ニュース

Rajkumar Modak特別研究員、平井孝昌研究員、三谷誠司センター長、内田健一上席グループリーダーは「異方性磁気トムソン効果」の直接観測に初めて成功しました

2023.11.22
 Rajkumar Modak特別研究員、平井孝昌研究員、三谷誠司センター長、内田健一上席グループリーダーは、温度差を付けた導電体に電流を流すと温度差と電流に比例した吸熱・発熱が生じる現象 (トムソン効果) が、磁性体においては磁化方向に依存して異方的に変化する「異方性磁気トムソン効果」の直接観測に成功しました。本研究により、熱電物性とスピントロニクスの融合領域に関する基礎物理および物質科学のさらなる発展や、磁気で熱エネルギーを制御する新たな機能の発現が期待されます。
プレスリリース中の図: 異方性磁気トムソン効果の模式図
 トムソン効果は、熱電変換技術の駆動原理であるゼーベック効果やペルチェ効果と並び、金属や半導体における基本的な熱電効果の一つとして古くから知られています。ゼーベック効果やペルチェ効果に及ぼす磁気の影響は長年研究されてきましたが、トムソン効果の熱電変換能は一般的に小さく、その計測・評価手法も十分に確立されていなかったため、トムソン効果が磁場や磁性にどう影響されるかは明らかにされていませんでした。そのような状況の中、NIMSは2020年に非磁性の導電体におけるトムソン効果が磁場によって変化する現象を観測した実験を報告しました。今回はさらに精密な熱計測を行うことで、磁性体における異方性磁気トムソン効果の観測に成功しました。非磁性体における磁気トムソン効果と磁性体における異方性磁気トムソン効果は発現機構が異なり、未開拓現象の初めての直接観測例になります。
 本研究成果は、2023年11月17日にアメリカ物理学会の学術誌「Physical Review Letters」(Vol. 131, p. 206701) に掲載されました。

  • "Observation of the Anisotropic Magneto-Thomson Effect", Rajkumar Modak, Takamasa Hirai, Seiji Mitani, and Ken-ichi Uchida, Phys. Rev. Lett. 131, 206701 (2023)
  • Page top