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[Vol. 92]

能動学習の導入による高性能熱電材料開発の加速

2025.01.20

ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)の研究者らは、伝統的な材料科学の手法に機械学習を融合させることでケステライト型熱電材料の性能向上を達成しました。

リサーチハイライトVol.92のグラフィックス画像

Cu2ZnSnS4のようなケステライト型結晶構造をもつ物質群は、熱を電気に変換する熱電変換材料の有力な候補として知られています。これらの材料は非毒性かつ資源豊富な元素から構成されるとともに、中には300から800 K(26から526 °C)の温度域において1を超える無次元性能指数zTを示すものも存在します。ケステライトは約500 Kにおいてカチオン配列が秩序型から無秩序型へと転移し、熱電特性に多大な影響を与えることが知られていましたが、このふるまいを制御する合成条件を確立するためには膨大な回数の実験が必要でした。


MANAの研究者らは、このプロセスを加速するために機械学習を利用しました。わずか4回の実験サイクルによって焼結条件を最適化することが可能になり、Cu2.125Zn0.875SnS4の熱電特性を60%改善することに成功しました。この研究は若手国際研究センターのCédric Bourgès博士、マテリアル基盤研究センターのGuillaume Lambard博士、MANAの佐藤直大博士、橘信博士、石井智博士、森孝雄博士による研究チームによって遂行されました。


研究チームはActive Learning with Bayesian Optimization (ALMLBO)という機械学習の手法を用い、実験で得られた熱電特性とともに、焼結パラメータ(加熱速度、焼結温度、保持時間、冷却速度、印加圧力など)を解析しました。すると、機械学習モデルは次に試すべき新しい実験条件を提案し、研究チームはそれに従って再び実験を行い、得られた特性を解析する—このサイクルを熱電特性が改善されるまで繰り返しました。


研究チームは、放電プラズマ焼結法によって焼結した11個のサンプルのデータを初期データとしてモデルに入力しました。このALMLBOモデルが予測した焼結条件を適用することで、725 Kで0.44というケステライト型多結晶熱電材料では最高のzTを得ることに成功しました。研究チームは、「この手法は、複雑な材料系の発見、あるいは性能の最適化において、伝統的な材料科学の手法に機械学習を融合させることの有効性を示すものです」と述べています。


開発された手法は他の材料系にも適用可能であり、太陽電池、蓄電池、エレクトロニクスなど多様な分野における材料開発の加速が期待されます。



(2024年 Elsevier 「Acta Materialia」誌)

Reference

Journal Acta Materialia
Title Process optimization on kesterite-based ceramics for enhancing their thermoelectric performances assisted by active machine learning approach: A tool for metal-sulfide ceramics development
Authors Cédric Bourgès, Guillaume Lambard, Naoki Sato, Makoto Tachibana , Satoshi Ishii, Takao Mori
Affiliations
  1. 若手国際研究センター(ICYS), 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
  2. マテリアル基盤研究センター(CBRM), 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
  3. ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA), 〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
DOI 10.1016/j.actamat.2024.120342

Contact information

ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA)

〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
TEL: 029-860-4710
E-mail: mana-pr=ml.nims.go.jp([ = ] → [ @ ] )

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