次世代自動車や風潮力発電にも使用され、需要が拡大する「永久磁石」に使用されている希少元素の使用を抑え、かつ高機能な磁石開発を目指す研究最前線が記述されています。
磁性材料ユニットから執筆陣として、宝野和博、佐々木泰祐、大久保忠勝、高橋有紀子、平山悠介が参加しています。
宝野和博・広沢哲監修『省/脱Dyネオジム磁石と新規永久磁石の開発』（シーエムシー出版）が発刊されました
2015.06.26
次世代自動車や風潮力発電にも使用され、需要が拡大する「永久磁石」に使用されている希少元素の使用を抑え、かつ高機能な磁石開発を目指す研究最前線が記述されています。
磁性材料ユニットから執筆陣として、宝野和博、佐々木泰祐、大久保忠勝、高橋有紀子、平山悠介が参加しています。
地球温暖化抑制のためにエネルギー革新技術の開発と普及が推進され、とりわけ自動車や鉄道などに使用される高出力モータや発電機、さらには風潮力などの再生可能エネルギーによる発電機などの大型回転機が今後世界規模で普及するにしたがって、それらに使用される高性能磁石材料が大量に必要とされる時代が到来する。
希少元素に依らず大量使用可能な磁石材料の開発を現実的な視点で捉えれば、重要課題として、まず①Dyフリーネオジム磁石の開発、次に②軽希土類(Pr, Nd, Sm)を用いた新規鉄基磁石の開発、そして、③Ceなどの活用技術も含む低希土類組成または希土類フリーの鉄基新奇磁石物質の可能性探索であるということになる。
本書は現在最も急がれている①の課題を中心に②の課題についても最前線を紹介することを念頭に企画され、夫々の第一人者により執筆されたもので、Dyフリーネオジム磁石研究開発の現時点での最前線を把握できるだけでなく、本分野に携わる技術者にとっても有用な書となっていると考えている。(本書「はじめに」より抜粋)
『省/脱Dyネオジム磁石と新規永久磁石の開発 Progress of Fundamentals and Developments of Novel Nd-Fe-based Permanent Magnets Free from Dy』
【第I編 総論】
第1章 元素戦略による永久磁石材料研究 ‐ 省/脱Dyネオジム磁石と新規永久磁石の開発 (宝野和博、広沢哲)
第2章 ネオジム磁石の保磁力発現機構 (広沢哲)
【第II編 微細構造解析】
第1章 Nd-Fe-B系磁石のマルチスケール組織解析 (佐々木泰祐,大久保忠勝)
第2章 原子分解能収差補正走査透過電子顕微鏡によるネオジム磁石の微細構造解析 (板倉賢)
第3章 中性子小角散乱(SANS)によるネオジム磁石の内部観察 (矢野正雄,小野寛太)
第4章 軟X線MCDによるネオジム磁石の粒界相の磁化解析 (中村哲也)
第5章 カルファド法とフェーズフィールド法によるNd-Fe-B磁石の組織解析 (小山敏幸,阿部太一)
第6章 第一原理計算によるNd-Fe-B 磁石の粒界近傍における磁気特性 (佐久間昭正,土浦宏紀)
【第III編 磁区構造解析】
第1章 Kerr効果顕微鏡を用いたネオジム磁石の磁化反転機構の解明 (竹澤昌晃)
第2章 保磁力理論の概説とモデル薄膜による検証 (岡本聡,高橋有紀子)
第3章 放射光X線顕微鏡による磁区解析と磁化反転挙動 (小野寛太,矢野正雄)
第4章 硬X線磁気顕微鏡によるネオジム磁石の磁化反転挙動の解析 (鈴木基寛)
第5章 電子線ホログラフィーによる粒界相磁束密度の解析 (村上恭和)
第6章 Spin-SEMを用いたネオジム磁石の粒界磁性計測と磁化過程解析 (孝橋照生,西内武司,広沢哲)
第7章 MFMを用いたネオジム磁石の熱消磁過程その場観察 (山岡武博)
第8章 Nd-Fe-B磁石の有限要素マイクロマグネティクス解析 (大久保忠勝)
第9章 統計物理学による磁気モーメントの反転に対する核生成理論の構築 (宮下精二,西野正理)
【第IV編 省/脱Dy化技術】
第1章 超微細結晶Nd-Fe-B焼結磁石 (佐川眞人,杉本諭,溝口徹彦)
第2章 熱間加工異方性磁石 (日置敬子,服部篤,入山恭彦)
第3章 粒界拡散法 (中村元)
第4章 HAL(High Aniso.field Layer)工法と重希土類フリー磁石 (石坂力)
第5章 低温共晶合金拡散法 (宝野和博)
第6章 異方性ネオジムボンド磁石の開発 (三嶋千里,野口健児)
【第V編 その他の磁石開発】
第1章 R(FeM)12Ny系磁石 (平山悠介)
第2章 異方性ナノコンポジット磁石 (広沢哲)
第3章 高鉄濃度Sm2(Co,Fe,Cu,Zr)17磁石 (桜田新哉)
第4章 SmFeN系磁石 (久米道也,石川尚,高木健太,尾崎公洋)
第5章 高性能フェライト磁石の最近の動向 (小林義徳)
第6章 計算科学による新規磁石探索の展望 (三宅隆)