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粘土鉱物による二酸化炭素の『呼吸現象』を発見

効率的な二酸化炭素の分離膜等への応用に期待

石原伸輔ICYS-MANA研究員と、井伊伸夫NIMS特別研究員らは、ハイドロタルサイトと呼ばれる粘土鉱物に含まれる炭酸イオンが、空気中の二酸化炭素と数日レベルの早い交換を繰り返しており、あたかも粘土鉱物が二酸化炭素を呼吸しているような新現象を発見しました。

石原伸輔ICYS-MANA研究員と、井伊伸夫NIMS特別研究員らは、ハイドロタルサイトと呼ばれる粘土鉱物に含まれる炭酸イオン(CO32−)が、空気中の二酸化炭素(CO2)と数日レベルの早い交換を>繰り返しており、あたかも粘土鉱物が二酸化炭素を呼吸しているような新現象を発見しました。

地球温暖化へ懸念などから、地球規模での炭素循環の理解に関心が集まっています。炭素(C)は、空気中や海中の二酸化炭素に含まれる他、植物・動物などの生命活動などを通じて、地球全体を循環しています。地球上で炭素を最も蓄えているのは炭酸塩とよばれる岩石群(約6京トン)であり、空気中(7200億トン)や海中(38兆トン)に含まれる量をはるかに凌ぎます。一方で、岩石である炭酸塩が風化して、地球規模での炭素循環に復帰するには100万年単位の時間がかかると従来は考えられていました。

今回我々は、13C同位体ラベルされた炭酸イオン(13CO32−)を含むハイドロタルサイトを用いることにより、ハイドロタルサイト中の炭酸イオンが空気中の二酸化炭素と数日から一週間程度で入れ替わっていることを初めて観測しました。従来の炭素循環に対する考え方を大きく変える物質群を発見したことになります。空気中の二酸化炭素に含まれる炭素は98.9%が12Cで構成されていることから、赤外分光法により13Cと区別が可能です。

ガス吸着実験の結果から、ハイドロタルサイトの層間には、二酸化炭素のみを約4cc/gまで選択的に吸着するサイトが存在することがわかりました。興味深いことに、二酸化炭素よりも分子径の小さい窒素ガスは、この層間に入ることができません。理論化学(第一原理計算や密度汎関数理論計算)や核磁気共鳴分光法を駆使することで、ハイドロタルサイトに関する二酸化炭素の吸着・交換・脱離のメカニズムについて詳細な知見を得ております。

ハイドロタルサイトに類似した粘土鉱物は天然にも存在することから、本研究成果は炭素循環に関連する地球温暖化や炭素年代測定法のより正確な理解につながると考えられます。また、ハイドロタルサイトの構造最適化により二酸化炭素の吸着量や交換速度を向上させることで、効率的な二酸化炭素の分離膜や二酸化炭素の還元触媒担体などの次世代材料が開発できると期待しています。

本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

ハイドロタルサイトに含まれる炭酸イオンと空気中の二酸化炭素の交換




本件に関するお問い合わせ

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ICYS-MANA研究員

石原 伸輔

Tel:029-851-3354

E-Mail:Ishihara.Shinsuke=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ソフト化学ユニット NIMS特別研究員 

井伊 伸夫

Tel:029-860-4357

E-Mail:Iyi.Nobuo=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)


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