物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.107
 
2020.11.11
ヤモリの写真
今月の一枚
ヤモリの接着・剥離能力

晩秋になると、温かさを求めて民家に近い場所に棲みつくヤモリ。
滑り落ちそうな窓や壁でも縦横無尽に動き回れるのは、接着性に優れたミクロサイズの毛が足裏に無数に生えているから。ハエやハムシなども持つこの性質を模倣して、NIMSでは何度でも貼って剥がせる、リサイクル性を兼ね備えた接着・接合技術の研究を進めている。

HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
柿渋からできる接着材料の写真
ヒントは柿渋!? 
高い汎用性と多機能性を併せ持った接着剤を開発
プレスリリース 10/20

日本古来の天然塗料・柿渋。その接着成分に着目し、金属・セラミック・有機など幅広い材料に使用可能で、防水・防サビをはじめ多彩な機能を付加できる接着材料の開発に成功!

NIMS WEEK2020 11/27(金)10:00~最新成果ポスター80「バイオベース高性能抗菌材料」
NIMS WEEK2020 11/27(金)14:45~成果講演「バイオベース高性能抗菌材料」
NIMS WEEKのロゴの写真
NIMS WEEK2020
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材料進化の最前線を体感する「NIMS WEEK」まであと2週間(11/25~27)となりました。事前登録はお済みですか? 今なら特製冊子がもらえる特典付き!

金属の破断面の写真
真実を暴き出せ!
NIMS NOW最新号は“事故調査”

かつて社会問題となった「日航機墜落事故」や「もんじゅのナトリウム漏洩事故」。その解明の裏に、実はNIMSが誇る金属の専門家集団「事故調査チーム」が携わっています。金属の破断面に残るわずかな痕跡から、原因究明に挑む匠たちのストーリーです。

ワークショップの写真
電池材料解析ワークショップ 
参加者募集中!

NIMS蓄電池基盤プラットフォームによる毎年恒例のワークショップ。今回は全固体電池に焦点を当て、河村純一教授(東北大)の特別講演、特徴ある装置を利用したユーザーからの成果報告などを行います。申込締切は12月7日。ご参加をお待ちしております!

....and more!
薄膜製造プロセスの写真 機械学習により薄膜製造プロセスの高速化を実現

プレスリリース 10/21

マグネシウム金属電池の写真 末梢神経に直接巻いて神経の再生を促進する
新たなナノファイバーシートの治験を開始

プレスリリース 10/22

NIMS公式ウェブサイト
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
熱電発電モジュールの写真
Vol.1
熱電材料
~熱を電気に変える! エネルギー問題解決の有力候補~

私たちの生活のあらゆるところに存在している“熱”。太陽光、照明、自動車や工場の廃熱から人の体温まで——もし身の回りの熱を電気に変えることができたなら、エネルギーを無駄なく利用する未来社会へ向けた有力な一手となるはずだ。

熱電材料とはまさに、それらの熱を回収して直接電気に変える材料。温度差で発電できる仕組みから、来たるIoT社会に大量に必要となるセンサの独立電源として、活用が期待されている。しかし、現在実用化されているビスマスとテルルから成る熱電材料は、希少元素ゆえに高価で、毒性も含まれており、爆発的な普及は難しいのが現状だ。

ビスマステルルのモジュールの写真
世界で初めて熱電材料を実用化へ導いたビスマス・テルルのペルチェ素子。
FAST材のモジュールの写真
鉄・アルミニウム・シリコンによる熱電材料。低コストで無害、環境調和性に優れたセンサ用独立電源として世界から注目を集めている。

この問題を解決したのが2019年、NIMSが開発した「鉄(Fe)・アルミニウム(Al)・シリコン(Si)」の熱電材料(Thermoelectric Material)。頭文字から名付けられたこの「FAST材」は、容易に入手できる汎用元素のみで作られており、モジュール単価はなんと数百円、従来品に比べ約5分の1という飛躍的なコストダウンに成功した。毒性を含まないため安全性が高く、環境負荷も少ない。軽量ながら耐久性も併せ持ち、メンテナンスフリーで半永久的に使用可能だ。わずかな温度差があれば発電できるので、体温を利用した無線通信機、火災や地滑りを感知する防災用センサなど、多岐に渡る応用が期待できる。

熱電材料は今、FAST材をはじめ、ウェアラブル用途に有用な加工しやすい有機ハイブリッド材などの材料開発や、多様なアプリケーションを実現するためのモジュール設計など、バラエティに富んだ研究開発が進められている。

ありふれている熱がエネルギー問題解決の切り札となるか——熱電材料から目が離せない。

もっと知りたい!
アツい熱電材料の世界
高際研究員と熱電発電デバイスの写真
NIMS WEEK

~FAST材の開発者:高際良樹研究員が
NIMS WEEKに登場します!~

マルチ回転曲げ疲労試験機の写真2

今年のNIMS Award、テーマは『熱電材料』!
ビスマス・テルルを実用に導いたHiroshi Julian Goldsmid氏、環境に優しく高性能な熱電材料研究の先駆けとなった河本邦仁氏の受賞講演を開催!

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まてりある’s eye (NIMS公式YouTubeチャンネル)
「そこらの元素だけで 廃熱から電気を作り出す!」
BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「ことばにできない宇宙のふしぎ」
「ことばにできない宇宙のふしぎ」
エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ翻訳
創元社
見学担当・Mのイチオシ

科学を通して、忘れていた大切な感覚を味わう——そんな素敵なエッセイ本です。例えば、『電子は簡潔な方程式一つであらわすことができる美しいパターンとステップで「踊っている」』という一文。以前、高校生に蛍光体が光る仕組みを説明していたとき、「電子って、たった今(軌道を)出たり入ったりしているんですか?」と驚かれたことがあります。電球の中で電子は常にすごいスピードで回っていて、電子軌道を出たり入ったりしていると伝えると「すごい……」と言葉少なに蛍光体を見つめ、電子の踊りに耳を傾けていました。
この本では、こういった身の回りで起こっている現象や原理が、優しい語り口で綴られています。日々、目の前の情報を追うことに忙しくなってしまう私たちですが、本の中では桁違いに大きな感覚、反対にとてつもなく微小な感覚に触れることができます。秋の夜長にぜひ。

あらすじ

ベストセラー『翻訳できない世界のことば』の著者による大人向け科学絵本。星の共通点、惑星の動き、過ぎ去っていく時間など宇宙空間に溢れる不思議の数々を、想像力を掻き立てられる挿絵を交えて教えてくれる。

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