研究テーマ
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モット転移 モット物理 フラストレート磁性体 量子スピン鎖 金属強磁性 磁気相転移 理論手法

 電子相関による金属強磁性

 強磁性状態を安定化させるメカニズムはいくつか知られている。例えば、大きな状態密度やフント結合が強磁性に有利に働くということなどが知られている。一方で、純粋に電子間のクーロン斥力(電子相関)だけで強磁性状態が実現する可能性も考えられている。端的な例は、電子相関が強い極限で(ある条件を満たす格子上で)1つだけ電子が詰まっていない穴(ホール)を開けると強磁性になるという長岡の定理が知られている。この定理はまさに電子相関によって強磁性が実現することを示しているが、ホールが1つしかないという非常に限られた状況でのみ成り立つものである。金属強磁性というためにはマクロな数のホールが必要なので、マクロな数のホールがある系で純粋に電子相関による金属強磁性が実現するのかということに興味が持たれる。単純な1次元の鎖では電子相関が強い極限(U = ∞)ですべての磁性状態が縮退するので、もう少し複雑な系として2本の鎖をつなげた梯子系を考える。この系で電子相関が強い極限をとり、さらに梯子の桁が大きいという条件を課すと、1/4フィリングより多く電子が詰まると強磁性、少ないとスピン1重項(非磁性状態)が基底状態になることを証明することができた [1]。これによって、マクロな数の電子が動ける系で電子相関によって金属強磁性状態が現れる例を示すことができた。この強磁性相が上述の極限だけで成り立つ病的なものでないことは、密度行列繰り込み群(DMRG)法を使って基底状態の磁化を計算することによって確かめた [1]。

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