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2024 Topic4

レーザー積層造形により耐熱鋼のクリープ寿命を10倍以上に延長

畠山 友孝

構造材料研究センター 材料評価分野
クリープ特性グループ 主任研究員
畠山 友孝 Tomotaka Hatakeyama

レーザー積層造形(金属3Dプリンター)で作製した耐熱鋼(改良9Cr-1Mo鋼)のクリープ試験を最長で1万時間実施し、レーザー積層造形法を用いることで、従来製法材に比べてクリープ寿命を10倍以上に延ばすことに成功した。従来製法材がマルテンサイト組織を有するのに対し、レーザー積層造形材は、超急冷により凍結された高温相のδフェライトを母相とした特異なミクロ組織が形成しており、クリープ中のミクロ組織変化が抑制されたことでクリープ強度が向上したと考えられた。

成果図

畠山さんへQ&A

クリープとは?

高温で保持された材料に力を加えたときに、ゆっくりと変形していく現象です。火力発電プラントなど、材料が高温で長時間使用される場合には、クリープによる破壊に注意が必要です。
クリープによる変形を調べるために、一定の温度・荷重(応力)で材料を引っ張り続ける試験を「クリープ試験」、クリープ試験によってある温度・応力で破壊するまでの時間を「クリープ寿命」と呼びます。

レーザー積層造形の超急冷ってどれくらい?

レーザーが照射されて溶けた金属粉末は、1秒間に約100万°Cという非常に大きな冷却速度で一気に固まります。
この超急冷を上手く活用することによって従来の製造プロセスでは得ることが難しかったミクロ組織(δフェライト相)が得られたことが本成果のポイントです。

この成果が実用化へ繋がる可能性は?

今回3Dプリンターで作製したのは、火力発電プラントの配管として広く使用されている材料ですが、核融合炉の構造部材への適用も検討されています。3Dプリンターで低コストで大型部品が作れるようになれば、実用化される日が来るかもしれません。そのために、より長時間のクリープデータの取得や、クリープ寿命の更なる向上に向けて研究を継続していきます。

畠山さんが研究において大事にしていることは?

材料の特性を支配するミクロ組織はクリープ中に刻一刻と変化しますが、この変化を「材料の気持ち」になって理解することです。材料にとって”居心地が良い”方向にミクロ組織は変化するからです。
クリープ中のミクロ組織変化が大きいとクリープ寿命は短くなります。今回のクリープ寿命向上は、耐熱鋼にとって、従来のマルテンサイトよりもδフェライトの方が居心地が良く、クリープ中のミクロ組織変化が抑制されたことが理由と考えています。