エネルギー資源の節約やCO2排出量の削減を図るため、新しい高強度耐熱材料を開発し、火力発電プラントのエネルギー効率を高めることが求められています。耐熱材料の開発には、使用温度での10万時間(約11年4ヶ月)後の組織変化を解明しなければならず、実験的な手法のみで開発を行うには、多くの試料と長い時間が必要でした。そこで、実用耐熱材料の組織変化を、計算により予測する手法の確立を試みています。
右図は18Cr-8Ni鋼の析出遷移過程を、組織自由エネルギー法で予測した例です。実用材料の基礎的な物性値から、エネルギー論を用いることで、約1~10年後のσ相の析出開始を予測できました。
このような予測法を確立することで、耐熱材料を効率的に開発したり、実用材料の熱処理プロセスを容易に最適化できるようになります。

18Cr-8Ni鋼の等温析出線図。●●は電子顕微鏡でM23C6相とσ相を観察した条件を示す。組織自由エネルギー法で予測した各相の析出開始線は、実験結果をうまく再現できた。 |