プレスリリース
神経系の動作をマネする世界最高速度の電気二重層トランジスタ
~汎用性AI端末機器の高速化に期待~
国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS)
東京理科大学
東京理科大学
NIMSと東京理科大学からなる研究チームは、高イオン伝導性をもつセラミックス薄膜とダイヤモンドを用いて、世界最高速度で動作する電気二重層トランジスタを開発しました。

プレスリリース中の図 : (左) 開発した電気二重層トランジスタの模式図、 (右) ニューロモルフィック動作の高速化。

概要
NIMSと東京理科大学からなる研究チームは、高イオン伝導性をもつセラミックス薄膜とダイヤモンドを用いて、世界最高速度で動作する電気二重層トランジスタを開発しました。このトランジスタは、画像・人物・音声・匂いなどのデータに対する分類や将来予測を含むあらゆるパターン認識・判断に利用できるため、汎用性が高く、高速かつ低消費電力なAI機能搭載端末機器への応用が期待できます。
電気二重層トランジスタは、電解質/半導体界面の電気二重層の充放電で電気抵抗が変化することで動作します。人間の脳でみられるような神経の電気応答を模倣できることから (ニューロモルフィック動作) 、AI素子への応用が期待できますが、既存の同種トランジスタは、典型的な動作速度 (ON状態からOFF状態への遷移時間) が10ミリ秒程度~数100マイクロ秒と遅く、より高速な動作が望まれていました。
今回、研究チームは、パルスレーザーで精密に堆積させて作ったセラミックス (多孔質イットリア安定化ジルコニア膜) /ダイヤモンド界面での電気二重層効果を利用し、高速動作する電気二重層トランジスタを開発しました。成膜条件を精密に調整することでジルコニア膜中に多量に導入したナノ細孔内に水が吸着し、それに由来する水素イオン (伝導性が高い) が、電気二重層の充放電速度の高速化を可能にしました。パルス電圧印加により動作速度を調査したところ、既存の同種トランジスタに比べて8.5倍ほど速い値である世界最高速度を達成しました。また、このトランジスタを用いてAI素子に求められる自在な波長変換 (入力波形を任意の波形に変えるニューロモルフィック動作) を高精度に実施することもできました。
本研究によって、セラミックス薄膜を利用して電気二重層効果の充放電を高速化する新技術が得られました。電気二重層という厚さ数ナノメートル程の微小空間を利用し、高速なAI機能を実現できることは実用上の大きなメリットです。スマートウォッチや監視カメラ、音声センサーなどの各種センサーとの組合せにより、医療、防災、製造、警備などの幅広い産業で利用できる高速かつ低消費電力に動作するAI機能搭載機器への応用が期待されます。
本研究成果は、Materials Today Advances誌の2023年6月16日号に掲載されました。
電気二重層トランジスタは、電解質/半導体界面の電気二重層の充放電で電気抵抗が変化することで動作します。人間の脳でみられるような神経の電気応答を模倣できることから (ニューロモルフィック動作) 、AI素子への応用が期待できますが、既存の同種トランジスタは、典型的な動作速度 (ON状態からOFF状態への遷移時間) が10ミリ秒程度~数100マイクロ秒と遅く、より高速な動作が望まれていました。
今回、研究チームは、パルスレーザーで精密に堆積させて作ったセラミックス (多孔質イットリア安定化ジルコニア膜) /ダイヤモンド界面での電気二重層効果を利用し、高速動作する電気二重層トランジスタを開発しました。成膜条件を精密に調整することでジルコニア膜中に多量に導入したナノ細孔内に水が吸着し、それに由来する水素イオン (伝導性が高い) が、電気二重層の充放電速度の高速化を可能にしました。パルス電圧印加により動作速度を調査したところ、既存の同種トランジスタに比べて8.5倍ほど速い値である世界最高速度を達成しました。また、このトランジスタを用いてAI素子に求められる自在な波長変換 (入力波形を任意の波形に変えるニューロモルフィック動作) を高精度に実施することもできました。
本研究によって、セラミックス薄膜を利用して電気二重層効果の充放電を高速化する新技術が得られました。電気二重層という厚さ数ナノメートル程の微小空間を利用し、高速なAI機能を実現できることは実用上の大きなメリットです。スマートウォッチや監視カメラ、音声センサーなどの各種センサーとの組合せにより、医療、防災、製造、警備などの幅広い産業で利用できる高速かつ低消費電力に動作するAI機能搭載機器への応用が期待されます。
本研究成果は、Materials Today Advances誌の2023年6月16日号に掲載されました。
掲載論文
雑誌 | Advanced Functional Materials |
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題目 | Ultrafast-switching of an all-solid-state electric double layer transistor with a porous yttria-stabilized zirconia proton conductor and the application to neuromorphic computing |
著者 | Makoto Takayanagi, Daiki Nishioka, Takashi Tsuchiya, Masataka Imura, Yasuo Koide, Tohru Higuchi, and Kazuya Terabe |
掲載日時 | 2023年6月16日 |
DOI | 10.1016/j.mtadv.2023.100393 |
本件に関するお問い合わせ
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国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)
イオニクスデバイスグループ
主幹研究員
Tel:029-860-4563
E-Mail:TSUCHIYA.Takashi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
(報道・広報に関すること)
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経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Tel: 029-859-2026
Fax: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
東京理科大学 経営企画部 広報課
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3
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