イオニクスデバイスグループ
人工知能など多様な新機能を可能にするイオニクスデバイスを創る
新しい原理で動作する高性能や新機能デバイスの重要性
身の回りの情報通信機器には多くのエレクトロニクスデバイスが使われており、それらの大多数は半導体デバイスです。半導体デバイスは、微細化と集積化の技術開発に支えられて目覚ましい発達を続けていますが、近い将来その進歩が鈍化すると危惧されています。今後、次世代の高度情報化社会へと発展するためには、従来の半導体デバイスとは異なる原理で動作する、新機能や高性能化を実現するデバイスも積極的に創らなければなりません。私たちは、この新規デバイスとしてイオニクスデバイスに着目しています。
固体内のイオン移動を利用したイオニック・ナノアーキテクトニクス
従来の半導体デバイスとは異なる原理で動作するイオニクスデバイスの特徴は、結晶骨格を成すイオン (原子) の移動をナノスケールから原子スケールで制御して動作することにあります。電子と比べて質量やサイズが著しく大きなイオンの移動制御は、結晶構造や界面構造などを再構築することであり、物質・材料における可逆的なナノ建築 (=ナノアーキテクトニクス) を可能にします。イオニクスデバイスは、このナノアーキテクトニクスに基づき、外部電圧などの印加により機能的・構造的な変化を起こす可塑性を有しています。この可塑性は脳のシナプス機能の重要な特徴であることから、イオニクスデバイスは人工知能デバイスとしての利用も可能です。
専門分野・研究対象
私たちは、固体イオニクスとナノテクノロジーを基盤として、多様な新機能を可能にするイオニクスデバイスの創製を目指しており、その研究指針を図1に示します。イオン伝導体内の局所的なイオン移動によるイオニック・ナノアーキテクトニクスを利用することにより、従来の半導体デバイスでは得られなかった新機能や高性能を可能にするイオニクスデバイスを創製します。例えば、原子スイッチ、人工シナプス、人工五感デバイス、意思決定デバイス、転移温度の制御が可能な超伝導デバイスなどです。さらに、これらの新原理で動作するイオニクスデバイス創製の基礎・基盤研究を基にして、関連企業との共同研究によって実用化のための開発研究を積極的に進めていきます。特に、人間の脳や五官などの知能機能を模倣して動作するイオニクス・ニューロモルフィックデバイスや回路の創成、そして将来的には企業連携によりそれらのデバイスや回路を用いた情報処理端末用や自律型ロボット用AIシステムの技術開発を目指します。