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コアシェルナノワイヤ構造を利用した高速トランジスタチャネルを開発

~従来より高速で高集積が可能な立体構造トランジスタの実現に向け大きく前進~

国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の深田直樹,グループリーダーを中心とする研究グループとジョージア工科大のグループは、高速トランジスタチャネル材料として利用可能な、中心(コア)がゲルマニウム、外側(シェル)がシリコンという二重層のコアシェルナノワイヤを開発しました。さらに、不純物がドーピングされたシリコン層とキャリアが輸送されるゲルマニウム層が混ざり合っておらず、ゲルマニウム層でキャリアが発生していることを実証しました。この研究成果は、ナノワイヤの欠点だった不純物散乱の抑制を可能にし、高速な次世代トランジスタの実現に向けて大きな前進となります。

現在広く普及している、平面型の金属・酸化膜・半導体電界効果型トランジスタ(MOSFET)の開発について、従来のペースを維持した微細化は限界に達していると指摘されています。そこで、新たな高集積化の方法として、平面型ではなく立体構造の縦型トランジスタが提案されています(図1)。立体化において最も重要なチャネル部分には半導体ナノワイヤの利用が考えられていますが、ナノワイヤの直径が20nm以下になると、キャリア生成のためにドーピングされた不純物によってキャリアが散乱してしまい、キャリアの移動度が低下してしまう問題がありました。

本研究グループは、シリコンとゲルマニウムのコアシェル構造を持つナノワイヤを開発することで、不純物のドーピング領域とキャリアの輸送領域を分離し、不純物散乱を抑制できる新しい高移動度チャネルの形成とその実証に成功しました。キャリアはナノワイヤ表面のシリコン層で生成され、コア領域のゲルマニウム層に伝播して移動します。ゲルマニウムはシリコンよりもキャリアの移動度が速い為、高移動度化が可能となり、キャリアはコア領域を移動するため、ナノワイヤ構造特有の表面散乱の影響も抑制できる構造となっています。さらに、ドーピングの量によってキャリア濃度を制御できることも実証しました。

今回開発したコアシェル構造は、シリコンとゲルマニウムという単純な材料のみを利用しているため、低価格での製作が可能です。今後は、コアシェル構造を利用したデバイスを実際に作製し、デバイス特性の性能評価から将来の高移動度デバイスとしての可能性を実証する予定です。

本研究は 、主に科学研究費補助金基盤Aにおける研究課題「コアシェルヘテロ接合ナノワイヤへの位置制御ドーピングによるキャリア輸送制御」(研究代表者:深田 直樹)とNIMS第三期中期計画研究プロジェクト「ケミカル・ナノテクノロジーによる新材料・新機能の創出」の一環として行われました。本研究成果は、ACS NANO誌オンライン版に2015年11月11日(現地時間)に掲載されました。

縦型トランジスタの模式図と、コアシェルナノワイヤ部分のモデル図



CVD法で形成したGe/Siコアシェルナノワイヤにおいて、エネルギー分散型X線分光(EDX)法により観察された像.(赤い領域:Si、青い領域:Ge)




本件に関するお問い合わせ

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

無機ナノ構造ユニット 半導体ナノ構造物質グループ グループリーダー

深田 直樹

Tel:029-860-4769

E-Mail:FUKATA.Naoki=nims.go.jp
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