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Research Highlights
[Vol. 87]
革新的な熱電材料の実現へ一歩前進
ナノアーキテクトニクス材料研究拠点(MANA)の研究チームが、Mg3(Sb, Bi)2合金の改良に成功し、熱エネルギーの効率利用に新たな道を拓きました。
熱を電気に変換する熱電(TE)材料は、世界的なエネルギー危機の解決に貢献しうる材料の一つとして大きく期待されています。これらの材料は、異なる結晶方向間に形成される粒界における電子やフォノンの散乱など、複数の要因に基づいて動作することが知られており、種々のドーピングを用いることで、熱から電気への変換効率を今まで以上に高めることができるのではないかと考えて研究を遂行しました。
数ある熱電材料の中でも特に注目されているのは、マグネシウム(Mg)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)を含むMg3(Sb, Bi)2合金です。遷移金属の導入によって熱電変換性能がいくらか向上する例がいくつかあり、遷移金属がこの合金に与える影響の解明や活用が求められていました。
MANA 熱エネルギー材料グループの森 孝雄 グループリーダーとワン ロンクァン NIMSジュニア研究員は、Mg3(Sb, Bi)2合金に遷移金属であるモリブデン(Mo)を添加することでその性能を向上させることに成功。モリブデンの導入が結晶粒子のサイズやバンド構造を調節し、電子の動きを促進する仕組みを明らかにしました。さらに、アンチモンとビスマスの比率を最適化し、結晶構造的な欠陥の導入、フォノン輸送の制限、フォノンの群速度の減少、原子の不規則性の増加を実現し、材料性能を特に際立って向上させました。これにより製作されたユニレグデバイスは既存のデバイスに比べ12%という非常に高い性能を達成した。
この研究成果は、産業活動、交通、日常生活における廃熱を活用する新たな手段を提供し、エネルギー問題、環境問題の解決に貢献すると期待されています。また、Mg3(Sb, Bi)2ベースの熱電材料は、稀少で有毒な元素を含むPbTe合金、GeTe合金等に代表される他の熱電材料と比較して、豊富で低コストの元素のみを使用しています。森グループリーダーは、「エネルギー消費の増大と環境問題への対応という観点から、廃熱の有効活用は非常に重要です。熱電デバイスは、これらの課題に対する有力な解決策となります」と述べています。
Reference
雑誌 | Advanced Energy Materials |
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題目 | Realizing High Thermoelectric Performance in N-Type Mg3(Sb, Bi)2-Based Materials via Synergetic Mo Addition and Sb–Bi Ratio Refining |
著者 | Longquan Wang, Naoki Sato, Ying Peng, Raju Chetty, Naoyuki Kawamoto, Duy Hieu Nguyen, Takao Mori |
所属 |
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DOI | 10.1002/aenm.202301667 |
Contact information
ナノアーキテクトニクス材料研究センター (MANA)
TEL: 029-860-4710
E-mail: mana-pr=ml.nims.go.jp([ = ] → [ @ ] )