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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.119
 
2021.11.10
フラーレンのナノウィスカーの写真
今月の一枚
フラーレンのナノウィスカー

ライトアップされた紅葉のように美しい物体は、窒素原子を内包したフラーレンを含むフラーレンナノウイスカー。フラーレン1個は約1nm、それがまるで髭(ウィスカー)のように伸びて連なった様子を捉えた。窒素原子を内包したフラーレンは、量子コンピュータにおける量子ビットの素材として注目を集める。11/17のNIMS WEEKでは、それら量子マテリアルにまつわる最新研究と成果をお伝えする。

HOT TOPICS
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人工視覚イオニクスのイメージ写真
ヒトの目と同じように錯覚する!?
人工視覚素子を開発
プレスリリース 2021/10/11

ヒトの目は、物体を識別するとき、明暗の境界付近が強調される錯覚を起こします。この原理を模倣して、リチウムイオンの移動と相互作用を利用した人工視覚イオニクス素子を世界で初めて開発しました。小型・低消費電力の視覚センシングや画像処理システムなどへの応用に期待大!

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材料進化の最前線をオンラインで!
NIMS WEEK、事前登録受付中!

材料進化の最前線をご紹介する「NIMS WEEK2021」が、一週間後に迫ってまいりました。NIMS Award受賞記念講演をはじめ、今年もNIMSの学術的な成果、実用化が期待される最先端の技術が目白押し! 事前登録がまだの方はお早めにお申し込みください! 

内藤研究員の顔写真
研究者の頭の中はどうなってる?
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ハリセンボンを真似た超撥水材料や、柿渋の成分に着目した接着剤など、ユニークな材料を次々と開発している内藤昌信研究員。その素顔に迫る最新コラムが、NIMS広報特設サイト「材料のチカラ」にて配信中! 

分解したスマホの写真
ワイヤレス充電の仕組みを解明!
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ケーブルにつながず充電できるワイヤレス充電。なぜ離れたところに電気を送れるの? スマホを分解して徹底解明! 電池とコンセントの電流の違いを上手に使った、賢い秘密をご覧あれ!

電池材料解析ワークショップのイメージ写真
電池材料解析ワークショップ
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NIMS蓄電池基盤プラットフォーム による毎年恒例のワークショップ。今回はNIMSが注力してきた『リチウム空気電池とリチウム金属負極』に焦点を当て、中西周次教授 (大阪大) による特別講演、評価装置を利用したユーザーの方々からの成果報告などを行います。申込締切は12月8日。ご参加、お待ちしています!

....and more!
材料物性予測速度を向上させるAI技術開発の図 最少の実験回数で高い予測精度を与える
汎用的AI技術を開発

プレスリリース 2021/10/25

NIMS公式ウェブサイト
TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
セラミックス粉体の写真
Vol.3
セラミックスの熱化学破砕法(CTP法)
~セラミックスが膨れ上がる!? 常識を覆す技術で新材料創出&再資源化を狙う!~

もこもことした綿菓子のような物質——ある特殊な技術で誕生した、セラミックスの新しい姿だ。セラミックスは通常、粉体を高温で焼き固める(焼結)ことで成形される。しかし、特別な環境下で熱処理するとセラミックスが粉々になる、すなわち焼結とは真逆の“焼解”と呼べる現象を、大橋研究員のチームが発見した。

硬い、耐熱性がある、腐食に強いなどの特徴を持つセラミックス。陶磁器をはじめ、半導体や電子部品、医療機器など幅広い用途で使われている。チームも元々、スマートフォンや自動車に搭載するセラミックス部品の性能を高めるため、アンモニアを導入しながらセラミックスを合成する研究に取り組んでいた。

ところがその実験で、アンモニアにごく少量の酸素が混入すると、固まるどころか、綿のように膨れ上がるという奇妙な現象が発現したのだ。通常ではあり得ない現象に、新しい科学の種があると睨んだ大橋。膨れ上がった粉体を調べてみると、アンモニアの分解で生じた窒素が、セラミックスの微粒子内に侵入して発泡していることが判明。

電気炉の写真
電気炉にセラミックスの粉体をセットしたところ。一般的な電気炉が応用できる。

これにより、ナノサイズの穴(孔)が大量に発生、結果、セラミックスが粉々になり、綿のような粉体となっていたのだ。大橋はこの”焼解”の手法を熱化学破砕(CTP)法と名付けた。

ガス配管の写真

CTP法のキモは、アンモニアと酸素を含むガスを導入して熱処理すること。そのため、実験室には、多くのガス配管が設置されている。

「孔のサイズや量をコントロールすることで、発泡スチロールのような軽いセラミックスを作れる可能性もあります」と大橋。
また、焼結したセラミックスを粉々にすることにも意義がある。例えば、セラミックス電子部品の内部には希少金属が含まれているが、硬くて安定なセラミックスを壊してそれを取り出すことは簡単ではない。

しかし、CTP法を応用すれば、それら希少金属を比較的容易に回収できる可能性があり、さらに、粉々になったセラミックス粉体を、原料として再利用することも可能となるはずだ。
新材料の創出と新たなリサイクルシステムの構築——実験の偶然から生まれた2つの新技術はどんな可能性を秘めているのか、今後に注目だ。

大橋研究員の顔写真
「CTP法によって、セラミックスの新たな可能性が広がったと思います。今後どう展開していくか、私自身も楽しみです」と大橋直樹研究員。
もっと知りたい!
熱化学破砕法(CTP法)のキモ
大橋研究員とセラミックス粉体の電子顕微鏡の写真
NIMS WEEK

~CTP法の開発者:大橋研究員が
NIMS WEEKに登場します!~

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BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「岸辺のヤービ/ヤービの深い森」
「岸辺のヤービ/ヤービの深い森」
梨木 香歩 著/小沢 さかえ 画  
福音館書店
イベント担当・Sのイチオシ!

知り合いのサイエンスコミュニケーターの方から勧められた作品。挿絵がすごくかわいくて、手元に置いておきたいと思って購入しました。
ヤービ族という架空の生き物が自然の中で冒険するファンタジーなのですが、人間である「わたし」も登場して、ヤービとの不思議な交流が綴られます。自然の描写がすごく綺麗で、本当に森の中を歩いているように、色や匂いまで文章から感じられるんです。読み進めていくうちに、どうして葉っぱは緑色なんだろうとか、空気が美味しいって感じるのは何でだろうとか、自然の中で感じる素朴な疑問って科学の種なんだなとしみじみ感じて……ヤービのように感受性が豊かなことこそ、科学の始まりだと思うんです。そして、人間が当たり前にしていることでヤービ族を傷つけている、いわゆる人間社会と自然のつながりも風刺的に描かれています。
ヤービ以外のキャラクターも愛らしく、お子さんでも楽しめますし、大人が読むと科学に加えて環境問題や社会構造などを改めて考えることができます。秋の夜長にぜひ。

あらすじ

幻想的な児童文学を数多く手掛ける作者によるファンタジーシリーズ。「ヤービ」と名乗る不思議な生き物と人間の「わたし」、そして個性豊かなキャラクターが織りなす心温まる物語。

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