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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.160
2025.11.19
ホフスタッターの蝶
今月の一枚
「ホフスタッターの蝶」

2次元結晶中の電子に磁場を加えると、電子のエネルギースペクトルは「ホフスタッターの蝶」と呼ばれるフラクタル模様を示すことが、1970年代から「理論的に」知られていた。ここで「理論的に」と強調するのは、結晶がもつ微小な周期ポテンシャルに対しては、観測に数千テスラという実現不可能なほど強い磁場が必要だったため。
ところが現在では、グラフェンのような2次元物質をわずかに回転させて2枚重ねることで「モアレ超格子」と呼ばれる、元の結晶格子の数十倍に及ぶ大きな周期ポテンシャルを作り出せるため、実験室で実現可能な磁場でもホフスタッターの蝶を実験的に観測できるようになった。このモアレ超格子をはじめとする、積層角度の制御により2次元物質の新奇物性・機能を引き出す研究分野は「ツイストロニクス」と呼ばれ、量子計算用量子ビット材料の作製など、さまざまな応用が期待されている。

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★NIMS NOW(Vol.25 No.4)
「量子ビット材料の研究開発最前線」
2次元物質「グラフェン」で拓く量子デバイスの可能性
★NIMS NOW(Vol.25 No.4)「もつれが未来を紡ぐ」
マテリアルで加速する量子研究
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オトナの科学本
『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』
 
 
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【『NIMS NOW』ウェブ限定記事公開】
革新的な「量子光源」を実現するNIMSの量子ドット研究開発
量子光源
『NIMS NOW』のウェブ版で、新しい限定記事を公開しました。
今回ご紹介するのは、量子情報通信や量子コンピュータの実現を陰で支える「量子光源」の研究開発です。量子力学的な性質をもつ光子を、1個ずつ確実に取り出す「単一光子源」や、2個の光子をもつれ合わせて同時に生み出す「量子もつれ光源」が実現できれば、絶対秘匿の通信や、従来では考えられない計算能力の実現が視野に入ってきます。
NIMSでは、独自の高品質量子ドット作製法を強みに、こうした量子光源の性能限界に材料科学から挑み、「単一光子源」や「量子もつれ光源」の開発に成功してきました。
本記事では、その研究の狙いと最新成果を、量子技術の社会的インパクトとあわせて分かりやすく解説しています。量子情報の未来を支える技術を、ぜひ記事本文でご覧ください。

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2025年度第3回DxMT人材育成セミナー
「データが導く新しい材料研究
- データ基盤からAI設計までの実践 -」
近年ますます存在感を増すデータ駆動型研究開発。本セミナーでは、材料データの収集・統合に向けた最新の取り組みから具体的な実践例まで、「データが導く新しい材料研究」の最前線をわかりやすく紹介します。データ科学と材料研究の融合に関心をお持ちの方は、ぜひご参加ください。
概要   近年、材料研究はデータ科学の進展により新たな段階へと進化している。本講演ではまず、高品質な材料データの重要性と、データ基盤の現状および整備・統合の取り組みを紹介する。続いて、機械学習を活用した材料設計の実践例として、アモルファス構造解析、界面熱抵抗の予測、イオン伝導体や水電解触媒の探索を取り上げる。データ駆動型アプローチが新材料の発見や特性最適化をどのように加速するかを示し、今後の材料研究の方向性を展望する。
     
講師   徐 一斌   徐 一斌
マテリアル基盤研究センター 材料設計分野 データ駆動型無機材料グループ グループリーダー
エネルギー・環境材料研究センター 先進蓄電池研究開発拠点 データベースチーム チームリーダー
     
日時   2025年12月9日 (火) 14:00-15:00
     
開催
方法
  オンライン開催(Zoom事前登録制)
     
参加
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  参加無料。 下記リンクから事前登録をお願いします。
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詳細   主催:DxMTデータ連携部会
ウェブページ:2025年度 第3回 DxMT人材育成セミナー
     
問合せ   DxMTデータ連携部会運営室
dxmt_office@ml.nims.go.jp
     
 
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プレスリリース中の図 無害な光を用いたイメージングによる細胞内DNA・RNAの同時検出
プレスリリース 2025/10/27
 
 
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BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた - ガチンコ相対性理論』書影  
『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた
- ガチンコ相対性理論』
深川峻太郎 著/講談社 発行
- あらすじ -

「オレだって数式が読めるかっこいい男になりたい!」文系の著者が無謀にも「アインシュタイン方程式」に正面から立ち向かい、その理解に挑む、(おそらく)世界初の数式ドキュメンタリー。

 
量子特性モデリンググループ 田中主幹研究員のおススメ!
「数式を一切使わずに分かる」啓蒙書が書店の科学書コーナーに並ぶ昨今。専門外のトピックに手を出したいときはありがたい。一方ハードルは高いが、もし自ら手を動かして理論の組み立てや動作確認(いわゆる「ナットとボルト」)に至るまで点検できたら、それはもう別格の達成感と理解が得られることだろう。

本書は文系編集者が一念発起し、よりによってアインシュタインの相対論の中でも奥の院のような難関「一般相対性理論」を数式で理解してやろうと決意してしまった瞬間に始まる怒涛の戦いの記録である。ときにはこの無謀な冒険の道連れとなった某研究所の広報氏のアルコールを交えての指南も入る。さすが編集者だけあって、数式とその解読作業の羅列なのに楽しく笑わされながら読めてしまう。

地球の重さで上空の時空が曲げられる不思議(これはGPSにも影響する)や、宇宙の運命までを予言するロマンは多くの人を惹きつける。一方材料科学では、結晶欠陥などにより疑似的な曲がった時空が現出し、意外なことに一般相対性理論の知識が役立つ。神秘的であり、身近でもある相対論を著者に伴走して学んでみてはいかが。
 
- 読書案内人 -
田中秋広 主幹研究員

田中 秋広(たなか・あきひろ)

ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)
量子特性モデリンググループ 主幹研究員

「量子力学の意味なんて本当は誰も分かっちゃいないんだ」とどこかで聞きかじり、古い論文を渉猟した大学初年次。磁性体の表面に現れるトポロジカルな量子効果の不思議に憑かれ始めた院生時代。あれからもうじき40年、「時代がようやく追いついてきたぜ」とうそぶきたいような、己の不明を嘆きたいようなこの頃です。最近、数学科を舞台にした漫画「数字であそぼ」に登場する院生諸君の悪戦苦闘ぶりに感情移入しています。

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