nims mana images フロンティア分子グループ(FMG)

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Research

フロンティア分子Gでは、セキュリティ、センサならびに生体応用を具体的なターゲットとする「先端分子機能」の創出可能な分子群を有機合成します。セキュリティ応用には常温液状発光π共役分子、センサ応用には分子認識ホスト分子、ならびに生体応用には金属錯体アレイをそれぞれ合目的に合成し、自己組織化や無機ナノ材料との複合化により、特異な発光機能、数ppm以下の有毒物質検出、および生体分子との相互作用を詳細に検討することで、材料機能の最高水準化ならびにオリジナリティーにあふれる分子材料の創成を目指します。

常温液状機能性液体に関する研究

電力消費全体の約20%を占める照明装置については、温室効果ガス排出量低減のため革新的な材料・技術の向上が望まれています。中でも白色に光る有機材料は、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代証明の光源材料としての期待が高く、加工プロセスの観点からは、高輝度な白色発光を簡便な方法で調整できる有機材料であることが望まれています。我々は、青色発光性のオリゴフェニレンビニレン(OPV)分子を分岐アルキル鎖で取り囲み、室温で液状、不揮発性の青色発光する材料を開発しました。この液体をマトリクス(溶媒)と見立て、少量の固体色素(ドーパント)を混ぜ込む非常に簡単な操作のみで、良質に白色発光する液体材料の開発に成功しました。本材料は、簡便に様々な基板に塗布可能、白色発光インクとして文字印字ができ、UV-LED表面に塗布し、プロトタイプの白色発光デバイスとして扱うことができます。【担当:中西】

常温液状機能性液体に関する研究

[参考文献]

Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 3391-3395.
(Highlighted in Nature, 2012, 484, 9. and ChemistryViews, Press released from Wiley)

上述と同様の分子コンセプト(蛍光色素分子を分岐アルキル鎖で包み込む)を基に、より汎用性の高い有機色素であるアントラセンを青色発光するドナー性液体分子として作成しました。この液状アントラセン蛍光体は、有機色素の最大の弱点とも言える光(酸化、二量化など)に対する耐性が、市販のアントラセン色素と比較して5~10倍向上しました。また、電子アクセプター性の発光色素を混ぜ込むことで、単一光励起光源からのフルカラー発光可能な液状材料として仕立てることに成功しました。【担当:中西】

常温液状機能性液体に関する研究

[参考文献]

Nature Communications, 2013, 4, 1969.

液状π共役分子の新奇自己組織化技法

π共役系分子の自己組織化のタイミングおよび得られる構造・機能を容易に制御できる新技術を開発しました。その制御方法は、自己組織化させたいアルキル化π共役系(液状)分子の一部のパーツ(具体的には、π共役ユニットもしくはアルカン分子)を添加するのみで達成でき、自己組織化後には光導電性を示すようにもなります。【担当:中西】

液状π共役分子の新奇自己組織化技法

[参考文献]

Nature Chemistry, 2014, 6, 690.

金属錯体アレイの機能開拓

詳細はこちら【担当:田代】

分子認識と有機・無機ハイブリッドを駆使したケミカルセンサー

科学技術の進歩は人類に豊かな生活をもたらした一方で、有害な人工物質による環境汚染や健康被害が問題となっています。有害物質による悪影響が蓄積して表面化する前に、有害物質をいち早く検出し、被害を最小限に食い止める行動をとれるようにすることが肝要です。本研究では、有機合成および超分子化学を基幹技術として、ターゲットとなる有害分子を選択的に捕まえるホスト分子を設計・合成し、無機物質とのハイブリッド化によって材料化することで、安価で小型、簡単に使えるケミカルセンサーの開発を目指しています。
 例えば、分子が弱い相互作用で連結した超分子ポリマーと呼ばれる高分子を用いてカーボンナノチューブ (CNT) 表面を被覆し、ホスゲンやサリンなどに類似した求電子性の有毒ガスに曝されると導電性が大きく上昇するセンサー材料を開発しました。導電性の変化は、市販の抵抗計で簡単に検知できます。このセンサー材料を市販の近距離無線通信 (NFC) タグの電子回路中に組みこむことで、スマートフォンで読み取り可能な有毒ガスセンサーも実現しました。その他にも、色素分子を粘土に吸着させた有機・無機ハイブリッド材料によって、アルコールを目視で見分けられる呈色センサーや、新規な原理に基づくキラルセンサーなど、人類の役に立つケミカルセンサー材料の開発を精力的に進めています。【担当:石原】

分子認識と有機・無機ハイブリッドを駆使したケミカルセンサー

Fig.1. (A) Concept of this work and structure of metallo-supramolecular polymer (MSP). (B) Resistive sensor for detection of DECP, a nerve agent simulant. SWCNT-MSP composite was drop-casted on interdigitated electrode, and conductivity of SWCNT network was monitored by potentiostat. (C) Wireless sensor for detection of SOCl2, a choking agent simulant. Resistive sensor was inserted into commercial NFC tag.

[参考文献]

J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 8221- 8227.
(Highlighted in MIT News, Press released from NIMS)
ACS Appl. Mater. Interfaces 2013, 5, 5927−5930.
Nat. Commun. 2013, 4, 2188.

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