蓄電池過充電時の金属析出メカニズム解明:発火事故防止のための安全性評価に貢献

2020.07.30
核磁気共鳴分析による金属検出
(掲載雑誌表紙絵より引用)
 岡山大学大学院自然科学研究科・後藤和馬准教授のグループは、物質・材料研究機構(NIMS)先端材料解析研究拠点・端健二郎主幹研究員(NMRステーション併任)のグループと共同で、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池が過充電された際に負極に生じる金属析出現象をリアルタイムで観測することに成功し、電池の発火事故の原因となる過充電のメカニズムを解明しました。本研究成果は、5月19日付で英国科学雑誌「Journal of Materials Chemistry A」のオンライ版に掲載され、また2020年の同誌Hot Papersに選出されるとともに7月28日号の内表紙に採択されました。
 リチウムイオン電池はスマートフォンやノートパソコン、電動工具などの電源として幅広く利用されていますが、電池を過充電すると電極内に金属(リチウム)が析出し、これが内部ショート、発火の原因となります。本研究では、これまで直接観察が難しかった電池電極内部の金属析出の瞬間について、核磁気共鳴分析(NMR)によりリアルタイムで観測することに成功し、電極構造の違いによる金属析出のしやすさを明らかにしました。
 本成果は二次電池の過充電に対する安全性限界を見極める技術として、既存電池や新規電池の特性評価や電気自動車(EV)用リユース電池の安全性評価等に有効であり、電池利用技術の発展に大きく貢献することが期待されます。
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