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Research Highlights
[Vol. 91]
MANA、次世代エレクトロニクスのための強誘電・強磁性材料を開発
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)の研究者たちが強誘電・強磁性材料開発の新たな方法を提案し、スピントロニクスとメモリデバイスの前進の扉を開きました

1831年、マイケル・ファラデーは、電気と磁気の根本的な関係性を発見し、磁場の変化が導体内に電流を生じさせることを実証しました。
MANAの研究者たちが行った最新の研究では、強誘電・強磁性(ferroelectric-ferromagnetic:FE-FM)材料の新たな設計方法を提案しました。これらの材料は強誘電性と強磁性の両方の特性を備えており、電場を使って磁気特性を、または逆に磁場を使って電気的特性を操作することもできます。このような材料は、スピントロニクスの分野にとっても、またメモリデバイスの分野にとっても非常に有望です。自然界では極めて希少なFE-FM材料には、比較的低い電場と磁場による交差制御を実現できるという利点があります。この研究は、NIMS-MANAのイゴール・ソロビヨフ主幹研究員が主導する形で、MANAの小野凌太博士、そして大阪大学のセルゲイ・ニコラエフ博士の協力の下で行われました。
強誘電性材料には永久電気分極があり、通常は結晶格子におけるイオン変位により生じ、同じ方向に整列する帯電した電気双極子の形成に至ります。強磁性材料の主な特徴は、電子スピンと軌道運動により生じる非補償磁気モーメントです。強誘電性をもたらすイオン変位は強磁性に必要な磁気秩序を乱すことがあるため、単一の材料で両方の特性を両立させることは困難です。同様に、磁気モーメントの強磁性配列は、強誘電性を生み出すうえで必要となる空間反転対称性を破るのには十分ではありません。
本研究の著者らは、電子が交互に軌道を占有する傾向を持つKugel-Khomskii機構により起こる反強的軌道秩序が、強磁性的相互作用を促進させつつ空間反転対称性も破ることを提案しました。ハニカム構造を持つファンデルワールス強磁性体であるVI3にて解析をしたところ、この秩序化により強誘電性・強磁性の基底状態が生じることを明らかにしました。
ソロビヨフ博士は、「固体中で占有原子軌道を適切に配置することで、材料に強磁性だけでなく強誘電性も持たせることは可能」と述べており、マルチフェロイクス材料と強誘電性強磁性体に基づいた次世代電子デバイスの開発に向けて、このアプローチが有効となる可能性が高いことを強調しています。
(2024年 APS 「Physical Review B」誌)
Reference
Journal | Physical Review B |
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Title | Ferromagnetic ferroelectricity due to the Kugel-Khomskii mechanism of the orbital ordering assisted by atomic Hund’s second rule effects |
Authors | Igor Solovyev, Ryota Ono, S. A. Nikolaev |
Affiliations |
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DOI | 10.1103/PhysRevB.110.205116 |
Contact information
ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA)
TEL: 029-860-4710
E-mail: mana-pr=ml.nims.go.jp([ = ] → [ @ ] )