NIMSとアメテック株式会社CAMECA事業部(以下、「CAMECA」)は、材料を構成する原子の分布を3次元で可視化できる3次元アトムプローブ (3DAP) 技術の啓蒙・普及活動のために、「NIMS-CAMECA 3DAPラボ」を2018年6月26日に発足しました。

3次元アトムプローブ - NIMS-CAMECA 3DAPラボの概要:

(NIMS独自開発アトムプローブ)
 NIMSでは、これまで独自のレーザーアトムプローブを開発し、紫外光レーザーを用いることで世界に先駆けてバルク絶縁体のアトムプローブ解析を成功させるなど、この分野の先導的な役割を果たしてきました。また、CAMECAは、現在唯一の市販3次元アトムプローブの装置メーカーとして、この手法の発展と世界的な普及に貢献しています。現在この装置は世界の71機関の研究機関・大学等(国内では9機関)に設置され、様々な材料の解析に活用されていますが、CAMECA社はそのうち99%以上の装置を販売してきた実績を持っています。
(Nd-Fe-B焼結磁石の結晶粒界)
 3次元アトムプローブ法は、針状試料の先端からレーザーでイオン化される原子の質量と位置を同時計測することにより、100万倍以上の倍率で原子分布を3次元トモグラフィーとして可視化できる唯一の手法です。例えば、ナノスケールのデバイス中の元素分布や材料中の元素の不均一な分布を精度良く解析することができます。最先端の透過型電子顕微鏡(TEM)を使っても、軽元素が欠陥などに偏析している様子を定量的に解析することは困難ですが、3次元アトムプローブを使うと原子面の欠陥や転位とよばれる結晶中の一次元欠陥に元素が偏析している様子を直接観察することができます。しかしながら、3次元アトムプローブ分析には特殊な専門性が必要なことと、装置が高価なことから我が国の大学の理工学部にも殆ど普及しておらず、その試料作製、測定方法、解析手法のノウハウを習得する機会が非常に限定されていることから、大学や企業での装置導入とその利用には大きな障壁がありました。
(NIMS-CAMECA 3DAPラボ 発足記念研究会の様子)
 NIMSでは、2017年度に紫外光レーザーによるイオン化が可能な最先端の市販アトムプローブ(LEAP-5000XS)をCAMECAから導入しました。今回は、それに加えて、CAMECA社が普及機として開発した3次元アトムプローブ(EIKOS-X)をNIMSに設置し、外部ユーザーに装置使用の機会を与える連携ラボを発足させます。このEIKOS-Xの利用にあたっては、今回同時に発足するEIKOSコンソーシアム(代表:趙成洙(アメテック株式会社CAMECA事業部長))を通して、成果非公開の場合においても装置占有度に応じた協力金を負担して頂くことで装置利用が可能になります。
 「NIMS-CAMECA 3DAPラボ」では、3次元アトムプローブ法の講習会を定期的に行う他、専任オペレーターによる試料作製・測定、解析の技術指導も実施します。また試料作製をラボにおいて行う必要がある場合には、NIMSのFIB/SEM装置(FEI Helios G4)をご利用いただけますので、これまで3次元アトムプローブの使用実績のない企業・教育研究機関の研究者にも3次元アトムプローブ解析法を材料研究に活用していただくことができます。
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