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寺田典樹主席研究員、間宮広明主席研究員、齋藤明子主席研究員らは、レアアース金属や液体ヘリウムを一切使用せずに極低温(約4K=マイナス269℃以下)を実現できる、銅・鉄・アルミニウムといったありふれた元素のみからなる新しい蓄冷材料を開発しました

2025.12.24
 寺田典樹主席研究員、間宮広明主席研究員、齋藤明子主席研究員らは、レアアース金属や液体ヘリウムを一切使用せずに極低温(約4K=マイナス269℃以下)を実現できる、銅・鉄・アルミニウムといったありふれた元素のみからなる新しい蓄冷材料を開発しました。三角格子が生み出す、スピン同士が互いの向きを同時に満たせない『フラストレーション』という一部の磁性体がもつ特殊な性質を利用することで、従来レアアースに依存していた極低温冷却に代わる新たな手法を示した成果です。

 今回開発した蓄冷材料は、豊富な資源を用いているため持続可能性が高く、環境負荷が少ないという特徴があります。そのため、今後需要の拡大が予想される医療用MRIや量子コンピューターの極低温冷却への応用が期待されます。

  • "Innovative cryogenic cooling material using spin frustration from abundant elements", N. Terada, H. Mamiya, A.T. Saito & S. Masuyama, Sci. Rep. 15, 44240 (2025).
  • 図: 1960年代のGM冷凍機では鉛(Pb)が蓄冷材として用いられていましたが、1990年代にはレアアース金属化合物HoCu2が導入され、冷却性能が大きく向上しました。今回開発したレアアースフリー蓄冷材CuFe0.98Al0.02O2(CFAO)は、これらに匹敵する冷却能力を持ちながら、豊富な元素のみで構成されるため、持続可能で環境負荷の少ない極低温冷却技術につながります。
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