2次元結晶中の電子に磁場を加えると、電子のエネルギースペクトルは「ホフスタッターの蝶」と呼ばれるフラクタル模様を示すことが、1970年代から「理論的に」知られていた。ここで「理論的に」と強調するのは、結晶がもつ微小な周期ポテンシャルに対しては、観測に数千テスラという実現不可能なほど強い磁場が必要だったため。ところが現在では、グラフェンのような2次元物質をわずかに回転させて2枚重ねることで「モアレ超格子」と呼ばれる、元の結晶格子の数十倍に及ぶ大きな周期ポテンシャルを作り出せるため、実験室で実現可能な磁場でもホフスタッターの蝶を実験的に観測できるようになった。このモアレ超格子をはじめとする、積層角度の制御により2次元物質の新奇物性・機能を引き出す研究分野は「ツイストロニクス」と呼ばれ、量子計算用量子ビット材料の作製など、さまざまな応用が期待されている。
「オレだって数式が読めるかっこいい男になりたい!」文系の著者が無謀にも「アインシュタイン方程式」に正面から立ち向かい、その理解に挑む、(おそらく)世界初の数式ドキュメンタリー。
★ 田中 秋広(たなか・あきひろ)
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)量子特性モデリンググループ 主幹研究員
「量子力学の意味なんて本当は誰も分かっちゃいないんだ」とどこかで聞きかじり、古い論文を渉猟した大学初年次。磁性体の表面に現れるトポロジカルな量子効果の不思議に憑かれ始めた院生時代。あれからもうじき40年、「時代がようやく追いついてきたぜ」とうそぶきたいような、己の不明を嘆きたいようなこの頃です。最近、数学科を舞台にした漫画「数字であそぼ」に登場する院生諸君の悪戦苦闘ぶりに感情移入しています。
※本メールマガジンは、配信を希望された方にのみ、お届けしております。 ※本メールマガジン掲載のテキスト、画像、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 広報室 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1