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超伝導にとって「3」は特別の意味を持っていた

- 3つ以上の成分からなる多成分超伝導で起きる新規物性現象の解明 -

2012.05.22
(2012.05.25 更新)

林 士増 ( MANA、NIMS )
古月 暁 ( MANA、NIMS )

ナノ物性理論ユニットの古月 暁 主任研究者らのグループは、多成分超伝導で起きる新規現象を解明した。多成分超伝導とは、MgB2や鉄系超伝導体のように、化合物の中で異なる電子軌道にある電子が同時に超伝導状態になる現象であり、室温超伝導を実現させるカギと考えられている。電子間のクーロン斥力等に起因する成分間競合により、超伝導位相が互いにずれた位相フラストレーション状態が生じる。この結果、時間反転対称性の破れ、分数ジョセフソン効果や位相振動のLeggettモードのソフト化等、普通の超伝導では見られない現象が現れる。このような多彩な物理特性が見られるのは3成分以上を持つ超伝導体に限られ、老子の言葉「道は一を生み、一は二を生み、二は三を生み、三は万物を生む」かのようである。今後、高精度SQUIDや量子ビット等の超伝導量子デバイスへの応用が期待される。

図1 3成分の位相が互いにずれた位相フラストレーション超伝導状態。この時間反転対称性が破れた状態には、時計周りと反時計周りの双子があり、量子ビットへの応用が可能。


図2 超伝導強度の成分比による相図。どの二成分の強度の和も残りの成分の強度より大きければ(三角形形成の条件)、三つの超伝導成分が拮抗し、位相フラストレーション状態になる。それ以外の領域では、一つの超伝導成分が支配的になり、フラストレーションのない状態になる。相境界で相対位相の振動に対応するLeggettモードの質量がゼロになる。