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生体の高靭化に学ぶ構造用複合材料

Structural Composite Inspired by Toughening Mechanism in Organisms

垣澤 英樹 KAKISAWA.Hideki@nims.go.jp

既存の材料では得られない特性を持つ材料を作り出すために、異種材料の複合化の手法が広く利用されています。しかし、今までの材料技術の延長では複合効果は限界に近づいています。優れた力学特性を持つ生体の複合構造に学ぶことで、新しい材料系、組織、界面構造の設計指針及び新材料の実現が期待できます。

アワビの貝殻真珠層はナノオーダーの無機粒子が集合した無機/有機複合プレートが積層した構造を持っています。無機粒子が有機マトリックス内で相対的にずれることでプレートが見かけ上伸びたりつぶれたりし、体積の95%が脆性な無機質でありながらあたかも金属のように「へこむ」ことができます。結晶構造をナノオーダーで制御することにより、人工的にセラミックスを積層した材料でも同様の挙動を実現できることを確認しています。

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図 (a) 真珠層の表面のビッカース圧痕と圧痕下のプレートの変形の様子。矢印はプレート内の有機マトリックス。(b) ナノオーダーの結晶構造を持ったセラミックスを積層した材料の変形の様子。