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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.117
 
2021.9.8
粘土フィルターの写真
今月の一枚
粘土の吸着能力

9月1日は粘土の日。こねたり丸めたり、工作のイメージが強い粘土だが、実は優れた吸着能力を持つ。写真のように、色水を粘土フィルターに通すと、その色素成分だけが取り除かれ、透明な水を得ることができる。その特長を食品、衣料、工業材料など様々な分野に活かすため、NIMSでは粘土の構造解析や改質、人工合成などの研究開発を進めている。

HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
スマートポリマーの写真
COVID-19の抗原検出をより速く正確に!
感度の高い新手法を開発
プレスリリース 2021/8/5

結果の判定まで時間や手間を要し、偽陰性も出やすいPCR検査。そこでNIMSはスマートポリマーという特殊な高分子を用いて、低濃度の抗原でも目視で迅速に検査結果を判別できる技術を開発しました。簡易診断の感度を劇的に向上させる新手法とは!?

NIMS Awardのロゴ
NIMS Award2021受賞者が決定!
今年のテーマは“量子マテリアル”

物質・材料に関わる科学技術において優れた業績を残した研究者に贈る国際賞「NIMS Award」。今年は量子マテリアルの分野で革新的な成果を挙げた3名に決定しました。
授賞式及び受賞講演は11/17のNIMS WEEK2021(オンライン)にてライブ配信予定。お見逃しなく!

....and more!
エポキシ樹脂のリサイクルシステムの図 ペプチド水溶液に浸すだけで
熱硬化性プラスチックをリサイクル

プレスリリース 2021/7/29

周期表における水素化物の生成マップの図 水素は軟らかい金属を好む?

プレスリリース 2021/8/30

NIMS公式ウェブサイト
TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
2元表面アーキテクトニクスで電子回路が描かれた基板の写真
Vol.2
2元表面アーキテクトニクス
~印刷で超微細な電子回路が作れる! プリンテッドエレクトロニクスの新技術~

幾何学なパターンが美しいプラスチック板——プリンテッドエレクトロニクスという手法で作られた電子回路だ。もっとも細い線幅はなんと0.6マイクロメートル。この超微細な加工は「2元表面アーキテクトニクス」という新技術から生まれた。

金属や半導体のインクを基板に印刷して電子回路を形成するプリンテッドエレクトロニクス。ガラス板や金属に加え、プラスチックなど柔らかい基板にも配線を描けることから、フレキシブルデバイスに必須の技術として広く研究開発が行われている。

ただ、既存の技術は印刷の精度が十分ではない上、特殊な環境が必要でコストがかさむ。より微細な配線をもっと簡単に、低コストでできないか——そこで三成研究員が考えたのは、基板表面に「極性」を持つ領域と「無極性」の領域を作り出す「2元表面アーキテクトニクス※注」の手法だ。

金属ナノ粒子配列システムの写真
微細印刷装置「金属ナノ粒子配列システム」。黄色の部分に基板、黒い枠にパターンをセットし、金属ナノインクを吸着させる。

基板の配線を描く部分に紫外線を当て、溶液で30秒処理する。すると、照射された部分のみが極性を持ち、インクが吸着するようになる。あとは上からインクを塗れば回路が描けるという仕組みだ。これにより、それまで100マイクロメートルが限界だった線幅を、世界最細の0.6マイクロメートルまで微細化することに成功。基板にインクを直接塗布する従来の方法より、高精度かつ大気下において簡易なプロセスで印刷できるようになった。

銅インクの写真

プリンテッドエレクトロニクスに使用する安価な銅の金属インク。顧客ニーズに合わせて銀インクの開発も行っている。

さらに、プリンテッドエレクトロニクスには銀インクが多く使われるが、低コストな銅インクも開発中だ。銅は酸化に弱いが、大気下でも安定して使えるよう、配合に工夫を施した。これにより、大面積の基板にも、安価で電子回路の作製が可能となった。

現在、三成はNIMS認定ベンチャー「株式会社プリウェイズ」を立ち上げ、企業がこれらの技術を自社で簡単に行える専用装置や材料の販売を通して、独自の微細印刷技術の実装を目指している。「開発した成果を広く使っていただくのが目標です」と三成。プリンテッドエレクトロニクスの一層の普及を目指し、三成の挑戦は続く。

三成研究員の顔写真
「企業の生の声を取り入れながら、自身の技術を磨き、社会に貢献していきたい」と三成剛生研究員。

(※注)基板表面の電荷が正(プラス)または負(マイナス)に偏っている「極性」領域と、正負のない「無極性」領域に分ける技術。

BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「このスプーンは、結構うるさい」
「このスプーンは、結構うるさい」
佐藤 雅彦+ユーフラテス/NIMS 著  
小学館
永遠のしんまい広報室長・Kのイチオシ!

構想4年、NIMS広報室が満を持して発売した一冊です。NIMSの公式YouTubeで配信中の動画『未来の科学者たちへ』にご協力いただいている佐藤雅彦先生が、「これを本にしたらいいですね」とおっしゃってくれたのがきっかけで、制作に火が付きました。ただ、その後の作業の大変さを考えると、この発言を佐藤先生はちょっぴり後悔したかも知れませんが(笑)。
書籍化にあたって大切にしたのは、地味な「材料」という存在をどう魅力的に伝えるかということ。そのために、材料そのものの特性のスゴさ、材料として確立するまでの多難な歴史、目に見えない科学現象の可視化、この3点が分かるようにこだわりました。例えば、タイトルの“スプーンがうるさい”は熱膨張という現象ですが、熱膨張が発見された奇遇な歴史や、スプーンを使って熱膨張を露呈させる手法は誰もが驚くはず。まずはDVDを見て、単純に「面白いな」「不思議だな」と感じてもらうと、本で解説している材料や現象の奥深さが読みやすくなると思います。
思いが通じたのか、発売後はアマゾンの知育・教育部門のランキングで1位になったり、科学番組の司会を務める立川志の輔さんからお褒めの言葉をいただいたり、嬉しい反響がたくさん! 最初から最後まで宣伝? ……失礼いたしました(笑)。

あらすじ

ピタゴラスイッチを手掛ける佐藤雅彦+ユーフラテスとNIMSがタッグを組んだ科学映像プロジェクト『未来の科学者たちへ』。その動画と特典映像を収録したDVD、解説本がセットになったDVDブック。身の回りにある材料の魅力や奥深さに気づかされるとともに、科学を伝える手法もわかる科学好きにはたまらない一冊。

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