微細加工プロセス

 成膜した多層膜の輸送特性(あるいはデバイス特性)を測定するためにはナノスケールからマイクロスケールでの微細加工が必要となります。このような微細加工を私たちのグループでは
  1. 高分子レジスト塗布
  2. 電子線描画装置あるいはマスクアライナーによる露光
  3. 現像によるレジストパターニング
  4. 蒸着によるパターン転写、あるいはミリング法によるパターン転写
といった流れで行っています。

レジスト塗布

 基板の上にレジストと呼ばれる高分子を滴下し、それを高速で回転させることによってレジストを均一に塗布します。この作業をスピンコートと呼んでいます。最終的なレジストの厚さはシンナーに対するレジスト濃度やスピンコートの際の回転数に依存して決定されます。このレジストをパターニングすることが微細加工の第一段階となります。レジストにはポジ型、ネガ型という二種類が存在しますが、これらについては後述いたします。

露光プロセスと現像

 レジスト塗布の後、電子線描画装置、あるいはマスクアライナー(フォトリソグラフィー)によって露光を行います。電子線描画装置の場合には、高加速度(典型的には数十kV以上、高い物で100kV程度)で加速された電子をレジストに打ち込み、レジストの分解あるいは化学増強を行います。マスクアライナーの場合には、マスクを介して光子を打ち込む事によって、電子線描画同様、レジストの分解あるいは化学増強を行います。一般に電子あるいは光子の入射によって分子間の結合が切れ、低分子化が生じるレジストをポジ型、逆に化学増強が起こるレジストをネガ型と呼んでいます。露光後の基板は現像液に浸す事によって、ポジ型レジストの場合には低分子化した領域が溶け出し、またネガ型レジストの場合には非露光部分が溶け出すことによってパターンが形成されます。

 電子線描画の場合には、収束させた電子線を基板面で走査することによってパターン形成を行います(イメージとしては鉛筆で絵を書くようなもの)。そのため、微細な構造を加工することが可能ですが、反面で描画には非常に長い時間が必要です。マスクアライナーの場合にはマスクを介して全面転写するので(イメージとしてはカメラのシャッターを切るようなもの)、大面積を短時間でパターニングすることができます。

 電子線描画用のレジストは、一般にポジ型レジストの方が分解能は良く、最近の装置では線幅10 nm以下のパターニングも可能です。一方、ネガ型レジストは固い物が多く、レジストパターニング後の加工プロセス(ミリング、エッチング等)に有利な場合が多いです。

 マスクアライナー用のレジストは、一般に光の吸収帯に合わせて合成されているため、色のついたものが多くなります。分解能は光の波長程度で、実験室で用いるものは設計の優れた装置でも500 nm程度です。産業用の量産機(ステッパー)の場合には数十nmの加工も可能です。

リフトオフ法によるパターン転写

 露光後の基板に対して、金属等を蒸着あるいはスパッタし、その後剥離液によってレジストを除去すると、基板上にはパターニングした領域にのみ、金属等が残ることになります。これはレジストパターンを基板上に転写した事に対応します。このような手法をリフトオフ法と呼んでいます。

Arイオンミリングによるパターン転写

 露光後の基板に対して、加速したArイオンを衝突させる事で、基板の露出部分を削りだします。その後、レジストを剥離する事によってパターンを形成します。

インデックス

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