NIMS/電子・光機能材料研究センター

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資源循環材料グループ

【スタッフ】

田村 堅志; 末原 茂; 金 済徳; 佐久間 博 (スタッフの紹介

【目的】

地球環境問題の解決は喫緊の課題となっています。資源循環材料グループでは,資源回収・循環システムに貢献する基盤技術から応用化技術の開発に取り組んでいます。具体的には、廃棄物を再生可能な有価物に変換する取り組みや、天然資源を高付加価値化する技術の研究に重点を置いています。また、機能性だけでなく、天然資源を最大限に活用し、環境にも配慮した高性能複合材料の開発にも積極的に取り組んでいます。

【アプローチ】

  • 再生材料の開発: バイオマスの普及を促進するため、物性バランスの課題を克服する複合化技術の開発に取り組み,天然鉱物や排気CO2から合成した無機物質を強化フィラーとして活用する研究を行っています(図1a)。
  • 循環型機能性材料の開発:環境負荷の低い高スルホン化ポリマーと高保水粒子を使用した高速イオン伝導体の開発を進め。水素の製造/利用デバイスへの応用を目指します(図1b)。
  • 理論アプローチ:先進的な理論解析と実験実証を組み合わせて、物質の複雑な性質を徹底的に理解します(図2)。


図1 資源活用型機能性複合材料の開発:(a) CO2から得られる高機能フィラーを充填した高性能バイオ高分子複合材料開発, (b) 高スルホン化ポリマーと高保水粒子による高速イオン伝導体


図2 理論解析と実証実験による汚染土壌減容化技術の開発。(STEP-1) 汚染土壌から放射性セシウムの分離処理(溶融塩/酸処理法)。(STEP-2) 土壌再生と放射性セシウムのポルサイト封入—減容化

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田村 堅志(たむら けんじ):グループリーダー

メール:TAMURA.Kenji@nims.go.jp

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主な取り組み:資源循環型高機能複合材料の開発

概要

  • “ありふれた素材”(天然鉱物やバイオマスなど)を活用してその隠れた特性を有効利用した機能性材料の開発
  • 石化系プラスチック代替となるリグニン配合熱可塑性プラスチック複合材料を溶融混練法で製造
  • 粘土改質、および複合化技術開発による機能性粘土バイオポリマーナノコンポジット:強度―靭性向上とリサイクル性の付与
  • 多様な強化フィラーの設計技術構築:鉱物合成、表面処理、高次構造解析による高機能化
  • 繊維表面への層状複水酸化物(LDH)担持合成や薔薇状LDH粒子合成による資源回収用吸着フィルター、カラム充填剤の開発

特徴

  • バイオマスの欠点を克服するため、フィラー強化系複合材料の製造技術に取り組む
  • 石化系プラスチックに代替する熱可塑性リグニン系プラスチック材料を開発
  • バイオポリマーの欠点である力学特性をナノコンポジット技術で「剛性」、「強度」および「靭性」の向上に成功
  • ナノチューブ状粘土鉱物の合成、天然雲母の膨潤性付与、廃棄資源からの鉱物合成など“ありふれた素材”を活用する技術開発
  • 環境浄化、資源回収のための吸着材料を開発、プラスチックにバイオマス度向上とリサイクル性を付与

主な研究: 


  • (左上)PP/リグニン複合系の機械的性質を向上させるため、特にフィラーを重視したアプローチで、界面強化による相乗効果を発揮させる
  • (左上)このコンポジットは、リグニンの抗酸化効果によって耐光性や熱老化性に優れ、材料の寿命延長やリサイクル性の向上が期待できる
  • (左下)目的志向で様々な無機化合物の合成・改質、有機物および高分子の合成・改質、それらの応用技術の開発に取り組んでいる
  • (右上)上に示すように粘土-バイオポリマーナノコンポジットにおいて、剛性、強度及び靭性すべてを改善している
  • (右下)粘土/繊維複合フィルターや粘土粒子カラムなどの使いやすい環境浄化材料など環境浄化と資源回収に資する材料開発

まとめ:粘土鉱物など鉱物資源を高性能プラスチック強化フィラーや高選択性吸着剤など機能性材料に変身可能です。さらに強化フィラー/バイオマス素材界面とその高次構造を制御した複合材料設計により石化系プラスチック代替の材料開発を実現させます。成形加工性、リサイクル性などの製品価値を高めることで資源循環型の環境調和材料への転換が図れます。

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末原 茂(すえはら しげる)

メール:SUEHARA.Shigeru@nims.go.jp

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主な取り組み:循環機能材料の理論計算

概要:循環型社会の実現に向けた取り組みの一環として、天然鉱物をはじめとする希少ではないありふれた元素(ユビキタス元素)で構成された物質の特性に関する理論計算研究を行います。具体的には半経験的密度汎函数計算ミュレーションを用いて循環材料の特性の再現を目指し、実験結果との比較を通してその起源を探ります。密度汎函数法は原子の配置に基づいて物質の性質を計算する手法のひとつで、本理論研究は循環型社会における天然鉱物やユビキタス元素の適切な利用や再利用に向けた基盤技術の構築、さらには環境に配慮した資源管理や廃棄物削減などの産業活動の改善につながると考えています。

特徴

  • 大型計算機(NIMSスーパーコンピュータ)やGPUを利用した高速並列計算
  • 非ボルツマン型分子動力学法やエラスティックバンド法などを用いた原子・イオンの拡散や化学反応の追跡
  • 各種実験スペクトルを理論的に再現することによる実験結果の検証・考察

主な研究: 天然土壌に含まれる粘土鉱物の層間イオンの交換反応を理論計算を用いて評価し、2011年3月11日に発生した地震・津波による福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性セシウムが他の典型イオンに比べて強く粘土内に吸着していることを明らかにしました(a)。 また、代表的なユビキタス元素である珪素とホウ素からなる新規層状化合物(シリボロフェン)の構造を、その物質固有のフォノン振動を理論的に再現することで明らかにすることができました。同時に特異な電子構造(ディラックコーン)も発見することができました。これはグラフェンやボラフェン(ボロフェン)に端を発するユビキタス元素による新材料の発展型の1つとなり得る成果です(b)。他、新型イオン電池に応用可能なナノシート膜のユビキタスイオンの透過(拡散)能力を調べる研究なども行っています(c)。

まとめ:半経験的密度汎函数計算シミュレーションを軸に、原子数個から数百個程度のモデルを用いて物質の理論研究を行っています。本研究手法のみでは、循環技術の社会実装における最初の難所「魔の川」に辿り着くことすら不可能に近いと思われますが、基礎・応用・実証実験等の各ステージにおいて、理論的なモデルが構築することができれば、実験結果の解析に大きな役割を果たすことができるはずです。

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金 済徳(きむ じぇどく)

メール:KIM.Jedeok@nims.go.jp

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主な取り組み:環境配慮型代替ポリマー電解質材料開発

概要:気候変動は世界規模で2050年カーボンニュートラル実現に向けた安定的なエネルギー供給による社会システムの構築を求めている。CO2を排出しない太陽光、風力、バイオマス等の再生エネルギーを利活用する多様な技術開発が行われる中、水素は化石燃料を代替する新エネルギーパラダイムを導くと予想される。水電解や燃料電池等に用いられているフッ素系ポリマー伝導体の代替材料は必須であり、非フッ素系伝導体材料として炭化水素系PPSU電解質の高機能化について研究を行っている。

特徴

  • スルホン化濃度の高度化
  • スルホン架橋によるポリマー化
  • ナノ複合化による伝導パスの高度化
  • ナノ複合化による化学的安定性の高度化

主な研究: 炭化水素系ポリマーであるエンジニアリングプラスチックは高い化学的・熱的安定性により多様な分野で利用されている。その中でポリフェニルスルホン(PPSU: polyphenylsulfone)を用いた機能性電解質材料の開発を行っている。PPSUは高イオン伝導性を付与できるスルホン基導入サイトが多く、高スルホン基導入による高プロトン伝導体の創生が期待できる。また、イモゴライトやナノシリカやカーボンナノドットのようなナノ粒子の利用は保湿性が高く、ポリマー電解質に導入された場合、高温低加湿環境下でも電解質の高伝導度を維持させることができる。更に、炭化水素系電解質の化学的安定性を飛躍的に向上させると期待している。合成プロセスにより電解質材料を作製し、製膜プロセス工程により膜化し、伝導度などの物性評価を行い、デバイスとして燃料電池や水電解等のシステム評価により電解質材料特性の高度化を図る。

まとめ:カーボンニュートラル実現には多様な分野でのブレイクスルー技術開発が求められている。その中で、現在、水電解や燃料電池等で使われている、フッ素系電解質材料の代替材料として炭化水素系電解質の開発は将来の水素社会を担う革新的材料開発に大きく貢献できると期待される。

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佐久間 博(さくま ひろし)

メール:SAKUMA.Hiroshi@nims.go.jp

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主な取り組み:天然材料を活用した環境調和材料開発と物性発現機構の解明

概要:環境問題の喫緊課題に対応するため二酸化炭素の有効活用を視野に入れ、多様な形態とサイズの炭酸カルシウム結晶を合成し、バイオマス材料の性能向上に貢献する。また、天然に広く存在し環境負荷の低い材料である粘土鉱物から、有害物質の吸着材を開発する。これにより、環境負荷を軽減し、持続可能な社会への貢献を目指す。さらに、これらの材料の開発において、科学的な分析を通じて物性発現機構を解明し、材料の信頼性向上、品質管理の強化、安全性の確保、新たな材料のイノベーションを実現する。このことは、材料の競争力を向上させ、市場での評価を高めることにつながる。

特徴

  • 結晶や表面構造の理論に基づく材料設計
  • 第一原理から大規模分子動力学計算による物性解析
  • 固液界面の構造を0.1 nm以下の分解能で解明

主な研究1: 環境負荷の小さい材料設計・合成:持続可能な未来を実現

  • 炭酸カルシウムの合成:バイオマス材料の強度を向上させる強化材として多様な形態・サイズの炭酸カルシウム結晶を合成する。合成には大気中の二酸化炭素を活用し、カーボンニュートラルに貢献する材料を目指す。
  • 粘土鉱物の合成:地球表層だけでなく火星表面にも大量に存在する多様な粘土鉱物を活用した環境材料の開発を行う。粘土鉱物は層状のナノ結晶であり、様々な物質を大量に吸着することができる。使いやすく、環境負荷の小さい吸着剤等の開発を目指す。

主な研究2: 材料の分析とシミュレーション:材料の信頼性向上・品質管理の強化・安全性の確保・さらなるイノベーションの促進につなげる。
我々の技術は表面・界面のX線散乱構造解析・分子シミュレーション等であり、材料の物性発現メカニズムの科学的な解明を可能とする。これまでに有害物質吸着剤の構造モデル化による特異吸着サイト、炭酸カルシウム表面への有機分子吸着・脱離への添加剤の影響、固体潤滑剤の潤滑メカニズムの解明などの実績がある。

まとめ

  • 多様な外形を持つ炭酸カルシウム結晶を合成し、この結晶を補強材とする高強度のバイオマスプラスチックを開発する。
  • 天然に広く存在する粘土鉱物は層状ナノ結晶であり様々な分子を吸着する。この性質を制御し、環境負荷の低い材料として活用する。
  • 結晶表面や界面の性質を、表面に敏感な分析技術や分子シミュレーションから解明し、材料の信頼性向上や新しい材料開発に活用する。

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