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2022.11.9
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11/14[月]-11/15[火]
今年イチオシの材料はコレだ!3

今年ぜひNIMS WEEKでご覧いただきたいNIMSイチオシの材料や技術を、メルマガ読者の皆様だけに一足先にお届けします!(次号は11/10配信予定)

FILE. 5
入れて混ぜるだけ!
電気細菌で海水からリチウム回収
岡本 章玄 (国際ナノアーキテクトニクス研究拠点)
電気細菌入りの水溶液の写真

何度も充電し繰り返し使えるリチウムイオン電池。今や私たちの生活になくてはならないものだ。電気自動車用などリチウムイオン電池の大型化に伴い、レアメタルであるリチウムの資源不足が深刻化している。
リチウムは陸上の推定埋蔵量1400万トンに対して、海水中には2,300億トンが存在する。そのため海水からリチウムを回収する技術が近年盛んに研究されているが、これまでの方法では高コストな電極や装置が必要であった。その上、海水に溶けているリチウム濃度が低いため、低コストで簡便、なおかつ大規模化が可能なリチウム回収方法の開発が望まれていた。

そんな中、岡本研究員は以前から研究を行っていた電気細菌が様々な鉱物に電子を注入することに注目した。電気細菌とは、電子を生み出し細胞の外にある固体材料に渡す性質をもつ細菌だ。

岡本研究員(左)と同研究室員のPham研究員の写真
電気細菌入りの水溶液を見つめる岡本研究員(左)と同研究室員のPham研究員。

この電気細菌の性質を使って、選択的にリチウムイオンが取り込まれるスピネル型構造(※)をもつ物質に電子を与え、海水からリチウムを回収する技術を開発できないかと連携拠点推進制度で外来研究員として訪れていた東北大学の下川航平助教、そしてPham Duyen Minh研究員と考え、研究を進めた。

振とう機の写真
振とう機。温度を一定にして、振とうする。どのくらいの時間続けたら、どのくらいリチウムが回収できるのか等、条件を振って実験を行っている。

酸化マンガンに吸着したリチウムは、酸を加えることでLiイオンを酸化マンガンから抽出することができる。一度吸着につかった酸化マンガンも繰り返し使用可能だ。また、電気細菌は、電子を渡し自身は変化しないため、餌となる有機物さえ共有し続ければ長期間生育することができる。

このように、低コストで簡便なリチウム回収技術の条件が揃っているのだ。

「今回の成果は、簡便に海水からリチウムを回収できるという技術の開発だけでなく、これまでは金属や半導体などに電子を与えるのみと考えられていた電気細菌が、インターカレーション反応を駆動するという、電気細菌の活用が期待できる新たな材料としての扉も開くことができました。

海水の写真
応用化を目指して、実際に海から汲んできた海水を用いて実験している。写真は、茨城県東茨城郡大洗町から汲んできた海水。
岡本研究員の写真
「コスト的にも大スケール化が容易である本手法は、海水からのリチウム回収を社会実装可能にする高いポテンシャルを秘めています」と岡本章玄研究員。

今後は技術の実用化を目指すとともに、電気細菌とインターカレーション材料がどのように作用しているのかを調べ、新たな材料や技術としての可能性を探っていきたいです」(岡本研究員)。

(※)スピネル型構造:AB2X4型の無機化合物にみられる典型的な構造の一つ。この構造をもつマンガン酸リチウムは、マンガン系リチウム電池の正極材料として使われている。

岡本 章玄 オカモト アキヒロ
11/15(火)登場情報
岡本研究員の顔写真
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「海水に混ぜるだけでリチウムを回収できるバイオ無機添加剤」
10:20~10:35(15分)
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「海水に混ぜるだけでリチウムを回収できるバイオ無機添加剤」
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