材料のマクロ特性はmm以上のサイズで評価されるのに対し、組織はmm程度のオーダーで制御されており、3桁もの差があることが、材料開発の難しさの一因です。効果的な特性改善の方針を確立するためには、特性の発現機構を解明することが重要であり、そのためには組織単位と同程度のスケールにおける力学特性評価が有効な方法です。
図は、TEM内ナノインデンテーション技術による変形挙動のその場観察の例です(試料は、Fe-0.4C焼戻しマルテンサイト)。左上から右下へと進行する変形過程において、圧子と資料の接触点付近から発生した転位が粒界で堆積する様子が明瞭に観察されています。TEM観察と同時に荷重-変位関係を取得することによって、力学応答と組織変化(転位運動)の関係をリアルタイムで捉えることが可能です。この技術により、様々な組織と局所的な変形挙動の関係が飛躍的に解明されることが期待できます。
(a) (b) (c)
圧入変形挙動をその場観察
(a) 変形前の組織。右上が圧子、白三角が粒界の位置を示す。(b) 圧子と試料の接触点付近から転位が発生し、粒界へ向かって転位が運動する様子。(c) 粒界付近で転位が堆積する様子。この後、変形は隣接粒内に伝播する様子が観察された。
図 TEMその場ナノインデンテーション技術による
変形挙動の観察例 |