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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.115
 
2021.7.14
ウニ殻の写真
今月の一枚
ウニ殻を使った人工骨

夏にかけて旬を迎えるウニ。その殻の量は年間8,500トンにも上り、廃棄処理が問題となっている。NIMSではウニ殻が持つ多孔質な構造に着目、ヒトの骨の再生を促進する人工骨の開発を進めている。ゴミから命を救う材料へ——科学の視点を加えると、新しい未来が開かれる。

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テントウムシの写真
40年の議論にピリオド! 
テントウムシの脚裏の接着原理を解明
プレスリリース 2021/6/3

テントウムシの脚裏は、剛毛なのにガラスのような平滑面をすべらずに歩くことができます。それはなぜなのか——40年もの間、ベールに包まれていたこの謎をついに解明! 脚裏の剛毛とガラスの間の「分泌液の厚さ」とテントウムシが歩く時の「牽引力」を測定することで、明らかになった接着の原理とは?

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粘土決定の流れの写真 トロトロも、そよそよも、トロそよも数値で見分ける

プレスリリース 2021/6/14

嗅覚センサーの写真 嗅覚センサーと機械学習で
ニオイのデジタル化と見える化に挑む

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医薬品関連MOPの写真 医薬品関連マテリアルズオープンプラットフォーム発足

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STMの全体写真
Vol.7
STM
~原子ひとつひとつを観察・操作できる! 極小の世界を操る顕微鏡~

開始から約2時間半、いよいよ映し出された妖怪に「かわいい」「すごい」と称賛の声が画面上に次々と沸き起こった。体長約40nm(ナノメートル)、原子で描かれた世界最小の妖怪の誕生だ。

今年のウェブde NIMS一般公開で開催した『極限アトムアートの世界』。銀の基板上に鉄の原子をひとつひとつ並べ、疫病退散で名高い「アマビエ」を表現した。

その“お絵描き”に使用したのがSTM(走査型トンネル顕微鏡)だ。STMは物質表面の原子や電子状態を観察する顕微鏡。試料表面に電圧をかけながら、鋭くとがった金属針を近づけていき、針と表面の距離が1nm以下になると、両者の間で電子が飛び移って電流が流れる(トンネル電流)。

超高真空チャンバーの写真

ステンレス製の超高真空チャンバー。この小窓から試料や針の位置を確認できる。

このトンネル電流が一定に保たれるように、距離を制御しながら針で表面をなぞることで、原子を画像化できる。また、針と表面の距離を適切に調節すると、原子や分子を捉えて動かすことも可能だ。今回のアトムアートは、針を原子に近づけてひとつずつ誘導し、基板の上にドット状に置いて絵を描いた。

自作STMの写真
自作STMの例。先に針を顕微鏡に導入し、その後に試料基板を固定する。

ここまで緻密な操作ができるのは、既存のSTMに様々な工夫を加えたからに他ならない。試料を絶対零度近くまで冷やすための特殊な冷凍装置を使用し、熱の侵入を防ぐためケーブルの材質にもこだわった。また、顕微鏡の剛性を高め振動耐性を強化し、高周波を遮るフィルターを全ての信号線に設置するなど、細部まで改良を繰り返した。

その結果、極限までノイズが抑えられ、精密な解析とクリアな画像撮影が実現したのだ。強力な超伝導磁石を搭載しているので、磁気特性が重要なスピントロニクス材料や超伝導材料の研究にも対応する。
現在は、量子マテリアル候補やトポロジカル絶縁体などのより詳細な電子状態を観測したり、人工的に原子を配列させて解析を行うなど、STMが新物質の探索に担う役割は大きい。極限まで研ぎ澄まされたSTMが魅せてくれる次なる世界に、期待が高まる。

原子で描いたアマビエの写真

150個の原子で描いた体長40nmのアマビエ。玉のように見えているのが一個の鉄原子。様々なカラーバリエーションがある。下記URLまたはNIMS公式ツイッターからダウンロード可能。

BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「身近な科学 信じられない本当の話」
「身近な科学 信じられない本当の話」
涌井貞美 著  ケン・サイトー 絵
KADOKAWA
ウェブ担当・Nのイチオシ!

図書館で見つけて、最初は何気なく手に取った本でした。表紙の雰囲気から最初は「子供向けのやさしい科学本かな?」なんて思いつつ読んでみると、大人でも知っていそうで知らない、現代科学にまつわる不思議なことや意外なこと、日常で何気なく使われている技術の仕組み、誰しも一度は気になったことのある現象まで、身近な科学が分かり易く解説されていて、 「なるほど…」「そうだったの!?」とのめりこんで読んでしまいました。
疑問と解説が100個もあるので、隙間時間に少しずつ読んでみるのもよいですし、お子さんと一緒に読めば、身近なことから科学への興味を持ってもらえるきっかけにもなるかも。世の中にあるたくさんの"気になる"や"驚き"を知ることができる、おすすめの一冊です。

あらすじ

「二度あることは三度ある」は証明できる!? 動植物、天体から物理、統計学まで意外すぎるサイエンスを100話たっぷり掲載。科学の基本や現代科学を読み解くのに必要な知識について、身近な例を挙げながらやさしく解説。

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