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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.109
 
2021.1.13
ゲルマニウムナノワイヤの写真
今月の一枚
ゲルマニウムナノワイヤの花

黄金に輝く花——「ゲルマニウムナノワイヤ」という物質でできた直径わずか10マイクロメートルの花だ。シリコン基板にゲルマニウムを含むガスを吹き付けて作るその過程は、まるで種から金色の植物が成長していくかのよう。人の目には見えない極微の世界でも花は咲く。混沌とした世の中でも、心にはいつも小さな花を——今年もNIMSをよろしくお願いいたします。

HOT TOPICS
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タラからできた生体吸収性シートの写真
かまぼこ工場から医療材料!? 
体内で分解・吸収される生体吸収性シートを開発
プレスリリース 2020/12/10

手術後の傷口を張るだけで塞ぎ、完治したら体内で分解・吸収される医療用シートが誕生! 原料はなんと、かまぼこ工場から出る廃棄物から抽出したタラのゼラチン。コスパ抜群、医療費削減にも期待大!

新しい近赤外線向け半導体の構造の写真
安全で低コスト!
新しい近赤外線向け半導体を発見
プレスリリース 2020/12/11

赤外線用のLEDや検出器に使われる半導体は毒性元素が含まれていることがほとんど。そこでNIMSはカルシウム、シリコン、酸素から成る安心・安全な半導体を開発! 実現にはNIMSならではの発想の転換が!

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ボトルブラシポリマーの写真 史上最長のボトルブラシポリマーの合成に成功

プレスリリース 2020/12/9

房総石の写真 千葉県より新種鉱物「房総石(ぼうそうせき)」を発見

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MIコンソーシアムの組織図の写真 SIP研究成果を社会実装するための
マテリアルズインテグレーションコンソーシアム発足

プレスリリース 2020/12/22

NIMS公式ウェブサイト
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
多層膜構造色シートでできたファッションの写真
Vol.2
構造色材料
~NIMS発「多層膜構造色シート」がファッションに新風を巻き起こす~

モデルがランウェイを進むたび、メタリックな光が放たれる。「四次元の可視化」と名付けられたこの斬新なファッション、実は「多層膜構造色シート」と呼ばれるNIMS発の構造色材料で作られているのだ。

多層膜構造色シートを試験片に貼った写真
多層膜構造色シートを試験片に貼り、力を加えると変形した部分のみ色が変わる。変色することで、建造物の劣化を誰でも簡単に検知できる。

構造色とはシャボン玉や宝石のオパールなどに見られる発色現象のこと。オパールそのものに色はないが、粒の揃った透明で微細な球が整列する構造を持ち、光の反射角度によって色づいて見える。不動寺浩研究員は曲げたり伸ばしたりして球の間隔が変わると、構造色が変化するシート状の材料「フォトニックラバー」を開発。橋や建物に貼ることで、老朽化や地震で生じる表面のひび割れが、変色によって可視化できる新技術を確立した。高価で特別な装置を使わなくても、人の目視だけで異常を判断できる仕組みだ。

ただ、フォトニックラバーは大量生産が難しく社会実装にはコスト面が欠点だった。そこで不動寺は、ラッピングに使われる市販の透明な多層膜フィルムに着目。極薄の膜が重なってできた多層膜フィルムは、伸ばすと膜の層間が狭まり、見た目に色が変化する。

多層膜構造色シートの作成機の写真
多層膜フィルム(上)に黒色フィルムを貼り合わせると、光沢が美しい多層膜構造色シートが出来上がる。

不動寺は安価で、フォトニックラバーと類似の性質を持つこの多層膜フィルムに、黒色フィルムを裏打ちした「多層膜構造色シート」を開発。下地に黒を敷くと発色が際立つ“タマムシの甲”や“モルフォ蝶の羽”を生物模倣した手法によって、シートに金属光沢を与え、劣化の視認性を高めることに成功した。

不動寺研究員の顔写真
「構造色変化に着目した岡本さんの感性やエレガントな作品に感動するとともに、改めて構造色材料の可能性を感じた」と不動寺研究員。

そんな折、服飾デザインを専攻している福岡市の学生・岡本尚美さん(香蘭女子短期大学テクニカル専攻科)から「フォトニックラバーで服を作りたい」という依頼が舞い込む。両面に光沢を施した多層膜構造色シートを提供したところ、先進的な素材とその造形が高く評価され、新人デザイナーの登竜門「装苑賞」の2020年グランプリに輝いた。

「服飾分野への応用は構造色材料の新しい展開」と不動寺研究員。予期せぬ方向へ、材料は独り歩きする。その行方は——構造色材料から目が離せない。

もっと知りたい!
アツい構造色材料の世界

★まてりある’s eye (NIMS公式YouTube動画)
【タマムシが老朽化したインフラの発見を容易に!?】

★材料のチカラ(NIMS広報特設サイト)
【この材料、あなたなら何に使う? #01フォトニックラバー】

BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「誰が音楽をタダにした?」
「誰が音楽をタダにした?」
スティーヴン・ウィット 著  関 美和 訳
早川書房
メディア担当・Nのイチオシ!

音楽プラットフォームの世界標準「mp3」。mp3のおかげで、高品質な音楽を誰もが手軽に楽しめるようになりました。しかし、その普及のカギを、実は片田舎のCD工場で働く一従業員の犯罪行為が握っていた……という驚きの真実が、スリリングに描かれています。その従業員に、mp3を開発した研究者、音楽業界の敏腕プロデューサーを加えたお互い面識もない3人の思惑が錯綜し、mp3が爆発的に広がっていきます。そこには強欲や悪知恵が入り混じり、時代の変革を担うのは決して革新的な技術だけではない、生々しい人間の姿がまざまざと浮かび上がってくるのです。
普段、研究成果をどう世の中に広めていくかを模索していますが、その広がり方や発展には多様性があり、また、必ずしも良い技術がまっとうな形で世界を変えるとは限らない——そんな複雑な現実を、深く考えさせられる一冊です。

あらすじ

CDからダウンロード、そして定額制ストリーミング配信へ——mp3という革新的な音声圧縮技術が、海賊版を通して今日の音楽業界を席巻していく様子を描く。綿密な取材を通して、欲深い人間性にも迫った群像ノンフィクション。

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