3次元アトムプローブユニット | NIMS

レーザー補助3次元アトムプローブ
Laser-Assisted Atom Probe Tomography

2000年代初頭までの3次元アトムプローブ(3DAP)では、針状試料に静電界と数nsの電圧パルスを加えて電界蒸発による原子のイオン化を行っていたため、試料には導電性が必須という制約があった。このため、3DAPの応用は主に金属材料の解析に限られていた。10-2 Ohm·cm程度の高ドープSiや薄い酸化物層で電圧パルスによる解析例はあったが、それより高い抵抗率の試料では電圧パルスによる解析は不可能と考えられていた。3DAPの応用範囲を半導体や絶縁体にも拡げるため、レーザーパルス補助による電界蒸発を利用した3DAP装置の開発が進められることになった。


図1. レーザー補助3次元アトムプローブの模式図(GIFアニメーション)


図1にレーザー補助3DAPの原理の模式図を示す。高電圧パルスの代わりに針状試料の先端へレーザーパルスを照射し、電界蒸発のタイミングを同期させる点以外は、従来の3DAP(電圧パルス型)と原理は同じだ。

図2図3はNIMSで開発したレーザー補助3DAPの模式図とその写真を示している。波長1030 nmの赤外光レーザーでは、試料によっては質量分解能が十分に得られない。これは、長波長レーザーの場合、フォノン励起による試料温度上昇が電界蒸発を誘発し、熱伝導の悪い試料では質量分解能が特に悪化するためだ。 一方、レーザー波長変換器によって2倍波の515 nmの可視光、3倍波の343 nmの紫外光、4倍波の257.5 nmのレーザーを選択できるように設計した結果、短波長レーザーでは直接電子励起によるイオン化が促進されるためか、質量分解能が著しく改善されることが分かった。343 nmの紫外光レーザーを使い、NIMSは世界で初めて絶縁体バルクの3DAP解析に成功した(Y.M. Chen et al., Scripta Materialia 61, 693-696 (2009))。この成果以降、3DAPの応用範囲は金属材料だけでなく、半導体や絶縁体にまで劇的に広がっていった。


図2. NIMS独自開発レーザー補助3DAPの模式図



図3. NIMS独自開発レーザー補助3DAP装置の外観