確定している事が多いため、予め勤務先のスケジュールを考慮する事が可能です。入試は、これまでの研究内容と今後の研究計画を中心とした口頭試問が主です。

入学後から学位取得まで

基本的には、NIMSをメインキャンパスとする活動で必要単位を取得できます。大学・専攻によっては、大学キャンパスでの講義受講が必要となる場合もありますが、頻繁に足を運ぶ必要はありません。ただし、論文審査は、原則として、在籍する大学キャンパスにて、対面で行われます。

また、カリキュラムとは別途、在学中は、NIMSや大学が主催するセミナーやシンポジウムにもご参加いただけます。

共通カリキュラム
「学生セミナー」

NIMSで年2回開催される研究中間報告会で、在学中に2回発表することが必須になっているNIMS連携大学院のカリキュラムです。研究発表および質疑応答を全て英語で実施します。学生が研究の進捗状況を発表し、指導教員以外の教員はもちろん、他分野の学生からも講評を受ける重要な機会です。

セミナーの主旨・目的

  • 研究活動の進捗状況等を判定・確認し、学生自身が課程修了までのどの程度の位置にいるかの判断材料を与える
  • 物質材料科学分野における幅広い知識を身につけること、最新の研究トピックを学ぶこと
  • 英語でのプレゼンテーションや議論の能力を向上すること
  • 複数の同分野の教員・学生がいる事により、より専門的な議論を行う
中野克哉

中野克哉Katsuya Nakano

NIMS-九大連携大学院 大村研究室 博士課程2年/
日本製鉄株式会社 鉄鋼研究所

Interview

「社会人大学院生」
という選択中野克哉さんインタビュー

仕事のかたわら博士号取得を目指す「社会人大学院生」がいます。
その日常、そして魅力とは――?
NIMSとの共同研究に携わりながら連携大学院で学ぶ、
中野克哉氏に話を聞きました。

日本製鉄株式会社ではどのような仕事をしていますか?――

鉄の研究、特に自動車に使われる鉄鋼材料を開発しています。環境への配慮から、CO2排出量を下げるために自動車の燃費を向上させる必要があります。そのためには車体の軽量化が有効ですが、材料の鉄を薄くすると、当然、衝突安全性が損なわれます。そこで、薄くても強度が高く、さらには複雑なデザインにも加工できる材料を研究開発しています。

NIMSで博士号を取得しようと思ったきっかけは?――

企業における研究は製品開発のための応用研究が中心ですが、応用するにも基礎基盤となる深い専門知識が欠かせません。そのため日本製鉄では、研究職の社員が博士号を取得して専門性を深めることを推奨しています。

入社して6年、私もそろそろ博士号をと思っていたところに、NIMSと鉄鋼3社とが共同で基礎研究を行うMOP(MaterialsOpen Platform)が始まり、私は日本製鉄の担当者としてこれに参加することになりました。MOPのテーマが興味深い内容だったので、この機会にしっかり学んで博士号を取ろうと、NIMSの連携大学院制度を利用することにしました。

実は、修士課程の時に「NIMS連携大学院制度」をすでに利用していて、現在の指導教官である大村孝仁先生にもお世話になっていました。再び材料強度研究の大家である大村先生のもとで研究できることがうれしいです。

社会人大学院生としてどのような生活を送っているか教えてください――

博士号の取得が推奨されているといっても、 会社では社内業務が最優先です。ですが幸いなことに、業務スケジュールは自分でマネージメントできる環境にあるので、博士課程ならびにMOP に関する研究に費やす時間を捻出できるよう工夫しています。現在は1、2カ月に1度ほどの数少ないチャンスですが、NIMSを訪問し、大村先生と実験結果や論文内容について議論を重ねています。

九州大学の場合、学位を取得するためには博士課程で 3報程度の投稿論文を書かなくてはなりません。仕事との両立は容易ではありませんが、とても充実した時間を過ごしています。特に、学業では基礎的なテーマを深堀りできるため、材料研究者としての基盤技術や専門性を深めることができています。そして、日ごろ業務優先で疎かになりがちな論文執筆の訓練にもなり、今後研究者として生きていく上で間違いなく自分の強みになります。大変ではありますが、専門性を高めることに前向きな会社の同僚たちと励まし合いながら両立できている今の環境に感謝しています。