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塚越 一仁 グループリーダーと千葉工業大学らの共同研究論文が、ACS Editors' Choiceに選ばれました

フラーレンC60粒子を用いた電子デバイスを提案
− ナノ空間に限定されたフラーレン鎖を閉じ込め 伝導メカニズムを解明−



塚越 一仁 グループリーダー (超薄膜エレクトロニクスグループ)
 塚越 一仁 グループリーダー(超薄膜エレクトロニクスグループ)と千葉工業大学 らの共同研究グループは、C60フラーレン※1 集合に電子注入を行ってC60フラーレン鎖を形成、また電気制御により、C60フラーレン鎖が不揮発性抵抗スイッチとして機能することを発見しました。

情報技術が発展するにしたがって社会が扱う情報量は爆発的に増加しており、情報の保持媒体(メモリー)の大容量化、高性能化が喫緊の課題となっています。従来の微細加工技術には物理的な限界があるため、微細構造を製作する新たな手法が求められていました。

共同研究グループは、C60フラーレン集合に電極から電子を直接注入することで、電極間をリンクするC60鎖チャネルを自己組織的に配列させる方法に注目し、その伝導性を明らかにすることを試みました。その結果、C60フラーレン鎖が650サイクル以上の不揮発性抵抗スイッチとして機能することを発見しました。また、C60フラーレンの表面をカルボキシル基で修飾したC60 pyrrolidine tris acid(CPTA)の塗布型薄膜においても、電子注入によってC60鎖チャネルが形成され、電界による自己組織的な配列が可能であることがわかりました。

CPTAを用いたデバイス作製は既存の半導体プロセスと適合することから、微細化技術にブレイクスルーを起こす可能性があります。さらに、2つのC60のみで駆動させた場合、世界最小のデバイスが実現し、既存の加工を必要としない次世代デバイスの開発が期待されます。

この研究成果は、米国化学学会(American Chemical Society, 略称 ACS※2 )が発行している査読付き学術雑誌 ACS publication Electronic Materials に公開され、ACS publication が発刊している膨大な論文データベースの中から、1日に1つ特に優れた論文を紹介する『ACS Editor's Choice』 の2023年5月16日の論文に選ばれ、6か月間の閲覧が可能になっています。

この共同研究は、「NIMS連携拠点推進制度」の支援の一環として行われました。


※1 C60フラーレン
炭素原子60個が籠のように結合し直径1nm程度のサッカーボール形状の材料

※2 ACS
米国化学学会は、科学系学術団体としては世界最大の会員数(約16万人)の米国に基盤をおく学術専門団体。Journal of the American Chemical Society, JACSをはじめとする、約64以上の論文誌を発刊している。


サンプルの概略図と2値抵抗スイッチ効果 (出典:千葉工業大学プレスリリース)



MANA研究者
・超薄膜エレクトロニクスグループ
 塚越一仁 グループリーダー



掲載論文



題目   Electromechanical Switching of a C60 Chain in a Nanogap
著者 Masato Takei, Mihiro Takeuchi, Hiroshi Suga, Takatsugu Wakahara, Katsunori Wakabayashi, Susumu Okada, and Kazuhito Tsukagoshi
雑誌 ACS Applied Electronic Materials
掲載日 2023年5月16日
DOI doi.org/10.1021/acsaelm.3c00253




Contact information

ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
TEL: 029-860-4710
E-mail: mana-pr=ml.nims.go.jp([ = ] → [ @ ] )

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