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[Vol. 90]

再構成可能な論理回路で新たなコンピューティングパラダイムを実現

2024.08.22

ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)の研究者たちは、電圧制御で機能を切り替える再構成可能なロジック回路を開発しました。この新技術は、コンピューティングアーキテクチャの可能性を広げます。

リサーチハイライトVol.90のグラフィックス画像

現代のほとんどのコンピュータは、フォン・ノイマン型(von Neumann architecture)に基づいています。フォン・ノイマン型ではメモリとロジックが別々の素子に分かれており、これら2つのユニット間でデータの転送が行われるため、処理速度の低下や消費電力の増加が避けて通れません。これに対しふたつのユニットをひとつの素子で駆動するイン-メモリ素子では、データ処理をより速く、より省電力にする事が可能です。

MANAの量子デバイス工学グループ(若山裕グループリーダー、新ヶ谷義隆 主任研究員 を含む)と、高分子・バイオ材料研究センターの相見順子 主任研究員は再構成可能な二入力演算デバイスを開発しました。このデバイスは二次元原子膜と高分子メモリ層で構成されており、異なる論理回路を電圧だけで容易に切り替えることがでます。またニューロモーフィックコンピューティングシステムの進展に不可欠な人工シナプスとしても機能します。

今回開発したデバイスは、アンチアンバイポーラートランジスタ(AAT)という特殊なトランジスタを上下のゲート電圧で制御するデュアルゲート型AATとなっています。この素子の中心部にはn型半導体とp型半導体を積層したヘテロ界面が形成されており、ゲート電圧の制御で電流が増減するΛ字形の電気特性を示します。この特性を利用すればゲート電圧の制御で「0」と「1」の論理状態に対応する特定の電流値を生成することができます。つまりAATはゲート電圧を適宜組み合わせるだけでAND回路やOR回路などさまざまな論理機能を構築することができます。

さらに実用化へと進めるためには、すべての二入力演算回路の入力電圧を統一しなければなりません。これを実現するためAATにメモリ機能を融合しました。具体的には亜鉛フタロシアニンコア(ZnPc)に絶縁性高分子鎖を取り付けたスターポリマーをメモリ材料としてデバイスに組み合わせました。ZnPcは電荷を蓄積し、その電荷の影響で論理回路の駆動電圧を精密に調整することが可能になります。この精密な電圧調整が可能になったことでANDからOR、NANDからNORなど、異なる論理演算回路の間を切り替えることも可能になりました。

このデバイスは、人工シナプスのようにも機能します。つまりパルス電圧を調整することで、そのシナプス応答や電流信号を自在に制御することができます。これは人間のシナプスが、信号を強めたり弱めたりする仕組みに類似しています。新ヶ谷主任研究員は、「私たちは非フォン・ノイマン型のデバイス設計を開発しました。それは、不揮発性メモリ機能をデュアルゲートAATに組み込むもので、従来のCMOSアーキテクチャでは実現できない技術です。」と述べています。


若山 裕 グループリーダー(量子デバイス工学グループ)
(2024年 ACS 「Applied Materials & Interfaces」誌)

Reference

Journal ACS Applied Materials & Interfaces
Title Multifunctional In-Memory Logics Based on a Dual-Gate Antiambipolar Transistor toward Non-von Neumann Computing Architecture
Authors Yoshitaka Shingaya, Takuya Iwasaki, Ryoma Hayakawa, Shu Nakahara, Kenji Watanabe , Takashi Taniguchi, Junko Aimi, Yutaka Wakayama
Affiliations
  1. ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA), 〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
  2. 電子・光機能材料研究センター, 〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
  3. 高分子・バイオ材料研究センター,〒305-0044 茨城県つくば市千現1-2-1
DOI 10.1021/acsami.4c06116

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ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA)

〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
TEL: 029-860-4710
E-mail: mana-pr=ml.nims.go.jp([ = ] → [ @ ] )

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