go to top page リサイクル鉄の超鉄鋼化
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Q.1
リサイクル鉄とは何ですか。

A.1
スクラップされた鉄をリサイクルして生産される鉄です。


Q.2
銅、スズ、リン、硫黄、炭素、窒素など、どんな不純物でも有効利用できるのですか?

A.2
リサイクル鉄とは鉄スクラップのことで、いろいろな不純物が混ざってきてしまいます。たとえば、P, Sn, Cu, Sなどですが、鋼をもろくするなど悪さをしやすい元素です。これらの元素は結晶と結晶の境、すなわち、結晶粒界に濃縮して存在するのが問題です。結晶粒が従来の1/10になると、不純物の濃縮は1/10になってしまい結果的に無害になってしまいます。このことを利用し、様々な不純物の利用を考えています。今まで最も利用が難しいと思われるリン(P)で集中的に有効利用を検討してきています。


Q.3
プロジェクトは現在どこまで進んでいるのですか。

A.3
研究開始から2年経過し、不純物をたくさん含んだ板材・棒材の試作段階にきています。


Q.4
「リサイクル鉄の超鉄鋼化」の開発に、今、障害になっていることは何かありますか?

A.4
技術的に最も大きな課題は、如何に安価に優れた性能を持つ材料を作ることができるか,ということです。この点では、溶かした鉄を最終製品に近い厚さの板に固めて、製造コストを下げることが最短の検討課題と国際的に考えられております。特にヨーロッパではこの研究開発が進んでおり、現在はスクラップ対象ではなく、純度の高い普通の鉄鋼製造プロセスへの組み込みが進んでいます。私たちは、このプロセスを参考にして、高性能のリサイクル鉄を低エネルギーで作る製造プロセスの開発を目指しております。しかし、現状では、関連現象を系統的に把握できる基礎データが国際的にも得られている訳ではなく、私たちはそのための実験設備を開発し、十分な基礎研究を系統的に進めて、高効率な製造プロセスの開発に繋げる計画です。


Q.5
「リサイクル鉄の超鉄鋼化」は鉄だけで作る「超鉄鋼」の技術とはかなり違うのですか? これでも、「強度二倍、寿命二倍」は可能なのですか?

A.5
超鉄鋼の微細化技術を取り込んでいますが、不純物を逆利用するために溶解・鋳造する段階から鉄製造プロセスをもう一度見直す研究を進めております。すなわち、「リサイクル鉄の超鉄鋼化」は鉄鋼の新製造プロセスの研究、「超鉄鋼」は強度2倍・寿命2倍の超鉄鋼材料を開発する研究と性格の違いがあります。強度は、微細化技術を取り込んでいますので、1.5倍化を最小限の目標としております。今のところ、寿命は考慮していませんが、研究の進展と共に検討項目に入れていく予定です。



Q.6
「リサイクル鉄の超鉄鋼化」はいつ頃実用化できるのですか?

A.6
民間の実験設備も活用し、超鉄鋼の実用化に平行して達成すべきと考えております。実験室的な目処は、この2-3年で立てたいと計画しております。


福島の高校生の方から以下のご質問を頂きました。

Q.7
α粒径とγ粒径とはなんですか?

A.7
金属の原子は結晶を作りますが、細かい粒々がびっしりと詰まった構造になるのが通常です。その粒を結晶粒と呼んで、その大きさを(結晶)粒径と呼びます。

金属では、温度によって結晶の構造(原子の並び方)が変わるという現象がよく見られます。低温の構造から順に、α、β、γ、δ・・・と名付けるのが歴史的な命名法です。

(純)鉄では、αからδまであると信じられていましたが、科学の進歩に伴い、βは勘違いだったことが判明し、現在では、α、γ、δの三つの異なった結晶構造があると確定されています。

融点以下の高温ではδという結晶構造をとり、冷やすにしたがってγ、αと結晶構造をとるのが(純)鉄における変化ということになります。結晶構造が変わるというだけでは済まず、実際にはγ粒から全く新しくα粒が生まれてきます。私たちはなるべく細かいα粒を得ようと研究しておりますので、γ粒の大きさ(γ粒径)とそこから生まれてくるα粒の大きさ(α粒径)にとても大きな関心を払っています。


Q.8
高P低炭素鋼をどのようにして急冷凝固させたのですか?

A.8
急冷凝固と言っても、実は現在工業的に行われている鉄鋼の凝固速度である0.1K/sと比較して「急冷」であることを意識しております。

水をかけて冷やすとかという冷却手段ではなく、凝固するときの鉄鋼の厚さでほぼ冷却速度が決まります。私たちは、約1K/sから約10,000K/sの間で急冷凝固の影響を調べています。凝固させるときの厚さで言い換えると工業的には250mmなのに対して、ほぼ100mmから1mm程度に相当します。薄く凝固させると直ぐに冷えるという感覚的なご理解でほぼ当たっています。当然、このような薄い厚さに凝固するためには特別な技術が必要です。

簡単に言えば、水冷して融けないように温度調整したロールどうしの間(間隔が凝固させる厚さに匹敵)に融けた鉄鋼を流し込み、固化させる(凝固させる)ということになります。


Q.9
不純物Pを含有する150mm幅x2mm厚のストリップ鋳片を再加熱圧延するとは、どれくらい加熱し、圧力をかけ、どれくらい延ばしたのでしょうか?(グラフを見ても解りませんでした)

A. 9
これは細かいことは正確に発表できる段階ではありませんので申し訳ありませんが以下のように答えさせていただきます。Q.7のご質問との関連で言えば、一端α粒組織になったものをもう一度γ粒組織に変えて(加熱)、約50%程度圧延し、より細かいγ粒径となるようにしています。
圧力と延ばす程度について言えば、私たちは厚さを元の何%にしたかという尺度を目安にしております。すなわち、ここでは「元の厚さ2mmが1mm程度になるように、約50%圧延した」という表現になります。

どの程度の圧力が必要であったかについては、正確なデータを計測することはあまりしません。目安で言えば、1平方ミリメートル当たり数キログラムの圧力で簡単に塑性変形するような高い温度で圧延しております。