VAMASについて Q&A

 Q1.  国際標準って何?

通常、ISOやIECで制定される、製品の仕様や試験方法などの標準(規格)のことで、元々は国際的に共通な標準を作ることで、互換性や生産効率の向上を図るものです。この当初の目的の他に、1980年頃には貿易促進手段としての活用が図られ、1995年にWTO(世界貿易機関)のTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)において、技術基準を作成する場合は国際標準に基づくことが義務付けられ、貿易障壁の解消手段としての働きが強化されました。これを契機に、JISの総見直しが実施され、ISOやIECに対応しないJISは廃止され、対応するJISは原則的にそれらに整合させるようになりました。これは見方によっては、各国の慣習や文化が元になっている標準や貿易障壁を排除する経済的干渉とも言えます。
さらに最近では、国際標準を独占禁止法の適用に対抗する手段としても検討されています。
言い換えれば、各国とも国家の維持と発展が国家戦略で、その一つの手段が市場の拡大による経済発展です。戦前は領土の拡大が市場拡大にもなりましたが、近年は国際標準によって市場の拡大を図っていることになり、国際標準を制するものが世界市場を制するようになって来ています。

 Q2.   国際標準って重要みたいですが、大げさすぎませんか?

東南アジアから締め出された洗濯機、断念したアナログのハイビジョンテレビや海外で売れない使えない携帯電話など、他国に先行する高い技術があっても国際標準品として扱われないと市場が無く、電気製品や電子部品さらに光技術にもその状況は広がっています。高い技術と品質があれば売れた時代から国際標準戦略が必要な時代になっています。高品質の日本製品に対応するために作られたとも言われている品質システムのISO9000も、どちらかというと押しつけであり手数料を搾取されているとも言えます。
資源の乏しい日本は、優れた製品を作って輸出しているから豊かな経済を保っていられるのであって、国際競争の激化に加えて国際標準による市場の減少が拡大すれば、海外市場が限られ次世代の日本経済が不安というより今の世代の豊かな老後がなくなる恐れは十分にあります。国際標準の最前線で、各国の代表と議論している担当者は同様に感じているはずで、だからこそ簡単には辞められず、ボランティアに近い状況で時間を割き、格安航空券でも出張して各国代表と議論を交わしています。

Q3.   でも標準は利益になり難く、できた国際標準に対応していれば良いのでは?

これは外国を信じ頼りきった考え方です。先進諸国は世界戦略のため自国の製品や技術、標準を普及させようとしています。対抗する製品を生産する技術を育てず黙って購入する市場を作ろうとしているのです。安易な標準や技術の導入、製品購入、データ参照は将来の発展の妨げです。海外に依存することによる将来の供給や価格の不安だけでなく、製法や特性、標準の根拠が不明になり、新製品の開発や国際標準の審議や対抗する提案が困難になります。日本の技術レベルが低下することになるので、目先の利益のために自分の首を絞めているようなものです。
 

Q4.   だったら民間ではなく政府が行うべき仕事では?

国際標準は、元々は「互換性や生産効率の向上を図るもの」という趣旨・前提が掲げられ、利益を得るのは民間企業という土俵が国際的に設定されているので、表立って政府が動けない状況ですが、政府には国家百年の計の策定とそれに基づく指導を期待し、民間企業には国際標準化活動への適切な関与と政府から有効な指導を引き出すための政府への積極的な働きかけが必要です。
 

Q5.   何か大きな意識改革が必要ですね。

人類は変化する環境に対応しつつ、存続し発展するために生きているのであって、そのためにも競い、また今の生活の充実や快楽よりも社会と次の世代に役立つものを残すことが求められています。最も大事なことは、次世代に良い製品と技術(文化)さらに適切な国際標準を残し、変わりつつある環境に適応して社会が発展する可能性を託すことです。即ち、国際標準提案や議論等の国際標準化活動に関与することは、諸国の世界戦略の中で、日本の立場を主張する機会かつ橋頭堡であり、将来の国際市場を確保する可能性を残すものなのです。
いきなり国際標準を提案しても審議の対象とする賛同を得ることすら難しく、さらに国際標準化活動に関与するためには、その根拠となる研究データの積み上げや賛同を得るため国際会議開催や参加による根回しが不可欠で、国内外の研究機関との協力体制を育成し維持することが大切です。限られた市場で潰し合いをするのではなく、標準を新しい市場を広げるもの、他の同業種との差別化の目安と認知すれば、棲み分けができ共存できることにもなるでしょう。
 

Q6.   国際標準の手続きについて

国際標準は国際的に拘束力も有り、提案され成立までに多くの審議と合意の手続きを要します。
ISOへの新規提案を行うには、通常はISO加盟国内の標準団体が提案母体になることが必要で、採択されるには、当該TC(専門部会)での過半数の賛成と、新規提案をWGで審議するための専門家を出してまで賛成する国が5カ国以上必要です。
さらに国際標準成立への手続きを進めるには、投票ごとのコメントに全て対応し、反対が無いようにする必要があります。
国内外の多くの識者や産業界の同意・了解が無ければ国際標準にならず、一過性のデータや興味は、手続きの過程で淘汰され、多くの分野で真に求められる研究成果が、標準となります。成立させること自体のインパクトは大きく、他の国際標準提案の実績にもなります。またインパクトの大きい国際標準ほど、多くの国の利害をまとめることは難しく、これまでの提案を含めた活動と貢献の実績が幹事国業務引き受け数につながり、それがISOやIEC内での発言力となり、事前合意を図り易くすることに結びつくので、地道な活動を常に推進しておくことが必要です。
 

Q7.   このことを効果的に進める手段としてVAMASがあると聞きましたが何ですか?

VAMASは、1982年のG7ベルサイユ・サミットで合意された先進材料の標準化に関する国際的な約束の国際協力です。目的は、新材料に関連した新技術の発展と国際標準化を促進することにより、先端技術製品の貿易と経済的交流を活性化することです。
1987年から5年ごとに参加国の代表者による調印を経て継続して来ましたが、1997年に、さらに無期限の延長の覚書を締結しています。ベルサイユ・サミットで合意された20余りのプロジェクトの中で、現在も続いている数少ないものの一つで、各国ともその価値と成果を認知している現われとも言えます。運営委員会の日本代表委員は現在、NIMS、文部科学省(MEXT)、及び産業技術総合研究所(AIST)が務めています。
研究活動費は参加国研究機関が負担しており、日本では、平成13年度まで振興調整費により支援されていましたが、国際標準提案・成立まで長期間を要し競争的資金に沿わないことから、平成14年度からNIMSが担当する分野についてはNIMSの自己資金を出資し、産学官の協力を得ながら国際標準化活動を進めています。
 

Q8.   VAMASのメリットは?

先進的材料の共通試料を用いたラウンドロビンテストに参加することで、先進的材料の評価を行えるだけでなく国際的な研究機関の測定データとの比較を行うこともでき、先進材料特性の評価技術と信頼性を向上でき、提案される国際標準の情報を早期に入手できます。
国際標準提案に必要なデータをVAMAS活動で準備できるだけでなく、VAMASはISOとリエゾンを結んでいて、VAMASでの国際ラウンドロビンテストの結果を取り纏め、TTA文書(Technical Trends Assessment Document)としてISOに提案でき、成立までの時間を短縮できることになっています。
またVAMAS活動を通じて国際的な研究者のネットワークを容易に構築でき、ISOの新規提案項目の投票の際の審査に必要な専門家の協力や意見を取りまとめておくことが出来ます。
さらにISOの場において、日本の発言・投票はISOの専門委員会を構成する20数ヵ国の1票ですが、VAMASでは7ヵ国中の1票なので、意見を主張し易く取りまとめやすくなります。
VAMASを研究成果と国際標準の架け橋として活用できます。
 

Q9.   VAMASの成果の具体的な事例はありますか?

たとえば、『ISO19819:2004液体ヘリウム中の引張試験法』は、提案母体が通常の参加国の標準母体ではなくVAMASとして提案され、その巻末のBibliographyに、『VAMASはISOとリエゾンにある国際機関の一つで、この草案はその技術作業部会TWA17の活動の成果として提案された』と記載されています。
VAMAS活動における取りまとめに約5年、国際標準成立に3~5年かかり、長期的な取り組みが評価される分野です。

Q10.   今、日本に求められていることは?

VAMASの運営委員会からは、日本の研究機関や企業の参加していないTWAと日本の担当者が登録されていても大学等で標準化に関わる予算がなくVAMASとして活動していないTWAへの対応が強く求められています。
この要請に対応するためにも、国際標準化活動に対する多くの方のご協力とご支援が必要です。
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