蓄電池・電極触媒をミクロスケールで見た場合、共に表面・界面反応が重要な役割を果たし、基本的に電気化学反応によってエネルギーの授受が行われる。いずれの場合も反応サイトや表面・界面構造の変化が反応性（機能）や劣化（寿命）に大きく関わっている。その制御のために界面被膜・コート層導入が行われているがそのメカニズムにはまだ不明な点が多い。また反応物・生成物（イオンや分子）が反応場である表面・界面まで・からどのように拡散するかといった物質輸送の問題も存在する。そのため、速度論的アプローチと熱平衡アプローチの両方面から研究開発を進めていく。

館山 佳尚：電池・触媒材料代表（物質・材料研究機構）

笠松 秀輔（山形大学）

小林 正人（北海道大学）

磁性材料には、磁化、キュリー温度、磁気異方性、スピン偏極率、輸送係数等の様々な物理量を目的変数とした材料設計が求められる。また、磁性材料にはレアアースやコバルト等の希少金属が用いられるため、資源リスクを考慮する必要がある。本サブ課題では、AkaiKKRコードを用いたハイスループット第一原理計算を実行し、データ科学も活用して上記の問題に取り組む。

三宅 隆：磁性材料代表（産業技術総合研究所）

新屋 ひかり（東京大学）

高分子材料の劣化は、加水分解などの分解反応が起こりうる官能基の周辺または界面への水のような不純物の侵入や外部からの強い剪断応力の印加によって引き起こされる。そのため、高分子材料の長寿命化には、劣化要因となる不純物の侵入の阻害や金属などの異種材料との接触界面における破壊の抑制が必要となる。現実の材料開発は化学合成に基づいており、また、実用に供される高分子材料はしばしばアモルファスの準安定状態にある。そこで、化学的手法と相性の良い全原子モデルを用いて準安定状態をモデリングするとともに異種分子の侵入や界面の破壊を解析し、劣化をもたらす分子間相互作用を同定することにより、高分子材料の長寿命化の課題に取り組む。

松林 伸幸：高分子材料代表（大阪大学）

藤本 和士（関西大学）

高性能なジェットエンジンや高効率な発電所などの過酷な環境下においても安全性を担保できる高機能な構造材料が強く求められている。特に、耐腐食性や疲労限度は構造材料の信頼性や寿命に強く関わる重要な要素であり、性能の向上が求められている。また、構造材料の破壊・腐食は、応力負荷、環境因子、化学反応などが複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象であり、ミクロスケールの化学反応からメソスケールの材料組織構造が関与するマルチスケール現象である。この破壊・腐食について原子スケールのメカニズムの解明に取り組む。

久保 百司：構造材料代表（東北大学金属材料研究所）

本研究課題では、高分子、溶液、アモルファス、多結晶といった単結晶以外の材料状態に対する計算ビッグデータ創出とデータ科学手法の適用による高機能・長寿命材料の提案や記述子抽出に取り組むが、これらの非結晶系では特徴量の定義がまだ自明ではない。そこで、大規模MD計算やハイスループット計算と機械学習とを橋渡しするトポロジカルデータ解析（トポロジカルな構造記述子を設計）に取り組む。これを用いることで、熱平衡状態周辺での準安定状態の分布の定量化や、劣化の進行・破壊の前兆に対応する構造変化の抽出などを行う。

赤木 和人（東北大学材料科学高等研究所）