チェンマイ


ふと懐かしいと思ってしまう此の街、チェンマイ。バンコクから夜行列車で一晩の旅だ。自然や街路のあちこちに、日本のそれもちょっと以前に見られた田舎の面影があるのだ。車は左側を走行し、ついでにほとんど日本製。トラックの荷台に乗りながらも、ふと日本にいるような気に幾度も成った。今日泊まるゲストハウスに向けて、運転手が大通りから細い砂利道のへとハンドルをきっていくと、砂埃が後ろへ流れていった。

チェンマイ最古の寺院、ワット・チェン・マン(1297年)。かつては宮殿であったそうだ。チェンマイには一風変わった塔が多いが、ここのゾウに囲まれたチェディもきらびやかで大きくて、大変立派なものである。本堂の前に帰ってくると、小さな鳥かごを持った女性がやってきた。この鳥を空に逃がしてやると良いことがあるそうな。私はトゥクトゥクの運転手に勧められるままに。。。

城壁内のほぼ中央に位置するのがワット・チェディ・ルアン。以前エメラルド仏陀が納められていた時期もあった。ここでなんといっても見逃せないのが、当時高さ90メートルもあったという仏塔チェディ・ルアンだ。今日ではその上部が崩れてはいるが、スケールの大きさからこの寺院の格式の高さが伺える。四方を囲んだ巨大なゾウや階段の脇士の蛇神ナークなどはとても迫力がある。 いろいろな形をした仏塔があるが、中でも一風変わった塔として一番に挙げられるのが、やはりワット・クータオのまるで巻き貝の様な形をした仏塔だろう。


ワット・チェット・ヨートには美しい浮き彫りがあって是非とも訪れたいところの一つである。城壁の外にあって少し不便なところにあるので、 トゥクトゥクの運転手と交渉するのにずいぶん骨が折れた。チェットというのは数字の7のことで、7つの塔の回りに施された浮き彫りの見事なこと、苦労して来たかいがあったものだ。

天へつながると思わせるような300段の階段をナークに守られながら上ってゆくと、ワット・プラタート・ドイ・ステープにたどり着ける。1000メートル余あるこのステープ山山頂からはチェンマイ市街を一望に見おろせる。 さあ、寺院の中に入って見よう。ここで待ち受けていたのは、タイのコインの絵柄にも成った高さ22メートルの黄金に輝くチェディ。南国タイの太陽光を反射して眩いばかりだ。


タイ北部には今でも多くの山岳少数民族が生活している。チェンマイはこの山岳民族を訪ねるトレッキングツアーの起点として有名である。私の訪ねた村は、細い山道をしばらく歩いて入った川沿いの少し開けたところにあった。つい少し前の日本の田舎で見られた様な木造の家が数軒建っていた。もちろん電気もガスもなく、水道はそこを流れる川である。しかし、東京の水道より遥かにうまいに違いない。英語はもちろんタイ語もほとんど通じないが、身ぶり手振りで話していくうち彼らの見せる笑顔の実に素朴で美しいこと、特に子供たちの目が純粋だった。女の子はウドゥミャクというお祭りの時にかぶる独特の帽子をかぶっている。顔立ちが日本人にそっくりなので、ファミコンに夢中になっている日本の子供たちを思い起こすと、いったいなにが幸せなのかと考え込んでしまった。
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