ESICMMとは


代表研究者
広沢 哲
元素戦略磁性材料研究拠点(ESICMM; The Elements Strategy Initiative Center for Magnetic Materials)は、理論・計測解析・材料創製の3分野を融合させて、新規磁石材料の理論探索を進めると同時に、既存磁石材料の高性能化技術を研究し、希少元素に依らない大量生産可能な次世代磁石材料を実験室規模で創製し、産業界での開発研究に必要とされる基礎学理と技術基盤を構築することを目的として2012年度から2021年度までの10年間、物質・材料研究機構(NIMS)を中核機関として設置されました。同時に、将来の磁性材料研究開発の継続的な発展に寄与する人材の育成も行い、数多くの人材が産学の研究現場に活躍の場を見出しました。

 永久磁石材料は、ハイブリッド自動車・電気自動車のモータや、風力発電機をはじめ、エアコン・冷蔵庫等の電気製品の心臓部に使われており、磁石特性の向上は省エネルギーに大きく貢献します。

 現在最高性能を有する希土類磁石は、日本の佐川眞人博士により発明され、鉄を主成分としてネオジム・ジスプロシウムと硼素を使った合金(ネオジム磁石)が高性能用途で使用されています。しかし、希土類(レアアース)資源を海外に依存する我が国にとって、資源輸出国の政策やレアアース価格の高騰が近年では問題となっており、ジスプロシウムのような希少資源を使わずに高性能な永久磁石を創出することが求められるようになりました。

 永久磁石材料は、ナノメートル領域の結晶組織制御によって特性が発現する材料ですが、そのような微細領域の磁気物性値や特性を決めるメカニズムについての学問的な解明はなされていませんでした。ESICMMの10年間で永久磁石の材料科学が飛躍的に充実し、新たな材料創製研究の厚い基盤が構築されました。

 本研究拠点では、メカニズム解明に根差した新規高性能磁石材料の創出を目指し、代表研究者の下に、
  • 新規物質探索の決め手となる理論や計算科学を担当する「電子論グループ
  • 特性発現機構解明に欠かせない微細領域の組織解析を担当する「解析評価グループ
  • 高度な組織制御技術を駆使し研究成果の工業化に不可欠な材料創製を担当する「材料創製グループ
  • の3グループを設置し、10年間で東北大学、産業技術総合研究所、東京大学物性研究所、東京大学、京都大学、大阪大学、高エネルギー加速器研究機構、高輝度光科学研究センター、名古屋大学、名古屋工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、東京工業大学、東北学院大学、兵庫県立大学、九州大学の延べ15機関と連携して、共同研究を推進しました。

    電子論グループ


    グループリーダー
    三宅 隆(AIST)
     電子論グループは結晶磁気異方性などの磁気物性値の高精度計算、界面や表面を含むより大規模な系での物性値予測、保磁力の微視的理論解析、磁化反転と伝搬にかかわる理論の整備、第一原理計算による高性能磁石化合物の探索などのテーマに取り組み、計算物質科学イニ シアチブ(CMSI)を軸に拠点間で連携して理論共通基盤を開発整備し、計算主導の材料開発手法の構築しました。

    【参画機関】産業技術総合研究所、東北大学、東京大学物性研究所、物質・材料研究機構、東京工業大学、東海国立大学機構名古屋大学、北陸先端科学技術大学院大学、兵庫県立大学

    解析評価グループ


    グループリーダー
    宝野 和博(NIMS)
     解析評価グループは、既存の磁石材料および材料創製グループが創出する種々の材料の組織および磁性を最先端の解析技術を駆使して、多面的マルチスケール解析で徹底的に解明し、理論との対比、材料創製グループへの提言を行いました。電子顕微鏡およびアトムプローブを駆使した解析に加えて、Spring-8やJ-PARCなどの先端大型研究施設での構造解析及び磁気分光とイメージング、熱力学的および速度論的側面からの磁石材料の基盤研究、単一粒子の磁化反転挙動解析、マイクロマグネティックシミュレーションによる複雑構造を持つ磁石の磁化回転挙動の解析などの研究を行うことにより、保磁力と微細構造の因果関係を解明し、高保磁力磁石開発の指針を示しました。

    【参画機関】物質・材料研究機構、東北大学、高エネルギー加速器研究機構、高輝度光科学研究センター

    材料創製グループ


    グループリーダー
    杉本 諭(東北大)
     材料創製グループは、既存磁石材料の高性能化と新規磁石材料の創製のため,バルク材料における組織最適化プロセス、薄膜プロセス、ナノ・メゾ粒子によるビルドアッププロセスなど、種々の手法による材料開発を行うとともに,電子論および解析評価グループとの連携により,理論と解析に基づく材料設計指針を確立いたしました。

    【参画機関】東北大学、物質・材料研究機構、京都大学、東北学院大学

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