透過電子顕微鏡法(TEM)による材料評価法の開発と応用
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- 透過電子顕微鏡法(TEM)は、極微小領域の拡大像を観察するイメージング、電子回折図形による結晶構造解析、電子エネルギー損失分光法(EELS)などによる元素分析など、様々な微細構造解析が可能です。球面収差補正装置・モノクロメーター・高感度検出器が開発され、原子分解能で評価・分析できるようになりました。これまで我々は、高精度/高感度計測のためのTEM手法の開発や、データ解析手法を開発してきました。4D-STEMなどにより得られた大容量のデータを教師なし機械学習(次元削減・クラスタリング)で解析し有用な情報を抽出する研究も行っています。 TEMの各種手法を組み合わせて、特異な物性や優れた性能を実現する微細構造を評価することにより、マテリアル革新力強化に寄与することを目指しています。詳細は別ページに記載しています。
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電子線パルスを利用したTEM内ナノスケール熱輸送計測法
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- 放熱用材料、熱絶縁材料、熱電材料などの高性能化に向けた精密な材料設計やデバイス開発を行うためには、欠陥や界面などの局所領域でフォノンがどのように散乱され、どのくらいの熱抵抗が生じるのかなどを直接観察し、熱輸送時の現象を理解する必要があります。そこで、本研究では、微細構造と同時に熱輸送がナノスケールで直接評価できるTEMをベースとした新たな熱輸送評価手法の開発を進めています。特に、電子線をパルス化することで、温度波の位相および振幅解析を基にしたTEM試料の定量的な熱拡散率測定や時間分解的なその場温度波観察手法の開発に注力しています。
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電子顕微鏡を駆使した分子科学研究の展開
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- 分子集合体、有機・錯体結晶、高分子などの分子性材料の電子顕微鏡観察においては、電子線照射による試料損傷が高分解能イメージングの妨げとなっています。本研究では、独自開発した電子顕微鏡試料作製手法および高速電子顕微鏡動画撮影・解析技術に基づき、単―分子や分子集合体の構造を原子分解能で明らかにし、さらに化学反応や構造変換など分子が関わる動的過程をリアルタイム映像として記録する「映像分子科学」研究を展開しています。また、これらの研究で培った電顕技術を活かし、分子とマクロを繋ぐナノ、メゾ領域の階層的分子集合機構の理解に基づく、ナノ薄膜などの機能性分子集合体材料の開発を行っています。
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電子エネルギー損失分光(EELS)の計測技術開発と応用
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- ナノメートル分解能での諸物性を高精度に計測する技術が求められています。我々は、赤外領域に現れる諸物性をナノメートル分解能で計測できる技術として、超高エネルギー分解能(~20meV)のEELSと走査透過電子顕微鏡法(STEM)を組み合わせたSTEM–EELSの技術開発と計測応用を進めています。具体的には、STEM-EELSで超高エネルギー分解能(~20meV)、位置分解能(~1nm)、波数分解能(~3nm-1)を両立することで、赤外領域の物性をナノメートル分解能で計測できます。
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LaB6ナノワイヤ冷電界放出による新世代電子顕微鏡
- 高輝度かつ単色性の高い電子ビームは、材料研究、医薬品開発、半導体製造の分野で電子顕微鏡に利用するために非常に高い需要があります。我々は、従来の電子放出源の100億分の1のサイズとなるLaB6(六ホウ化ランタン)材料のナノワイヤの作製に成功しました。このLaB6ナノワイヤを用いた冷電界放出は、低仕事関数とナノメートルサイズの組み合わせにより、従来の電子源と比べて100倍高い放出輝度と10倍優れた安定性を有します。小型卓上型SEM(走査電子顕微鏡)から原子分解能を持つ収差補正TEMまで、新しい電子線源として幅広い応用が可能です。

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先進的な材料特性評価のための新しい顕微鏡技術の開発
- 上に述べた手法に加え、以下のような新しい解析手法を開発することでTEMによって得られる情報の幅を広げることを目指しています。
・2次元材料中の欠陥周辺における電場分布の原子分解能測定
・個々のナノワイヤの熱振動モードの直接観察
・その場Joule加熱されたカーボンナノチューブのnmスケールでの温度マッピング
これらの顕微鏡技術により、先端材料についての理解が深まり、その性能向上へのフィードバックが得られます。

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