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目次
ワークショップ総括
第2回ナノテクネットワーキングと国際協力に関するワークショップは、第8回国際材料科学学会連合−先進材料に関する国際会議(IUMRS-ICAM)のシンポジウムA-10として2003年10月11−12日にパシフィコ横浜にて開催された。ワークショップは日本MRS(MRS-J)によって組織され、岸本直樹(物質・材料研究機構)、R.P.H. Chang(Northwestern大学)、西嶋昭生(産業技術総合研究所)、国武豊喜(北九州大学)によって共同議長が務められた。本ワークショップの目的は、主としてグローバルナノテクネットワーク(GNN)の開発に向けての計画であった。財政面ではナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター(NRNSJ,
日本)、米国科学財団(NSF, USA)及び海軍研究局(U.S. Office
of Naval Research)からの支援を得た。
ワークショップの参加者は約60名程度であり、講演とともに小グループに分けれての有意義なグループ討論も行った。カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、アイルランド、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、スペイン、台湾、英国、米国からの参加者があった。(参加者リストは付録2を参照。)
ワークショップの背景と目的
本ワークショップはグローバルナノテクネットワーク(GNN)に関するワークショップの第2回目にあたる。世界中のナノテクノロジーのリーダー達が、ナノテク分野の科学的・技術的・教育的情報を効率よく交換できることを目的とした、ネットワークの構築のための企画立案と具体的な戦略策定について協力し合った。このダイナミックな進展により、世界中の各領域から来た科学者、教育者、政府代表の間の相互協力が活性化され、新しい複合化を促進することが見込まれる。
各国からの講演の後に、手作りのワーキンググループセッションが開催された。ナノテク分野の国際的なリーダー達からの短い状況報告は、ワークショップ参加者に現存するネットワークと、それらのネットワークがどのように機能しているかを認識させた。政府代表たちは彼らの国々や地域でのネットワーキングと研究協力をいかに支援するかを議論した。集中講演(Focus
Talk)では、成功したモデル、方策、道具について集中的に紹介がなされた。国際ワーキンググループは両日とも開催され、GNNのための緊要なゴール、機能、能力を同定するとともに、国々や地域のネットワークをリンクして実際にGNNを構築する方法について議論された。最終的な勧告はGNN開発のロードマップのための基礎として資するようこの報告書にまとめられた。
ワークショップのテーマ
ワークショップのためにナノテクノロジーの緊要な分野が選定された。参加者は、究極的にはより広い横断的材料分野に対してこれらのアイデアを適用しなければならないが、組織委員会がナノテク分野の近年の驚異的発展を考慮してナノテクノロジーを対象として設定した。講演はナノテク研究プログラムのインフラと実施案の両面に関わるものであった。9ヶ国から集まった研究者達はそれぞれの国でのナノテクプロジェクトの現状について紹介した。研究予算支援組織や政策担当機関からの代表達は、実施中の資源支援の内容について説明した。
組織委員会は、世界中の各主要地域からのナノテクノロジーリーダーを、ナノテク投資と計画を報告するよう招聘した。各講演者はナノテクノロジーへの集中投資の状況から、投資戦略の考え方に亘り、各国プログラムについて説明した。ワークショッププログラムと講演概要は次節に記載されている。
講演の後に参加者は二、三のグループに分かれ、国際ネットワーキングの機会を広げることに関連する論点を議論した。グループはそのようなネットワークを支えるインフラをどのように開発するかについても考慮した。
特に、参加者は、ナノテクネットワーキングへの世界的参加が成功の鍵であり、情報への簡単で無料のアクセスがナノマテリアル研究の成功や国際協力プロジェクトの展開に有意義なインパクトを与えることに合意した。ワークショップで新しく認識された論点は、GNNのためのユーザー主導組織の必要性ということであった。
ワーキンググループの結論
講演やグループ討論への参加を含め、本ワークショップへの多数かつ活発な参加を得たことは、GNNを開発するという考え方に対して、広範かつ国際的な支持基盤が存在することを明確に物語る。
ポリシーと構造
議論のセッションでは、以下を含むいくつもの重要な意見が概念的合意をもって提案された:
1.GNNはその国際的リンクや国際的に開発されたプログラム、プロジェクト、サービスを通して、ナノテクノロジー研究や教育の成功のために極めて有益である。
2.GNNは責任能力のある組織された総体として開発され、その内容、プログラム、管理、インフラに関してはユーザー制御される構造となるべきである。
3.GNNは非営利団体として機能し、政府や産業界、ファンドや財団、必要によってはユーザーや会員によって、財政的に支援されるべきである。
4.高い価値をもち、適切で最新の内容の選択と維持が成功のひとつの基準となる。GNNは“生気”に満ち、アクセスが容易で、活発に管理されるべきである。
5.入力は簡単であるべきである。
6.GNNのwebサイトはユーザーフレンドリーであり、他のリンクされたサイトや情報へのアクセスへの便利な表玄関となるべきである。このためには優秀な検索エンジンを含む必要がある。
7.GNNは現存や開発中のナノネットワークと容易にかつ効率的にリンクすべきであり、余分な重複部分は最低限にされるべきである。このことは思慮深く開発された共有プロトコルが存在して初めて可能になる。
要件とプログラム
GNNは、ナノテクノロジーの研究者、研究プロジェクト、研究施設の間に効率的な世界的規模のリンクを提供し、出版物、研究報告書、教育用資源、データベースへの強力なアクセスを提供することを目的とするものである。さらに、ワークショップグループは、GNNの資源があって初めて可能になるであろう、いくつかの重要な新しいプログラムの野心的な可能性について討論した。このような可能性のいくつかを以下に挙げる:
1.ナノテクノロジー産業の競争力ロードマップの開発の促進。
2.ナノテクノロジー標準の評価データベースの開発。
3.R&Dパートナーシップを仲介し、促進する。
4.ナノテクノロジー研究の人的資源と研究施設の世界的データベースの開発。
5.国際的認知を獲得するための教育的プログラムを始動させる。
6.中核的な研究施設へのアクセスを含む学生や学部間の交換プログラムを促進する。
7.世界的なナノテクノロジー研究の取り組み、政策、実践、資源配分に関する情報の
収集・提供を行う。
8.最新ニュースの配布や研究ハイライトのギャラリーを維持・管理する。
アクション項目
GNNを開発し、これらの野心的かつ肝要なプログラムを達成するためには、GNNの組織構造が、ユーザー主導であり、かつ責任のある管理能力を伴いつつ、積極性と柔軟性を組み合わせた方法で速やかに形作られることが肝要であると考えられる。なによりも、GNNの目的と機能がユーザーによく理解され、サポートされなければならない。暫定的な開発計画は明確に表明される必要があり、出発時に予想される資金に見合う組織構造を同定しなければならない。
GNNの現実的な描像
グループ討論セッションは、集団として初めて、GNNと呼ばれる実態が実際にどのような機能や物理的構造により構成されるかについての具体的な描像を示した。添付した報告書は3つの独立なグループが以下のトピックスについて議論した結果である:
− GNNに参加するコミュニティー
− GNNの機能と目的
− GNNの組織構造
− 未来の可能性
− 解決されるべき問題
3つのグループからの報告書をまとめたものを付録1A,B,C
として添付する。読者にはこの大変分かりやすい報告書を一読することを是非勧める。
一同に会して考察することにより、報告書は「現在、検索エンジンGoogleや電子メイルでは容易には行えない事柄で、GNNにより可能になることは何か?」という挑戦的な問いに対して明確に回答している。さらに、引用された多くのキーワードの反復頻度から、優先度やビジョンに関する本質的な合意が示されている。
グループAとCの結論では、GNNに要求される中央が管理すべき範囲がかなり異なった。グループAは、GNN会員や利用者コミュニティーの代表としてディレクター委員会と利用者のアドバイザリー委員会の両方を設けようとしている。委員会は適当なスタッフを雇い、会員の希望を実行する責任を負い、非営利組織としてのGNNの管理に必要な全ての事項を事務的に行う。グループCは、地域的特異性に対応するために、完全に分割された組織構成を提案した。このような解決される必要のある相違点が依然として残っている。それでもなお、これらの報告書は良く考えられており、現実的な組織構造や管理方法のモデルを提供している。さらに報告書は、GNNの代表の運営委員会に、予算を確保しGNNの所在地を決定しGNN組織の良質な管理を指定するための、具体的な暫定計画とタイムテーブルを準備させる任務を明らかにしている。
ワークショップのプログラムと講演概要
目次
2003年10月11日
開会の挨拶
-. 開会の辞はIUMRS-ICAMS2003のチェアマンである岸輝雄(ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター及び物質・材料研究機構)及び本ワークショップの共同議長である岸本直樹(物質・材料研究機構)、R.P.H. Chang(Northwestern大学)、西嶋昭生(産業技術総合研究所)、国武豊喜(北九州大学)によって、行われた。
-. R.P.H. Chang(Northwestern大学)によって、本ワークショップの経緯と最近のゴールが説明された。
スピーカーパネル1: ナノテク研究とネットワーキングに関する報告
座長: 西嶋昭生(産業技術総合研究所)
神谷 晶 (NEDO)
“日本のナノテクネットワーク”
神谷はNEDOにおけるナノテク研究開発協力、ネットワーク、方策について紹介し、近年の日本におけるイニシアチブについて講演した。彼はいくつかのナノテク材料研究プログラムの成果のシステム化、国際会議や展示会を通した情報交換、産業界との地域的ナノテク分野に関する協力などの種々の試みについて紹介した。
R.W. Siegel (Rensselaer Polytechnic Inst., 米国)
“米国におけるナノテクネットワーク”
Siegel は、米国エネルギー省(DOE)によって支援されているNanoscale Science Research Centers、NSFにより支援されているNanoscale Science and Engineering Centers、NASAによって支援されているNanotechnology University Research Education Technology Institutesを含む米国のナノスケール科学・技術の研究センターについて概観した。彼はそれらの研究センターがどのように互いに相互作用し、世界中の他の研究センターやネットワークとどのようにリンクされるかについて説明した。
スピーカーパネル2: ナノテク研究とネットワーキングに関する報告
座長: 国武豊喜(北九州大学)
Z.G. Khim (Korean Nano Researches Association, 韓国)
"韓国におけるナノテクネットワークと資源配分"
Khimは韓国において1995年に始まり1999年に拡大されたナノテクに関連するいくつかの研究ネットワークについて紹介した。その後の先進国からのナノテク研究の波により、2002年に戦略的国家R&Dプログラムが策定された。このプログラムによりDaeduck科学都市にナノファブリケーションセンターが設置されるとともに、政府及び民間によるナノテクの研究開発に大幅な研究投資が始まった。
G.L. Rochon (Purdue 大学, 米国)
“Purdue大学におけるナノテク研究・教育・インフラ・連携”
Rochonは米国ナノテクネットワークにおける計算科学・シミュレーションに関連する話題に絞って講演した。彼はPurdue大学に設置されたネットワーク(ナノテク計算科学のためのナノハブNCNネットワークとe-エンタープライズセンター)について紹介し、世界中の外部のネットワークとどのように相互作用していくかを議論した。
Prof. C.N.R. Rao (Jawaharlal Nehru Centre for Advanced Scientific Research, インド)
"インドにおけるナノ研究とネットワーク"
Raoはインドが国家ナノ・イニシアチブを開始し、昨年装置及びインフラの改善に投資したことを報告した。いくつかの専門化した技術に関して中心的国家施設を設立している。またナノサイエンス分野の大学院生や教師をトレーニングするためのワークショップを開催していることを紹介した。
J.M. Yacaman (Texas大学Austin校, 米国)
"米国-ラテンアメリカにおけるナノテクネットワーク"
Yacamanは近年の米国とラテンアメリカの間のナノテク連携に関して講演した。これらの国々における経済的、教育的状況を紹介した後、その可能性について議論した。連携の利点・問題点に関して言及し、開発途上のラテンアメリカ諸国にとってナノテクとネットワークの重要性を指摘した。
フォーカストーク1
座長: 岸本直樹(物質・材料研究機構)
徳本洋志 (北海道大学)
“ナノテク研究における国際協力に向けて”
徳本はナノテク研究と学際領域の国際協力の重要性について講演した。近年、生物学、化学、電子工学、力学、材料科学、光学、理論シミュレーションなどの分野を横断したシンポジウムやワークショップが頻繁に開催されているが、彼はそのような場で議論されたいくつかの事項について紹介した。彼はナノテクにおける“道具”と計測学の重要性を強調し、それらの精度と再現性について充分に理解する必要性を説いた。
フォーカストーク2
座長: 岸本直樹(物質・材料研究機構)
本セッションではC. Ziegler
(Kaiserslautern大学, ドイツ)とH. Schmidt (Institute for New Materials, ドイツ)が “ドイツにおけるナノテクネットワークモデル”という題名のもとに時間を分割して講演を行った。
"ドイツにおけるナノテクネットワークモデル"
Zieglerはドイツにおけるナノテクネットワークモデルの重要な特徴について講演した。彼女はドイツのネットワーク構造の強力さを強調するとともに、ヨーロッパにおける成功の例としてその活動を紹介した。
SchmidtはナノテクBMBFネットワークについて説明した。7つの重要なネットワーク領域としてCC-ナノ化学、ナノ分析、ナノ光学、超薄機能性膜、ナノ物質、ナノバイオテクなどが指定されている。CCナノ化学ネットワークを例にとり、その構造、連携、成果などを説明した。
ワーキンググループディスカッション1
座長: R.P.H. Chang (Northwestern 大学, 米国)
テーマ:グローバルナノテクネットワーク(GNN)の設立
グループリーダー:J. Baglin (IBM, 米国), R. Nemanech (North Carolina 州立大学, 米国), E. Kaufmann
(Argonne国立研, 米国)
参加者は3つのグループに分かれ、GNNに求められる要件について議論した。
参加者からGNNはユーザー主導で運営され、GNNの構造がユーザー主導によって発展させられていくことの重要性が強調された。彼らは、教育の問題、連携、ナノテクのグローバルなロードマップ化、データの評価、標準の確立、アクセスのし易さなどを議論した。
以上の議論から、GNNの活動と能力に関する「希望リスト」が作成された。リストの各項目について実現可能性とコストが粗く評価された。中央のスタッフに要請される業務の割合と各地方(ノード)に要請される寄与の割合が見積もられた。
2003年10月12日
キーノートレクチャー1
座長::岸 輝雄 (NRNSJ;物質・材料研究機構)
M. Roco (シニアアドバイザー, NSF, 米国)
"米国におけるナノテク研究と連携"
Rocoは世界の多くの国々におけるナノテク・イニシアチブと投資方策について概観した。政府機関によって報告された世界でのナノテク研究開発への投資は、1997年の432百万ドルから2003年の約3十億ドルへと過去6年間で7倍にも増加した。ナノスケール科学と技術のゴールが国際協力によって見込まれる
スピーカーパネル3: 他の地域での政府の研究予算投資
座長: R.P.H. Chang (Northwestern 大学, 米国)
M.K. Wu (Academia Sinica, 台湾)
"台湾におけるナノテクに関する国家的科学技術プログラム"
Wuはナノテックネットワークと研究協力に関する台湾の研究予算投資について講演した。彼はナノテクネットワークと研究協力の進展を支える最近の台湾政府の研究予算投資について紹介した。彼は学際領域での教育プログラムと国際的交流、国際的連携の重要性を強調した。
S. Xie (Chinese Academy of Science, 中国)
“中国におけるナノテクの研究予算投資とネットワーク”
Xieは、中国政府によるナノテクネットワークの進展を促進し、ナノテク研究と教育の国際協力を支援する近年の方策と資源配分イニシアチブについて説明した。彼は近年のナノテク研究協力に関する中国におけるプログラムとイニシアチブについて紹介し、現存する中国のナノテクネットワーク、特にその機能と中国外の他のナノテクネットワークとどのように関係しているかについて報告した。
スピーカーパネル4: ネットワークと産業界のパートナー
座長: 西嶋昭生(産業技術総合研究所)
横山 浩 (産業技術総合研究所)
"戦略的ナノテクグローバルネットワーク:AISTにおける現状と提案"
横山は戦略的ナノテクグローバルネットワークに関するAISTにおける現状と提案について言及した。ナノテク研究開発においては先駆的なアイデアをスピーディーに遅れなく実現化することが重要であるため、北米、ヨーロッパ、アジアの主要な研究機関と双方向的な関係を築く努力をしてきたことについて説明した。彼はまた、大学と産業界の両方から未来のパートナーを募集する試みについても紹介した。
K.J. Snowdon (Newcastle大学, 英国)
"英国におけるナノテクネットワーク:産業界"
Snowdonは英国におけるナノテクネットワークの産業界的側面について講演した。彼は英国におけるミクロ-及びナノ-テクに従事する研究者、研究機関、研究設備について焦点を合わせた英国ミクロ-及びナノ-テクネットワークの進展について言及した。彼は、産業と大学研究者の間の協力を管理することにより企業精神と商業化を推進する平行研究開発のINEXモデルについて説明した。
J.C. Yang (ITRI, 台湾)
"ナノテクネットワーク:ITRIのアプローチ"
Yangはナノテクの産業に関する台湾のアプローチについて議論する。台湾では6年計画の国家ナノテクプログラム予算615百万ドルの60%がナノテクの"産業化"に向けられており、この産業化のための研究開発の多くがITRIによって行われる。彼は、これらの研究開発活動が台湾をナノテクの産業化の一番走者であることを確立し、長期にわたる台湾のナノテク産業の優位性を確保する技術的競争力を築くことを使命としていることを強調した。
G. Crean (NMRC, アイルランド)
"アイルランドにおけるナノテク"
Creamはアイルランドにおけるナノテクネットワークと研究協力について講演した。彼はどのようにアイルランドのネットワークが予算配分され、他のヨーロッパやその他の世界のネットワークと相互作用するかについて説明した。彼はまた、CorkとDublinにある国際的競争力を有する地域クラスターと、Corkにある国立ナノファブリケーション施設について説明した。産業界とのネットワークへのアプローチについても説明した。
石川正道(三菱総合研究所)
"日本産業界におけるナノテクネットワーク"
石川は三菱総研におけるナノテクネットワークと研究協力を推進する戦略とイニシアチブについて概観した。彼はナノテクのトレンドの詳細な解析から、ナノテクロードマップを作成することの重要性を指摘した。また、大学と産業界の研究者の間に交流を持たせることの重要性についても言及した。彼は、ボトムアップナノテクが産業界に技術的ブレークスルーの鍵となること、日本産業界が"生物模倣"ナノテクに大変興味をもっていることを述べた。
キーノートレクチャー2
座長: 岸本直樹(物質・材料研究機構)
野田哲二 (ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター)
"ナノテク研究ネットワークの活動"
野田はナノテクノロジー総合支援プロジェクトとナノテクノロジー研究ネットワークセンター(NRNSJ)について講演した。NRNSJの目的はナノテク研究と研究施設のネットワークを形成し、研究成果に関する最新情報や共同利用の特殊施設を共有することにある。NRNSJは、ナノテクノロジーに関する国の研究プログラムや研究者や実験室の活動、特許に関する情報のデータベースを作成しつつある。
フォーカストーク3
座長: 岸本直樹(物質・材料研究機構)
R.P.H. Chang (Northwestern大学, 米国)
“国際仮想研究所:グローバルナノテクネットワークのためのサイバーインフラ”
ChangはNorthwestern大学で開発中の国際仮想研究所のプロトタイプのサイバーインフラがどのようにGNNの実空間での活動と施設を助け、メンバー間の協力を促進するために使用されるかを説明した。開発中の機能の例として、協力的研究プログラムの仮想オフィス、最新の研究成果を刻々と表示するグローバル研究ギャラリー、情報資源センター、科学・工学教育センターなどが紹介された。
ワーキンググループディスカッション2
座長: R.P.H. Chang (Northwestern 大学, 米国)
テーマ:グローバルナノテクネットワーク(GNN)の設立
グループリーダー:J. Baglin (IBM, 米国), R. Nemanish (North Carolina 州立大学, 米国)
参加者は2つのグループに分かれ、GNNの構造と実施方法について議論した。またGNNの事務的な構造についても議論した。参加者は、GNNを始動させ、そして持続させ、さらに要望リストに書かれている機能を調整するために必要な、組織と信頼性の最小限の基本構造について、まとめ上げた。GNNは露わに非営利団体として活動すべきであることが決定された。GNNの活動上で究極的に重要な特性とポリシーのリストが作成された。新しい観点、すなわちユーザーをどのように動機付けしGNNの進展に参加させていくかが議論された。ユーザーに優しく、ユーザーによって主導されていくGNNの実施の原則が討論された。
サーマリーセッション
座長: 岸本直樹(物質・材料研究機構)
Baglin(IBM, 米国)がGNNの望まれる特性、構造、実施方法に関してグループディスカッションで得られた結果をまとめた。次回GNNワークショップはヨーロッパで開催される予定である。
付録1:ワーキンググループディスカッション
目次
付A.
ワーキンググループレポートA
ディスカションリーダー:John Baglin, IBM Almaden Research
Center, San Jose, CA, USA
秘書:Prof.David Officer, Massey University, New Zealand
GNN のミッションと能力に関する希望リスト
各グループはGNNの活動と能力に関する要望リストの作成を求められた。
質問:
GNNが設立された場合、なにが一番有益なことか?
判断条件:
(a) 付加価値を示す:今日のあなたの机上ではできないこと。
(b) 国際リンクに関連すること。
(c) これらの活動の全実施期間は数年。
計画:
1. 物理的に不可能とかコストがかかり過ぎるという制限を外して要望リストを作成。
2. その後、各項目について実現性とコストを粗く評価する。
3.
次に、センタースタッフに要求されることと各地方(ノード)に要求される寄与の相対的比率を見積もる。
要望リストを表1に示す。リストはおおよそ項目の規模により配列されており、配列順序と優先性とは関係がない。実現性、コスト、センタースタッフに要請される活動量と地域に要請される寄与の相対的大きさを示す欄を加えた。
リストの各項目は多くの議論と考察の結果であり、示された全ての項目はグループの参加者各位によって吟味され、強く支持されたものである。実施が可能であれば、全ての項目は高い優先性を持つと考えられる。その他にも多くの提案がなされたが、検討の結果、却下された。
表1.グルーバルナノテクネットワークの活動、プログラム、能力への要望リスト
GNNの活動と能力に関する要望 |
実現性 |
コスト |
センタースタッフI |
地方(ノード |
ナノテク産業ロードマップ の作成と出版 |
** |
$ |
***** |
**** |
人的資源と設備の世界的なデータベース |
** |
$ |
*** |
**** |
特定の研究の状況を提供する:報告書や白書 |
*** |
$ |
** |
** |
世界的規模のナノテク大学:学際的ユニットの教育内容 |
*** |
$$$ |
***** |
**** |
学生及び学部の交換プログラムや設備へのアクセス |
*** |
|
*** |
*** |
パートナーシップの仲介。資源の活性的マッチメーキング。
(企業-企業、企業-大学、など。学術団体-商業化パートナー) |
** |
$$ |
** |
**** |
標準の確立 |
* |
$ |
* |
* |
世界的な政策やその実践(特に研究予算配分)の提供 |
** |
|
** |
*** |
データベースの作成と出版(実施中) |
* |
$$$ |
** |
** |
ナノテクの影響・効果に関する研究や情報の交流推進 |
* |
$ |
* |
* |
最新のデータやニュースを収集し、編集、表示すること |
* |
|
* |
** |
ナノテク特許検索エンジンの増強 |
*** |
$ |
** |
|
有効な公的支援プログラム |
*** |
$ |
**** |
**** |
オンライン研究会、ワークショップ、クラスの実施/支援 |
*** |
$ |
*** |
*** |
研究会や国際会議の企画・実施支援 |
*** |
|
* |
* |
世界的規模の研究学会の設立 |
* |
|
* |
* |
GNN の性能と使途: − 重要な判定条件は?
質問:
新しいGNNのために特に重要な性能と哲学の条件は?
アクセスに関連する事項:
- GNNは明確に非営利団体として運営されるべき。
- 大半の内容へのアクセスは無料とすべき。スポンサーによる援助も検討。
- 「会員」は全般的な内容にアクセスが可能で、名目上の会員費を支払う。
- 大きなコストがかかるサービスは有料とするが、コストは最低限に抑える。
ユーザーインターフェース:
- GNNへの"入口"はユーザーフレンドリーとすること。
- "入口"は全ての機能への矛盾なく直感的な誘導を行うことができること。
- この単一の"入口"は実際上、検索/アクセスの多様なレベルのユーザーを助けることができる。
- 多言語の"入口"とユーザーインターフェース:初期に可能限り多くのアクセスを受けることを助ける。
- 言語:翻訳されたディレクトリーを持ち、必要に応じてGoogleのような翻訳ソフトを提供する。
- Googleネットワーク検索エンジンと結合すること。
バンド帯域/スピードに関する問題:
- 可能な限り"テキストのみ"という高速オプションを設ける。
入力:
- 新しい情報を容易に入力できること。
- 入力者のクレジット/引用はオプションとして保持すること。
- 提出された入力情報は"サイトマネージャー"によって、適切さの観点から選別される。
- 入力は一般的にメンバーのみの特権とする。
GNN の実体的組織
質問:
GNNを始動させ、そして持続させ、さらに要望リストに書かれている機能を調整するために、必要な組織と責任のための最小限の基本構造を記述すること。
* GNN
は責任と調整のために実際上及び認識上の両方のシステムの必要とする。
* GNN は認識上と実際上の両面について"ユーザー制御"構造でなければならない。
実体的センター:
一連の専用サーバーが必要だが、全てが一箇所に設置される必要はない。
構造:
1. ディレクター委員会(地方ノードのディレクターを含む場合もある)
2. アドバイザリーボード(ユーザー、関連する経験を有する人々など)
3. マネージャー
4. 事務局
5. 科学的/技術的リエゾン;技術的対応者と関係をもち、必要な資料を集め、投稿者、契約者、資源関係者との交渉などを行う。
6. "生産"部門:例えば仮想会議、教育資料など(要望リスト参照)
7. マーケティング:市場調査、市場開拓を含む。
8. ビジネスプラン:基本的にビジネス的に行われる。大きな責任能力をもつマンージメント。
9. ITアップデートとメインテナンスを行う人材:GNNのソフトウェアとシステムを常に最先端なものに保つことは必須の条件である。
戦略:
討論グループAは、以下の項目について国際的合意によりさらなる計画検討を行うことを促す。@丈夫なGNNインフラを構築すること。A強い会員参加を奨励すること。Bユーザーの興味を引き持続すること。CGNNへの参加とサービスが得られることを保証すること。
|
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付録 2:参加者リ
ト 目次 |
|
氏名
|
所属 |
国名 |
Baglin |
John |
IBM
Almaden Research Center |
USA |
Baraton |
Marie-Isabelle |
University
of Limoges |
France |
Chakravorty |
Dipankar |
Indian
Association for the Cultivation of Science |
India |
Chang |
R.P.H. |
Northwestern
University |
USA |
Chen |
Nan |
ATIP
(Asian Technology Information Program) |
Japan |
Chowdari |
B. V. R. |
MRS-Singapore/National
University of Singapore |
Singapore |
Choy |
Kwang-Leong |
University of Nottingham |
UK |
Crean |
Gabriel M. |
NMRC Ireland |
Ireland |
Fudamoto |
Yasunori |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Fujita |
Takahiro |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Glasow |
Peter A. |
E-MRS |
Germany |
Gogotsi |
Yuri |
Drexel University |
USA |
Goretta |
Kenneth C. |
Asian Office of
Aerospace Research and Development (AOARD) |
Japan |
Hirahara |
Keijiro |
Nanotechnology
Researchers Network Center of Japan (NRNCJ) |
Japan |
Huber |
Carmen Huber |
US National Science
Foundation, Division of Materials Research, Office of Special
Programs |
USA |
Ikari |
Gary |
Agilent Technology |
USA |
Ila |
Daryush |
Alabama A&M
University Center for Irradiation of Materials |
USA |
Ishikawa |
Masamichi |
Mitsubishi Research
Institute, Inc |
Japan |
Jimbo |
Shinichi |
Nikkei nanotechnology |
Japan |
Kamiya |
Akira |
New Energy and Industrial
Technology Development Organization |
Japan |
Kaufmann |
Elton N. |
Argonne National
Laboratory |
USA |
Khim |
Zheong G. |
Dept. of Physics, Seoul
National University |
Korea |
Kim |
H.S. |
Chungnam National
University |
Korea |
Kishi |
Teruo |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Kishimoto |
Naoki |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Kitagawa |
Nobuaki |
National Defense Academy |
Japan |
Kunitake |
Toyoki |
University of Kitakyushu |
Japan |
Lim |
Han-Jo |
Electrical Engineering,
Ajou University |
Korea |
Manocha |
Lalit M. |
Department of Materials
Science, Sardar Patel University |
India |
Nakamura |
Morihiko |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Nemanich |
Robert J. |
North Carolina State
University |
USA |
Nishijima |
Akio |
National Institute of
Advanced Industrial Science and Technology (AIST) |
Japan |
Noda |
Tetsuji |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Officer |
David |
Nanomaterials Research
Centre, Massey University |
New Zealand |
Ozawa |
Eiichi |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Paiziev |
Adkham A. |
Institute of Electronics,
Uzbek Academy of Sciences |
Uzbekistan |
Petrykin |
Valery |
Materials and Structures
Laboratory, Tokyo Institute of Technology |
Japan |
Plaxine |
Oleg |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Rao |
C.N.R. |
Jawaharlal Nehru Centre for Advanced
Scientific Research |
India |
Rochon |
Gilbert L. |
Information Technology at
Purdue (ITaP), Purdue University |
USA |
Roco |
Mihail C. |
National Science
Foundation |
USA |
Sathiaraj |
T. Stephan |
University of Botswana |
Botswana |
Schmidt |
Helmut |
Institute for New
Materials: Nanotechnology Competence Center |
Germany |
Shinya |
Norio |
Nanotechnology
Researchers Network Center of Japan (NRNCJ) |
Japan |
Siegel |
Richard W. |
Rensselaer Polytechnic
Institute |
USA |
Snowdon |
Ken |
University of Newcastle |
UK |
Soucy |
Gervais |
Universite de Sherbrooke |
Canada |
Suh |
Sang-Hee |
Center for Nanostructured
Materials Technology |
Korea |
Mika |
Takahashi |
Nanotechnology
Researchers Network Center of Japan (NRNCJ) |
Japan |
Takano |
Jun-ichiro |
National Institute of
Science and Technology Policy (NISTEP) |
Japan |
Takemura |
Masahiro |
National Institute for
Materials Science (NIMS) |
Japan |
Tokumoto |
Hiroshi |
Nanotechnology Research
Center, Research Institute for Electronic Science, Hokkaido
University |
Japan |
Woo |
Paul |
Gennum Corporation |
Canada |
Wu |
Maw Kuen |
Academia Sinica |
Taiwan |
Xie |
Sishen |
Chinese Academy of
Sciences, Institute of Physics |
P.R.China |
Yacaman |
Miguel Jose |
University of Texas at
Austin |
USA |
Yang |
Jih Chang |
Industrial Technology
Research Institute (ITRI) |
Taiwan |
Yokoyama |
Hiroshi |
National Institute of
Advanced Industrial Science and Technology |
Japan |
Ziegler |
Christiane H. |
University of
Kaiserslautern: Nanotechnology Competence Center |
Germany |