日本鉄鋼協会 2026年 一般表彰
2026年3月11日、NIMS構造材料研究センター(RCSM)の佐原 亮二 グループリーダーが日本鉄鋼協会 学術部門「浅田賞」を、柴田 曉伸 上席グループリーダーが他7名とともに「澤村論文賞」を、畠山 友孝 主任研究員が「研究奨励賞」を受賞しました。
日本鉄鋼協会 学術部門 浅田賞
受賞題目:実験パラメータに依存しない階層計算技術による構造材料設計
佐原亮二グループリーダーは、ナノスケールの第一原理計算をはじめとする計算材料科学により、鉄鋼材料など構造材料の理論設計を進めています。その際、従来は実験値や経験的パラメータに依存した数値計算による材料開発支援を刷新し、第一原理計算と粗視化計算技術を連携し、マルチスケールシミュレーション技術開発を進めています。これは標準的な第一原理計算のみでは扱えない大きな空間・時間スケールにわたります。得られた成果として、第一原理計算のみによりNi-Al-X(X=Ti, Nb)三元系合金等の状態図を決定しました。このための自由エネルギーの温度依存性は、第一原理計算によるエンタルピー、フォノン自由エネルギー、混合エントロピー、電子励起・磁性の自由エネルギーの和として求めました。また「第一原理フェーズフィールド法」により、様々な合金の複雑な微細構造を予測しました。さらに、拡張準粒子理論に基づき、電子励起状態を取り扱うことが可能なGW近似を採用した第一原理分子動力学法を開発し、水素社会の基盤となる水素生成法の一つであるメタン分子からの水素生成の基礎過程を現象論的なパラメータを一切使わず追跡することに成功しました。これらの知見により、従来型の現象論的研究を抜本的に脱却し、材料開発の高速化が期待されます。鉄鋼材料など構造材料の学理・技術の進歩発展、計算材料科学分野での活動に顕著な貢献が認められました。
日本鉄鋼協会 澤村論文賞
Relationship between Three-dimensional Crack Morphology and Macroscopic Mechanical Properties of Hydrogen-related Fracture in Martensitic Steel
受賞者:柴田 暁伸(NIMS)、Yazid Madi (MINES Paris-PSL)、Jacques Besson (MINES Paris-PSL)、中村 晶子(NIMS)、諸永 拓(NIMS)、岡田 和歩(NIMS)、Ivan Gutierrez-Urrutia(NIMS)、原 徹(NIMS)
本論文はマルテンサイト鋼の水素脆性破壊に関して、破壊力学試験から得られた巨視的な破壊特性(J積分値およびティアリングモデュラス(クラック伝播抵抗に対応するパラメータ))、X線CT測定によって評価したクラック伝播形態に関連する複数のパラメータの観点から定量的に考察したものです。水素濃度が最大4.00 wt ppmと高い場合でも、不安定な早期破壊が直ちに発生することはなく、ある程度のクラック伝播抵抗が存在すること、そして三次元的にクラックが連続的に伝播し、クラック開口変位は小さいことを明らかにしています。J積分値は、巨視的なクラック面上に投影したクラック表面積に対する投影表面積の比の増加に伴い単調に増加することを定量的に示し、クラックの蛇行や分岐が破壊エネルギーを増大させることを見出しています。さらに、クラック蛇行を表すパラメータとして、クラック伝播厚さを定義し、ティアリングモデュラスがクラック伝播厚さの増加に伴い増加することから、クラック蛇行がクラック成長抵抗を増大させると結論付けています。水素脆性破壊を定量的に考察した澤村論文賞に相応しい論文であり、今後の水素脆性研究の指針的な役割を果たすと期待できます。
NIMS受賞者
授賞式にて
左から、岡田 和歩 主任研究員、柴田 曉伸 上席グループリーダー、中村 晶子さん
日本鉄鋼協会 研究奨励賞
受賞題目:耐熱鋼のミクロ組織とクリープ特性に関する研究
鉄鋼及びその関連領域において優れた研究実績を挙げている若手研究者であると認められました。
