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小川 由希子研究員(構造材料研究拠点 軽金属材料創製グループ)が2017年度 第12回「ロレアル - ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞

2017.10.18
小川 由希子研究員(受賞時:日本学術振興会特別研究員 (SPD)現在:構造材料研究拠点 軽金属材料創製グループ)は平成29年7月5日、第12回「ロレアル - ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞しました。
本賞は、日本の若手女性科学者が、国内の教育・研究機関で研究活動を継続できるよう奨励することを目的として、2005 年 11 月、日本ロレアルが日本ユネスコ国内委員会との協力のもと創設されたものです。対象者は、物質科学または生命科学の博士後期課程に在籍または、同課程に進学予定の女性科学者です。小川研究員は東北大学大学院工学研究科在学時に行った「構造変化を利用した新しい高機能マグネシウム合金の開発」についての研究が評価されての受賞となりました。

【業績名】
構造変化を利用した新しい高機能マグネシウム合金の開発

【研究内容】
マグネシウム(Mg)は実用金属のなかで最も軽いことから、次世代の構造材料として長年期待されており、電子機器部品、自動車部品などに使用されています。しかしながら、加工性が悪いという欠点からその用途は限られており、その欠点はMgの結晶構造である六方稠密(hcp)構造の変形のしにくさに起因する事が知られていました。
そこで、本研究では、Mgにスカンジウム(Sc)を加えたMg-Sc合金に注目し、サイコロのように等方的であることから変形しやすい体心立方(bcc)構造を取り入れることで加工性を向上するとともに、これまで Mgでは例のなかった構造変化 (温度によってbcc構造からhcp構造へ、またはその逆へ変化すること) を用いた金属組織の制御によりMgの高機能化を目指しました。
その結果、加工性および強度の向上に加え、変形させても形状が元に戻る形状記憶特性という従来のMgでは考えられなかった機能性の付与に世界で初めて成功しました。本合金は従来の形状記憶合金より70%程度軽く、人工衛星のフレームなど、打ち上げコスト削減のために軽さが求められる宇宙材料への応用が期待できます。また、血管の狭窄による疾患の治療に用いられるステントとして、形状記憶合金が注目されていますが、金属が体内に残り続けることによる血管の再狭窄が懸念されています。そこで、本合金は、Mgの生分解性を生かした治療完了後体内に吸収されるステントとしての適用も望めます。今後は実用化に向け、さらなる強度の向上や、形状記憶特性が得られる温度の上昇に挑戦します。
授賞式の様子。左から2番目が小川由希子研究員。 (写真 : 日本ロレアル提供)
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